表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元おじいちゃんが行く、異世界産業改革  作者: 新宿 富久
第一章 島での生活
39/45

飛行訓練弐

ミヅキから精一杯付いて行きますねと返され、俺は頼むぞと言い、無線を切った。


「では、ここからが本番だ。宙返りをするぞ!」


「…え?」


俺は機体をダイブさせると今橋少尉から悲鳴が聞こえた。ダイブで速度を付けた後、機種を上げ180度旋回させ背面飛行に入った。いわゆるインメルマンターンという物である。今橋少尉は何も喋らなくなってしまったが、俺は気にせず、そのまま背面で10秒ほど飛行した。本来ならすぐに水平飛行に戻すべきなのだろうが、下には鳳翔率いる艦隊が見えていたため、この景色を見せたかった。水平飛行に戻した後また降下させ360度宙返りをした後、垂直旋回、もう一度インメルマンターンを行い、水平

飛行に戻す。最期は機体をスピンさせ、錐揉み状態から回復をさせた。


方向舵を中正にして操縦桿を前に突き出し、旋転が止まると飛行機は逆さまに降下するため、宙返りをする時のように操縦桿を自分の方に持ってきて水平飛行に戻した。これで一連の訓練はひとまず終え、着艦準備に入った。


「気分はどうだ?」


「……死ぬかと思いましたよ」


その声は若干震えていた。まぁ無理もない。いきなりあんな無茶苦茶な機動をしたのだ。普通の人間なら恐怖を感じるはずだ。それにまだ始めて間もない新米がやるには少々酷だったかもしれないと感じた。


「すまない。ちょっとやり過ぎたかもしれん。次はもう少し優しいやり方でやろう」


「いえ、大丈夫です。自分はこれからもっと厳しい環境になると思います。なので、この程度でへばっていたらやっていけません。だから……」


そう言うと彼は真剣な声で言った。


「やらせて下さい!」


きっとその目はキラキラとしているのだろうと想像した。まるで子供のようだと思った。そんな彼を死なせないためにも、彼を鍛え上げなければならないと改めて思った。


「よし、その意気だ。それと今行った事を忘れないように、また午後になったら練習を再開する。今日の午後の訓練が上手くいけば、明日すぐにでも発艦訓練をしようじゃないか」


俺がそう言うと、今橋少尉からありがとうございます!と大きな声で感謝された。それから数分後、着艦姿勢に入り、練習機を着艦させた。ミヅキが着艦しやすいよう機体を艦首の方まで前進させ、エンジンを止め整備兵の手伝いの元、操縦席から降りた。その後、今橋少尉が降りてきた。彼は相当疲れているようでフラついていたが、俺はそれを支えた。


「…本当、教官は優しいですね…こんな姿を上官に見られたら叱られるのに…」


もしや海軍精神注入棒と呼ばれる物を未だに使っているのだろうか。あんなのは許されん。俺は今橋少尉の言葉に返す言葉はなく、ただ黙ったままだった。だがこのやり方は必ず廃止させてやると心に決めた。未来ある者たちにそんな事をしても何にもならない。むしろ彼らの未来を奪ってしまう事にもなり得る。ただでさえ戦争で死んでしまう者が大勢出るというのに、仲間の行う行為で死に至らしめるなんて事はあってはならない。


「…そんな事をして何になる。君達は未来の日本を背負って立つ者だ。その未来を奪うような真似だけは絶対にしてはならない」


俺がそう言うと、今橋少尉は何も言わず潤んだ目で俺の目を見て、敬礼した。俺が返礼すると戻ります!と言い俺から離れていった。その時ミヅキが着艦姿勢に入り、今橋少尉が艦橋付近でそれを見守っていた。ミヅキが着艦に成功すると、今橋少尉は安堵の表情を浮かべた。


「今橋の方こそ、優しい人じゃないか」


俺がそう言うと教官も優しい人です。と整備兵が俺に言ってくれた。俺は少し小っ恥ずかしくなり、そんな事は無いぞと言い、ミヅキの方へ向かった。ミヅキが担当している兵がミヅキと俺に敬礼をすると待機室へ向かった。その足取りはぎこちなかった。


「彼はどうだった?」


「ふふっ、とても良い子でしたが特殊飛行に入ったら静かになってしまいましてね。少し可哀想でした。でもとても筋が良いですよ」


「やっぱりか。俺の所もそんな感じだったよ。んじゃ、次の人を呼んでまた練習再開だな」


「はい、かしこまりました」


その後次々と練習を繰り返し、航空科生合計8名の練習を終えると午後の練習に入りまた訓練を行った。これらの訓練と同時に俺が出した標的を使い、艦砲射撃訓練、魚雷発射訓練、対空射撃訓練なども行っていた。


この調子で少しでも実戦に対応していけるようにしていきたいと思った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