21.マリーナお昼寝中② Side ギルベルト
美味しい昼食でエネルギー回復!と思いきや・・・眠たくて目が開きません
3歳児の性よ・・・強制的な眠りへの誘いには抗えず、ギル兄様に強制的に部屋に連れて行かれ、専属侍女に引き渡されたと思ったら、眠気が覚める間も与えない早業で、お昼寝が出来る簡易な服装にチェンジ。
そして、服装チェンジの完了とほぼ同時にお布団に入っていた私はすや~っと眠りの世界へと旅立っていきました・・・おやすみなさ~い・・・。
「マリーナは寝たようだね。では、私たちは孤児院の視察に行ってくるから、マリーナが起きたら父様か母様に知らせて、こちらと合流できるように動いてくれ。頼んだよ。」
マリーナの専属侍女にマリーナが起きた後のことを指示し、部屋を後にした。
マリーナには邸で待っていて欲しいと思うんだけど、きっとジッとしていられないだろうから、勝手に動かれるよりは、こちらの予定内で動いて貰う方が安心出来るからね。
マリーナの発案で今回のプロジェクトが始動した訳だけど、実はマリーナもまだ知らない事情についても、このプロジェクトで救済が出来そうだとの目算があったのだ。
母様が把握されているかは分からないが、父様は間違いなく、その問題にも対応出来ると考えたはずだ。
やれやれ、嫡男としての力量が問われるプロジェクトになりそうだね。
でも、マリーナが小躍りするほど喜んでいたし(すごく可愛かったな)、お兄様カッコイイって言われたいから頑張りますかね♪
軽い足取りで、パオロ達に合流すべくエントランスホールに向かった。
◇◇◇
みんなすでにエントランスホールに集合していた。
外出の準備も整っているようだから、さっさと行こうか。
<お待たせしました。>
<マリーナ嬢はお昼寝か。カルロも一緒に休んでから合流でも良いんだぞ。>
<兄様、僕はもうお昼寝は卒業しています!兄様を補佐しなくてはいけませんので一緒に行きます!>
うん、フェレーリ家はカルロが凄くしっかりしているね。
パオロは自分が何でも器用に熟せる分、出来ない者の気持ちが分からなかったりするみたいだから、そこは真面目で努力家なカルロが補う感じで、上手く噛み合っている兄弟なんだろうね。
<うん、カルロが補佐をしてくれるなら安心だ。パオロが見逃しそうな所はカルロが補ってやってくれ。>
<はい!ギルベルト様、お任せ下さい!!>
<え~、そこは僕が頼まれる所じゃないの~!?>
何かパオロが喚いているが、エル従兄やフランも、<カルロに頼んでおけば大丈夫><ええ、パオロ様よりカルロ様の方がしっかりしていますわね>と笑いながら同意している。
それにしても、フランの雰囲気が随分柔らかくなったよね。
家族に理解して貰えた事がフランの硬くなってしまった、心と身体を解きほぐしてくれたのかな。
よく笑うようになったし、トゲトゲした態度や表情が和らいで、攻撃的な雰囲気が無くなった。
まだ完全には自分を守るバリアが取り切れないみたいだけど、それもフランの特徴の一つだと思えば、怖がりの猫が頑張って威嚇しつつも、構って欲しくてちょっとずつ近寄ってきているみたいで可愛いよね。
でも、僕が気になるのは我が弟ヴォルフかな。
昨日、フランがツンデレだとマリーナが教えてくれてから、フランが一緒に居るときのヴォルフが凄く静かなんだ。(普段はうるさいくらいバタバタと動き回っているのにね)
あまりにも静かだから心配になって、よく見ていたんだけど、フランが話すとその言葉をかみ砕いているのか、少し考える様子を見せた後、うんうんと一人で頷いてはニコニコとフランを見守るということを繰り返していたんだ。
普段は思いついたら即行動!な感じで、ジッとしていることが少ないヴォルフがだよ?
