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元おじいちゃんが行く、異世界産業改革  作者: 新宿 富久
第一章 島での生活
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飛行訓練参

そして翌日から本格的に航空機運用のための教育が始まった。まず朝一で航空科生を全員を集め、ミヅキ、ニーナ、ステファン、キャロル、ケリーも呼び、同時に四機ずつ一斉に練習を開始することにした。


「基本的な飛行は昨日やってきた通りだ。俺は日本に行った時に着艦練習をすると言ったが、その前段練習としてタッチアンドゴーの訓練を行う。内容としては機体の足が陸に着いたら、スロットルを上げ、そのまま飛び立つ。これを何度も繰り返す」


俺がそう言うと皆んなの顔が強張るのを感じた。無理もない。昨日いきなり飛行訓練をさせられたばかりなのに、いきなりこれをやらされるとなると嫌な思いや不安な気持ちを抱くだろう。


「無理を承知の上で言っている。いきなりこんなことをやれと言われても戸惑うだろう。しかし、これが出来なければ、艦隊上空の護衛任務に就くことは出来ん。それに、これに慣れておけば、本土に帰る前に着艦練習、単独飛行を行う事もできる」


俺は出来るだけ優しい口調で彼らに言った。ただ、これは遊びではない。もしこの中に艦載機の搭乗員になりたいと願っている者がいるならば、やらせるべきだ。一日でも早く、優秀な搭乗員を育成し、戦争が来る前に備えなければならない。


「キャロル、ケリー、万が一の時は救助できるよう準備を頼む」


「わかったわ」


「わかりました!」


「午前はミヅキ、ニーナ、ステファンと俺が教官だ。同時に四機ずつ練習を行う。では早速だが飛行甲板へ行こうか。ついて来てくれ」


俺がそう言うと彼らは俺についてきた。格納庫を出る際に、整備兵に機体の様子を聞いたが、特に問題ないようだ。俺たちは昨日のように練習機へ乗り、訓練を始めた。だが今回は少しやり方を変え、教官が後ろに乗り、練習生が前に乗るという形をとる事にした。


「よし、今橋少尉、いつでもいいぞ」


「はい、発艦します!」


すると機体は加速していき、向かい風も相まってすんなり離艦する事ができた。今橋少尉も昨日の俺の操縦を見習ったのか、同じ飛行をしていた。水平飛行、旋回、どれも問題なくこなしていた。それから10分近く経った頃、俺の操縦に切り替わりいよいよタッチアンドゴーの訓練を始めた。


まずはタッチアンドゴーをするべく機体をゆっくり降下させ、スロットルを絞り、速度を落としていく。すると左側にミヅキたちの編隊が見えた。どうやら見守ってくれているらしい。俺はそれに嬉しくなり、絶対に失敗させないと思った。高度計を見ながら、慎重に、ゆっくりと下降していく。するとだんだんと鳳翔が近くなり、向きと角度を合わせ車輪を甲板に付けた。そしてそのままスロットルを上げ、また飛び立った。


「あまり深くは説明しなかったな、申し訳ない。だがやり方はおおよそわかったはずだ。スロットルを絞り速度を落とし、高度が高くなりすぎず、低すぎもだめだ。それらを調節しながらやってみるといい。最初は難しいだろうが、今回少しでも安定して着艦姿勢に入れれば、着艦成功する事も不可能じゃない。ま、ミヅキたちのやり方を見てみるといい」


そしてまた鳳翔の周りを一周する形でミヅキたちのタッチアンドゴーを見守ることにした。その後はニーナ、ステファン、という順で同じことを繰り返し、いよいよ今橋少尉の出番となった。


「よし、そのまま真っすぐ空母に向かってみるといい。失敗しても構わん、艦尾や艦橋にぶつかったり、水面に落ちなければそれでいい」


今橋少尉は緊張しているようだったが教えた通りの動きで、鳳翔の艦尾に機体を向けさせた。そして徐々に機体を降下させる。速度は少し速いくらいだろうか。すると機体は少し左に逸れた。


「大丈夫だ、慌てるな。真っ直ぐ、真っすぐだ」


俺がそう言うと、彼は俺の言葉に従い、また少し右へと舵を切りすぎたが、それでも何とか持ち直し足を付け着艦することが出来た。


「よくやった!完璧じゃないか!これなら最終日いの一番に着艦練習ができそうだな」


「ありがとうございます!私もこんな事が出来るとは思っていませんでした。これも教官のおかげです」


「いや、俺はやり方を教えただけだ。君の実力だよ。さあ、次はミヅキ達の番だ。見てあげないと」


俺がそう言いながら、ミヅキ達の方を見ると艦の真ん中あたりで足が付き、艦首まであまり余裕が無かった。もし多数の艦載機が置かれていたらぶつかっていただろう。だが最初にしては上出来な方だろう。そう思った俺は少し落ち込んでいる練習生に一声かけた。


「気にするな。最初は大半の人間がそうなる。だが、なかなかに器用だったぞ。この調子でやりゃ、今日中にはできるようになるんじゃないか?ともかく、繰り返しやってみようじゃないか。んじゃ切るぞ」


その後俺たちは燃料がわずかになるまで練習を続けた。今橋少尉は最初こそ少々危なかったが、3回目からは大分慣れてきたようで、かなり上手くなっていた。やはりこの人は鋭い感性を持っている。そう思った。

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