初の農業
「そういえば君たちは何で海岸に?それとイスタルはなぜあんな大けがを?」
「実は…私たちが住んでいた森が戦争に巻き込まれ、森に火が放たれてしまい、逃げた者は人間たちに見つかると奴隷にされたり、魔族の一味として殺されました」
「何だと?酷すぎる…」
「たまたま出会った彼女たち獣人も同じ目にあい、そこで私たちエルフが共にその地から逃げて、新天地で平和に暮らそうと約束し海へ出ました」
「私たちはこの修羅の地を守る嵐を避けて通ろうとしたのですが、風向きが変わり、嵐に飲み込まれこの場所に流れ着きました」
「それでこの土地にたどり着いた…と。だがなぜイスタルがあのような大けがを?」
「この土地に来る前、大きな嵐に出会い、風や波で帆が折れ、その帆の一部が私にぶつかりました」
だからあんな大けがを負っていたのか…。しかしそんなことがあったとは…人間と魔族でここまで酷い戦争になっていたとは思わなかった。場合によっては人同士でも戦争を起こすこともあるとのことだった。
「とりあえずしばらくはここで生活するといい。まだ種を植えてはいないが、畑もあるし、肉もある。生活するには困らないぞ」
「それに衣服を作る用の繊維も用意してあるし、建築だって俺とエリカが居るからな。しばらくはこの家を使うといいよ」
すると皆が一斉に俺に感謝を述べたり、改めて挨拶をしたりなどをした。とりあえず彼女たちが安心できるような場所を作り上げようと決めた。
だが大きな問題として種が全く無いことだった。
「畑作ったはいいが、種どうしようか…」
「あ、あの…」
「ん?」
後ろを見るとキャロルとケリーが立っていた。
「どうしたんだ?あぁまだ種が無いから農作業はちょっと待っててくれな」
「その種なのですが、私たち持ってます…」
「え?そうなのか!?」
「はい、このバッグの中に」
背負っていたバッグを下ろすとキャロルは根菜類、葉茎菜類、果菜類などの種を持っていてケリーは香辛料、果実類、穀物類などを持っていた。どうやら新しい土地で生活するには色々な種類の種が必要だと思ったようで、数え切れないほどの種類の種を持っていた。
「もしや米はあるか?」
「米…ですか…申し訳ないんですが、私たちはそれを食べる習慣がございませんので…」
「そ…そうか…」
俺が少し落ち込んでいると、キャロルがある提案をした。
「なら、野生のイネを私たちで探すわ。それを私たちでも食べれるように育て上げるわ!」
「それは助かる。ならそれを見つけたら教えてくれ、もし俺にできることがあれば何でも言ってくれ」
「えぇ、わかったわ」
「んじゃこれから種を植えるとするか」
作業にとりかかろうと思っているとまた誰かの声が聞こえた。
「メリッサとキャンベラじゃないか、どうした?」
「あたしたちも手伝うよ」
「そうそう、旦那様とキャロルたちだけでやらせるわけには行かないですから!」
「では、私も」
「イスタルまで…」
すると続々人が集まり、みんな農作業をやろうとしていた。
「ちょ…ちょっと待ってくれ…さすがに全員農作業はいらないぞ?」
「とりあえずニーナは服の作成を頼む、エリカ、アリス、ステファンもいいか?」
「あぁ私は構わないよ」
「わかりました、旦那様がそうおっしゃるなら」
「おう!俺はいいぜ!」
「私一人では大変ですので助かります」
とりあえず簡単に役割分担を行い、それぞれの作業を始めた。収穫まで数か月はかかると思うが、その時期を楽しみに待つつ、畑の面積ももっと必要になるため、さらに耕すことにした。
大根、トマト、ニンジン、ジャガイモ、白菜、キャベツなどかなりの数野菜を植え、丘のさらに上の斜面にはブドウ、リンゴ、ナシ、イチゴの種を植えた。一気に食が発展したことに俺は大喜びし、早く収穫して食いたいと思った。
というかいつの間にか旦那様呼びに…