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元おじいちゃんが行く、異世界産業改革  作者: 新宿 富久
第一章 島での生活
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航空機

「そうだ。よし、んじゃエンジンを始動させるか」


エンジンのみを始動させるためまずは輪留めをかけ、コックピット内にある電源系統のスイッチを入れ、降りてプロペラ側へ行きイナーシャハンドルでクランクシャフトに取り付けてあるイナーシャを回転させた。俺は急いで九六式艦戦に乗り込み、エンジンを始動させた。するとゴトン!という音と共にプロペラが高速で回転し始めた。やがて機体から安定した振動が伝わってきたため、ちゃんと動いてくれたのがわかった。一旦エンジンを切ったのち機体を降り、ミヅキたちの所へ行った。


「す、すごいです!私も乗ってみたいです!」


「あぁ…この機体は1人しか乗れなくてな…もう少し大きい機体は離着艦練習が終わった時に向こうの飛行場でやろう」


みんなの顔が少々残念そうではあったが、その時は全員に操縦方法を教えると言うと嬉しそうに笑みを浮かべた。獣人娘たちは耳がピンッと立ち尻尾をブンブン振っていた。素直な子たちだなぁと癒されつつ、俺は艦を動かすため艦橋に向かった。本当なら改装後の鳳翔でもよかったのだが、改善点が少ないとなると技術力向上に結び付かないと思い、あえて竣工時のままにしておいた。ミヅキたちを連れ艦橋に着くと俺は魔法を使った遠隔操作で艦を動かし始めた。


「…本当なら魔法を使わずこの艦を操艦したいのだが、人数が少なくてな…」


「ま、まぁ…仕方のない事だ。ケンイチの気持ちも分かるが…私たちだけじゃあこの艦が操れないのは理解できる」


「大きすぎますし、見たことのない装備ばかりですものね」


「私は航海士なので航路の選択、海図の読み取り、操船など色々できますが…流石にこの大きさの艦をまだ把握しきれていないので…」


「そういや旦那、この艦って大砲のような物がなかったか?」


「あぁ、14cm砲か、弾薬庫に弾はあるからいつでも使えるぞ、もし使いたいなら練習用の標的も出せる。まぁ…空母で砲撃戦をするのはあまり望ましくないがな」


「…あくまで護身用ってとこか?」


「そんなところだ」


俺が艦を操艦していると、この艦の速度に驚いたのかミヅキたちは艦橋の外に出た。たしか一般的な帆船は8ノットも行かないんだったか?今は両舷原速(12ノット)で航行しているため帆船よりは確かに速いだろう。そこで俺は少し速度を上げてみる事にした。第一戦速(18ノット)に速力を上げ、ミヅキたちの反応を見ると楽しそうにはしゃいでいた。


「一応戦闘用の船なんだけどなぁ…まぁ、俺も楽しいからいいか」


しばらくは航行を楽しんだ後、原速に速力を落とし俺は飛行甲板に向かった。ついでにミヅキたちに手伝ってもらいたくミヅキたちに甲板に来るように伝えた。それに飛ぶ姿も見たいと言っていたからな。


ステファンとエリカにイナーシャと輪留めを任せ、俺は九六式艦戦に乗り込みコックピットで作業を行う事にした。まずは電気系統のスイッチをON、フラップのレバーや高度計を確認し、点火開閉器を閉に入れ、カウルフラップを全開にするなど始動に必要な事をすべて終わらせた。


「イナーシャ回せ!」


「了解!」


イナーシャを回してしばらくすると「点火」という声が聞こえ点火開閉器のスイッチを入れるとエンジンがかかり、やがて安定したエンジンの振動が伝わってきた。エンジンの回転数を上げ下げさせ、電圧計や圧力計などを点検し異常がない事を確認した後、二人に輪留めを外してもらい飛び立つ準備に入った。


俺は「いくぞ!」と大きい声で叫び、スロットルを徐々に上げ機体を滑走させた。すると難なく飛び立つ事ができたため、高度を少し上げ鳳翔が見えるように旋回するとミヅキたちが手を振っていた。俺はそれに応えるように宙返りやハイ・ヨー・ヨー 、インメルマンターンなどの機動を披露してみた。声は聞こえなかったが、手を振ったり跳ねたりしているのが見えるためきっと喜んでいるのだろう。


しばらく飛行した後、俺は着艦の準備に入った。艦上機は着艦フックがついているためそれをワイヤーに引っ掛けて着艦すれば止まるのだが、空母の着艦訓練はまだしていないため多少不安が残る。しかしここで下手な着艦をして艦を傷つけるわけにもいかないため、慎重に行う必要がある。俺はスロットルを絞り、フラップを下げ速度と高度を落とし、顔を機体の外に突き出し前方を見据えながら空母に近づく。俺は着艦する場所を決めそこに向かって降下を開始した。


そのまま降下を続け飛行甲板がすぐそこに来ると機種を上げ、機体はガクン!という衝撃と共に止まった。少し機体を前進させ、エレベーター付近に機体を停め、エンジンを停止させた。するとミヅキたちが俺の方に駆け寄ってきた。ミヅキは戦闘機に上がり俺のベルトを解いてくれた。


「すまない、ありがとう」


「いえ、これくらいは当然ですから」


ミヅキもう一度礼を言い、九六式艦戦に敬礼をした後に艦内へと戻り鳳翔を港に寄港させ、今度は全員を乗せ飛ぶために九七式輸送機を出し、練習飛行を全員でするべく飛行場に向かっている。飛行場に到着すると俺はすぐに輸送機を出し全員を乗せた。機内で俺は操縦の方法を彼女たちに教えていた。本来なら俺が飛行を教えてはならないのだろうが、この世界で教えられるのは俺一人だろう。ならばその勉強がてら俺が彼女たちに教える事にしたのだ。


ひとしきり教え、全員がベルトを締めた事を確認すると俺はエンジンを始動させ滑走路に出た。そして離陸ししばらくは俺の操縦で島の上空を飛んだ。みんな窓に目を向けて興奮していたが、しばらくしてミヅキたちが質問してきた。彼女たちにとって空を飛ぶ機械があるのが信じられない様子だった。そのため空の旅をしている間、ずっと質問攻めにあった。


俺は彼女たちからの質問に答えつつ、交代をしながら飛行訓練をしていった。交代された子たちはいざ自分の番となると緊張してしまい肩がこわばってしまっていたが、俺が褒めてあげると喜んでくれたのが印象的だった。一通りの飛行訓練が終わった後、俺が着陸を行いミヅキたちを降ろした。


「大勢で飛ぶときはこの九七式輸送機を使って練習するが、一対一で練習をしたい場合は九三式中間練習機、またの名「赤とんぼ」を使って練習するがそれでいいか?」


「はい、わかりました」


「あぁ、アタシも構わないぞ」


こうして俺は空母の運用方法を教える前に、まずは飛行機乗りとしての基礎を教え、日本で兵員が集まった時に教えることができるよう備えたいと思っている。だがミヅキが航空機に興味を示したのには意外だった。キャロルとケリー、ニーナとステファンも航空機に興味を示していた。メリッサとエミリー、アリスとエリカとユキナはどちらかと言うと空母などの艦船の方が気になったようだった。


「ま、それぞれが興味を示している方でいいだろう。それにしても…」


いくら小型の空母とはいえ、あまり物が無いこの場所では鳳翔がかなり大きく見えるな…

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