どうも、フランの言動を理解しようと、頭の中で変換して納得するという事をしていたみたいだね。
本人は自分がそんな事をしている自覚は無いみたいだし、そんなことをする理由も分かってないと思うけどね。
父様と母様も気付いてビックリしていたみたいだし、二人が婚約する未来もあるかもしれないな。
まぁ、フランならしっかりしているし、ヴォルフを任せても安心だから、兄としては弟の初恋を応援する事にしようかな♪
そんなことを考えていると、執事を伴った父様がエントランスホールに現れた。
「ギルベルト、これを持って行きなさい。大人と交渉することになる上で必要になるだろう。」
そう言って、一枚の書類を手渡された。
書類を確認すると、今回のプロジェクトがバイエルン家を始めとする3家の正式な共同事業であること、次期当主であるギルベルトに現場の全権を委任している事を記した委任状だった。
確かに、次期当主とはいえ、10歳の子供にプロジェクトの話をされても、真剣に聞いて貰えない可能性があるから、委任状の存在が必要になる場面は必ずあるだろう。
「父様、ありがとうございます。これで交渉がスムーズに進められそうです。では、行って参ります。」
「ああ、気をつけて行ってきなさい。」
◇◇◇
2台の馬車に乗り込んで、高台にある邸から領都アンカーの孤児院に向かった。
孤児院の院長はムリーノ王国語を話せないため、メーア王国語でのやりとりとなることをカルロには事前に説明していたが、カルロへの通訳をフランが申し出てくれたので、有り難くお願いした。
昨夜の内に孤児院には先触れを出していたので、孤児院に到着したときには院長が出迎えに出ていた。
「お待ちしておりました。次期様、ヴォルフ坊ちゃま。」
次期当主として、孤児院はもちろん領内のあちこちに父様と一緒に顔を出しているが、何故か領地の者達は僕のことを「次期様(次期領主様の省略かな)」と呼ぶ。
親しみを込めてそう呼んでくれているのがわかるので、我が家でも特に問題にはしておらず、僕も小さい頃からそう呼ばれているので慣れてしまった。
ヴォルフは坊ちゃまと呼ばれるのが嫌みたいで、最近はあまり顔を出していないみたいだけどね。
(「坊ちゃまは勘弁してくれよ・・・」とヴォルフがぼやいているのをパオロが、からかっているのが後ろから聞こえて、少し笑いそうになってしまったよ。)
「院長、久しぶり。変わり無いようで安心したよ。」
「はい、バイエルン家のご支援のお陰で子供達と、賑やかに過ごさせて頂いております。」
庭から聞こえる子供達が遊ぶ賑やかな声を聞きながら、院長が穏やかに答えた。
ああ、今日もみんな元気そうだね。マリーナが来ていたら一緒に遊びたがったかもしれないね。
「子供達はいつ見ても元気そうだね。院長の心配りが素晴らしいお陰だろう。これからもよろしく頼むね。」
「有り難いお言葉です。これからも子供達のために努めて参ります。本日は何かお話があるとか、中でお話を伺わせて頂きます。こちらへどうぞ。」
院長に促されて、孤児院の中にある応接室に通され席に着いたところで、職員の女性が紅茶を運んできた。
全員に紅茶が行き渡ったところで、女性職員は退室していった。
「さて、本日は次期様とヴォルフ坊ちゃまの他にもお客様がたくさんいらして下さっていますが、どうされましたか?」
「今日一緒に来ているのは、私の従兄妹でアイヒベルク侯爵家のエルンスト殿とフランツィスカ嬢、ムリーノ王国のフェレーリ侯爵家のパオロ殿とカルロ殿。」
そこで、みんな一言ずつ挨拶をする。
それが一段落したところで、今回の訪問の趣旨を伝える。
「この度、我が家を含めて3家での共同事業を行うことになり、3家当主の決定で我々が責任者として事業を進めることになった。こちらの孤児院をその事業の要の一つとしたく、協力を願いに来た。プロジェクトについて説明するので、まずは率直にどう思うかを教えて欲しい。」
「他国を含む貴族家3家での共同事業ですか・・・それはまた規模が大きなお話ですね。ひとまず資料を拝見致します。」
