程なく
それからというもの、俺は勉強のために色々な乗組員にこの地球の歴史、経済、制度、技術、色々な事を聞いてみた。すると東京、大阪、京都、広島、長崎などにある主要都市には港や馬車道などの交通網、上下水などのインフラが整備されているようだった。さすがにガス、電気は無いようだが鉱物資源は溢れるほどあるようだった。だがなぜそんなに鉱物資源が豊富なのかと聞いてみると少々意外な答えが返ってきた。
どうやら世界中の国では戦争の影響だけではなく、病が蔓延していたり、財政難に陥っていたりと様々な理由で輸出ができずにいたらしい。それでも辛うじて買ってくれる国もいくつかあるが、最近は年を越すのがやっとというところも少なくない。
なら鉱物資源の採掘を中断するのはどうなのかと考えたが、そうすると従業員たちの収入も激減する上に、生活基盤を無くすことになるため、それは難しいのだろう。そのための策として前よりわずかに賃金を減らし、出社する従業員も制限しそれで会社と従業員たちをなんとか維持させている状態なのだ。
だがそれもそろそろ厳しいらしく、国内の供給量よりも需要量がだんだんと減っているため、価格も下落してきているのだ。これはかなりまずい状況だと思われ、もってあと1年とのことらしい。そこで俺は軍艦や戦車などを量産し、それに加え電気製品などの金属を使った物を生産し、国内の需要を上げてみようと考えた。
「まぁでもまだまだ課題は多そうだな…、とりあえず飛行甲板に行ってみるか。練習も終わるだろうしな」
そう思いながら甲板に出るとそこには大勢の人が居て、何やら集まっているようだった。皆と同じように空を見上げるとミヅキたちと練習生たちが飛んでいた。どうやら着艦の準備に入ったようだった。しばらく見ているとその内の一機が降下していた。
機番号を確認するとどうやらミヅキたちが乗っている機だという事はわかったが、まだ慣れていない感じがしたため、恐らく練習生の操縦だと思われる。少々ふらつきがあったが着艦に成功し、機体が止まったのを確認し俺は整備員と共に急いで駆け寄りエレベーター側へ機体を運んだ。そして俺は練習生の今橋少尉とミヅキに声をかけた。
「お疲れ様。それと今橋少尉、艦上練習は明日で最終日になる。横須賀に飛行場を建設したら君たちはそこに異動することになるだろう。それまでは座学に集中してくれると助かる」
「了解しました!」
「それから、もし分からないことがあれば、俺のところに来てくれ。いつでもいいからな」
「はい!ありがとうございます!!」
そう言うと彼は足早に去っていった。
「なぁ、ミヅキ」
「はい、何でしょう?」
「明日から忙しくなるし、寝床が確保できるとも限らない。あまり相手できるとも思えない。それでもいいか?」
「えぇ、構いません。私…いえ、私たちはあなたに付いていくだけですから」
「そうか…、すまない…」
「いいんです。私たちも、そうなるだろうと思っていましたから」
それからというもの、艦内放送にて大佐以上の者を呼び出し、明日の手順についての確認も行った。それらが済むと就寝の準備をさせるよう伝えた。それからというもの、俺は明日の気になりなかなか寝付けなかった。
この世界の日本はどんな場所なのだろうか。あの島に居たように魔物が居るのだろうか。もし本当に戦争が始まるなら、俺はどう行動をするべきなのか。そんな事を考えているとメリッサとエミリーが部屋に入って来た。
「…やはりまだ寝てなかったのか。電気の灯りが漏れていたぞ」
「すまない。そろそろ寝るさ」
「旦那様は寝られないのですか?」
「あぁ、色々と考えてしまうんだ」
すると二人はベッドに入り込んだ、するとこちらを向いて話しかけてきた。
「ほら、そんな所に座ってないでこっちに来いよ」
「えぇ、ほら、早く来て下さい」
俺は二人に腕を引っ張られ、そのまま布団の中に引きずり込まれた。
「お前はいつも考えすぎるんだよ。もっと肩の力を抜いて生きればいいんだよ」
「そうですよ。それに旦那様は一人じゃないんですよ?頼れる仲間が沢山いるではないですか」
「なぁ、お前らはどうしてそこまでしてくれるんだ?こんな得体の知れない男についてきて、危険な目に遭うかもしれないのに、なんでなんだ?」
「それは簡単な事です。あなたのことを愛しているから。ただ、それだけのことです」
「あぁ、その通りだ。だからあたしらはついて行くって決めたんだ」
「すまな……、ありがとう」
俺は二人の優しさに触れ、心が温まるのを感じた。それからというもの、二人が俺を抱き枕のようにして眠る姿を見て、少し笑みを浮かべた。
それからというもの、俺はいつもより早く起きて行動をしようと思ったが、既にメリッサとエミリーは起きていたようで朝食を用意してくれた。朝食を食べてからすぐに仕事に取り掛かり、早速予定の確認を行った。
午前は全艦で訓練を行い、艦載機組は搭乗員を一人にさせ発着艦など全ての動作を行ってもらい、俺たちは甲板でそれを見て採点を行う。試験が終わり昼食を食べ、1400になると大島を通過。その時に帆船を出し、鳳翔の乗組員を70人ほどそれに乗せ東京都中央区にある浜離宮近くの港へ向かう。
元々は台場の周辺で帆船を出すつもりだったが、変に警戒されてはたまらないため、浦賀水道に入る前に帆船による先導で浜離宮近くの港まで案内してもらい、到着後の翌日の朝、陸軍の馬車に乗り皇居の中にある宮内庁を目指すことになっている。
「ふむ、問題無しだな。それじゃ飛行甲板に行くか。」