海上飛行
それから約一週間経ったとき、ミヅキたちも航空機の操縦が上手くなりメリッサたちも操艦の技術が上達していった。
「しかし…たった一週間でみんな上手くなったな…」
俺は彼女たちの技量に驚いていた。普通ならこんな短期間でここまで上達はしないはずだからだ。エルフは全員こうなのだろうかと思ってしまうほど、覚えが良く上手かった。そして俺は今鳳翔の飛行甲板で九六式艦戦を整備している。なんでそんな事をするのかというと、島の周辺海域がどうなっているのか全く知らないため上空から観察しようと思っていた、それにもし怪しい物があったらそれに対する策も考えねばならない。
「よし、こんなもんだろう。ミヅキ、エリカ頼めるか?」
「かしこまりました」
「おう、いいぜ!」
俺はミヅキとエリカに補助を任せ、操縦席に乗り込んだ。エンジンを掛け飛び立つ前にミヅキに話しかけられた。
「無理はしないでくださいね?」
「大丈夫だ、1、2時間程度で戻る」
「絶対ですよ?」
「あぁ、心配すんなって。んじゃ行ってくるよ」
俺はミヅキが離れたのを確認すると、機体を滑走させ離艦させた。高度を500メートルに上げ島を旋回しながら確認したが特に異変のような物は見当たらなかった。そのため俺は島から離れ、高度を徐々に上げていった。そして雲の中に入り、雲の上に出ると水平線の彼方まで何も無かった。俺はしばらく海上を飛行し周りを観察したが、やはり何も無い。とりあえず進路を少し変えてもう少し北に進路を変えて飛行してみたがやはり何も無いと思い南に進路を変えようとした時、北西に何かが見えた。
「何か海上にあるな…島か?にしては小さいが…」
高度をさらに上げ不審物に近づいていくと、それは島ではなく大型の帆船だった。それも向かっている方向が俺たちの仮住まいのある島に向かっているのがわかった。さらにその船に近づくと船は一隻だけではなく合計で5隻だった。一隻当たり約200だとすれば1000人ほどの人数が居ると考えられる。
俺はその船団の上を目指し、上から観察しようと思い近づいた。すると戦闘の体制をとったのか船が距離を取り始めた。攻撃する気は全くないのだが、警戒するのは理解できるため致し方ないと思いつつも船団の真上へと向かった。上から望遠鏡を使い観察すると白い旗が見えた。何かの信号旗かと思ったが、よく見ると日の丸の旗が掲げられていた。
この世界に日章旗を掲げる国がある事に驚きつつ、高度を下げ船団の周囲をぐるぐる飛行ながら観察を続けていた。徐々に近づきながら飛行をしていたが、まだ警戒されているのが見えた。どうしようかと考えているとある一つの考えが浮かんだ。
「国際信号旗があるじゃねぇか…もっと早く気づけばよかった」
俺は九六式艦戦の尾輪に「UW」の旗を紐で引っ張るような形になるようイメージして出してみる事にした。すると中央の船から「UW1」の旗が上がり、その後すべての船の帆に同じ旗が掲げられた。その様子に安心した俺は旗を消し、ゆっくりと降下し見えているかわからないが、敬礼しながら船の真横を飛んだ。
「よし…大丈夫そうだな。んじゃ、そろそろ帰艦するか。俺たちの住む島に向かっている可能性もあるから出迎えないとだな」
2時間半程度の飛行だったが、かなり良い収穫になった。だが日本の船がなぜここまで来るのか?どこかに協力でも要請するのだろうか、それとも単純にどこかの国と商売でもするのだろうか、色々と疑問はあるがそれは直に話してみないとわからないだろう。
しばらく飛行していると鳳翔が南西方向を航行しているのが見えた。俺はそちらに進路を向た。すると俺が着艦しやすいよう風向きを合わせて航行してくれた。そのおかげで俺はゆっくり着艦することができた。着艦後、ミヅキとエリカと共に機体を格納庫の中に入れつつ、先ほど見た事について報告をした。
まず俺は自分たちが住まう島に日本の船が来ているかもしれないという事を伝えた。その船がここに向かっている可能性があるという事も伝えた。それを環境に居るメリッサにも伝えると速力を上げ港へと向かった。港に到着して約5時間ほど、時刻は夕方となり日が沈みかけていた。そして東の水平線の先に船団のような物が見えた。
「今の時間だと西日で旗も見えないよなぁ…ならば…」
俺は花火のようなもので、UW旗と日章旗を大きく描くよう空高く打ち上げた。そしてしばらくして音と旗を確認したのか、船団がこちらに向かい始め速度を落とし入港準備に入った。俺は彼女たちと一緒に港に出て待つことにした。大型の帆船が接岸すると俺は即座にタラップを作り船員たちが楽に降りられるように配慮した。それからすぐに2人の男が降りてきた。
「清水 謙一と申します。この度はこのような場所までお越しいただき誠に感謝いたします」
俺は先に挨拶をし敵意が無い事をもう一度示し、それに続いてミヅキたちも挨拶を済ませた。
「ご丁寧にありがとうございます。私は大日本帝国で外務大臣を勤めております、鈴木 修平と申します。こちらは私の補佐と護衛をしております、井上 雄一朗海軍中将です」