思ったよりも規模の大きい話をされて院長も緊張気味に資料を受け取った。
そして、プロジェクトに関する資料を読んで、「う~ん・・・」と院長が難しそうな表情を見せた。
「孤児達には簡単な読み書きや計算は教えておりますが、自分の名前や身近な物の名前が分かるくらいで、計算もお金の計算が少し出来る程度です。そんな状態で他国の言葉を覚えられるでしょうか。」
なるほど、本当に自分に関わるであろうことのみ、という感じなのだな。
まぁ、何かを教わって覚えるという経験があるなら、そう難しいことでは無いだろう。
「読み書きと計算を学んでいる実績があるなら、それほど難しい事ではないと思う。専門用語や複雑な計算を求める訳では無く、日常の挨拶や物の名前が分かって、お金の計算が出来る位でも需要があるはずだ。相手も船で他国から来る下級船員などの平民がメインだと想定しているので、簡単なお使いから熟して貰うことになると思う。それに頭が柔らかい子供達なら、遊び感覚で覚えてしまうかもしれないと思っているよ。」
そう言うと、子供達の様子を思い出したのか、表情も少し和らいで納得したような顔つきになった。
「確かに、子供達の好奇心と吸収力は凄いですからな。お話を伺う限りでは、可能かと思います。さらに、寡婦と寡夫については、こちらで子供を預かることもあるので、このプロジェクトでは子供と一緒に取り組むことが出来るので受け入れやすいと思います。実際、片親だと子供が小さいうちは、熱を出したりする事も多く、出来る仕事が限られてしまって、生活が苦しい家庭がほとんどだと思いますから。」
なるほど、マリーナが何故寡婦(寡夫)を今回のプロジェクトに含めたのか分かったよ。
ちゃんと仕事に就ける人間を何故含めるのか疑問だったけど、平民の片親家庭というが分かっていなかったな。貴族のように、使用人や乳母が居るわけではないんだから、預かってくれる人や場所が無いと子供の病気などで休まなくてはならず、定職には就けないんだな。
「そうか、そう言った事情があるのだね。実は、このプロジェクトの発案者は、今日はここには来て居ないが、うちの末子のマリーナでね。まだ3歳ながら、先日の洗礼では神様にスキルを授かったとても聡明な子なんだ。マリーナが寡婦や寡夫を加える事を提案してくれたんだ。知識欲が旺盛で、言葉を話せるようになると、家族や使用人を捕まえては色々と質問していたから、その中で片親の家庭について聞いたのかもしれないね。」
他のメンバーも片親の平民家庭の事情には詳しくなかったのか、感心した表情で聞いている。
まぁ、うちのマリーナは天使だから何でも知っているのは不思議じゃないよ。うんうん。
「なんと!まだお嬢様にはお会い出来て居ませんが、なんとも素晴らしい方のようですな。お会いできるのが楽しみです。プロジェクトには喜んで協力させて頂きます。十分なご支援を賜るだけでも感謝しておりましたが、子供達や定職に就きにくい者達の事も考えて下さり、感謝の念に堪えません。」
子供好きの院長らしく、マリーナに会えることを本当に楽しみにしてくれて居るのが伝わってくる。
バイエルン家からの支援を適正に使用してくれる院長のいる孤児院だし、今回のプロジェクトを安心して任せられるな。
「ありがとう。そう言って貰えると、領主家の者としても嬉しいよ。このプロジェクトは、次期領主となる者達とその兄弟が真剣に取り組む初めてのプロジェクトになる。始めての試みばかりなので、上手くいかない事も出てくるかもしれないが、現場の声を無視して進めることは決してしない。子供達に無理の無い内容を一緒に考えて貰えると助かるよ。」
「はい、よろしくお願いいたします。」
こうして、孤児院での協力要請は無事に受け入れて貰えたので、この後はもう少しプロジェクト関連の調査をした上で、3日後に具体的な内容について相談に伺う旨を確認し、話し合いは終了した。
最後まで読んでいただきありがとうございます(ღ˘⌣˘ღ)




