空母『鳳翔』
二日後の朝、俺は早速空母鳳翔と、艦載機である九六式艦上戦闘機の建造、厳密には召喚と言うのが正しいだろう。これらを召喚するには広い場所が必要なためまず俺は港に向かった。すると俺がどこに行くのか気になったミヅキたちは着いてきた。前日に何をするか伝えているため、それが気になったのだろうと思われる。
「世界最初の空母…この世界でも世界初になるのだろうな」
「その…ずっと気になっていたのですが…くうぼ、とは何でしょうか?」
「そうだな…航空機を搭載した海上基地のようなものだと思ってくれればいいかな……」
「こうくうき?ですか…。よくわからないですが、楽しみにしてますね?」
そう言って微笑むミヅキが美しかった。
「あぁ、期待していてくれ」
空母は軍艦の中でもかなり特殊な船と言えるだろう。なんせ航空機を運用する前提で設計されているからだ。そのため建造コストも莫大に上がるし、運用するための技術や知識が求められる。だから、他の艦艇に比べると圧倒的に数が少ない。だが、その分性能は折り紙付きと言えるだろう。
「よし、それじゃあやってみるか…」
港に到着し、俺は手を前に差し出し目をつむり、鳳翔が港に停泊する様子を浮かべた。すると目を開いた時には目の前に一隻の船が停まっていた。全長は約170mで、喫水線あたりから艦橋までの高さは約20mといったところだろう。船体の大きさだけで言えば赤城の方が大きく目を引くのだが、流石に召喚するには色々と早すぎると思ったためこれにした。それでも彼女たちから見たらとんでも無い代物だろう。
「これが航空母艦か……」
「凄いな……。こんな大きなものを動かせるのか……」
俺の横にいたメリッサが感嘆の声を上げる。そしてそれを聞いていた周りの者たちも同様に驚いていた。
「主様、この巨大な船が空母なのですか?このような船は見たことが無いのですが……」
やはりユキナもこのような形の艦を見たことがないとの事だった。そもそも鉄でできた船はそうそうなく、このように鉄で出来上がった船を建造できる国自体がほとんど無いのだ。それゆえに彼女たちもこの船が異質だとすぐにわかったようだ。
「だが…この艦には帆が無いようだが…」
「心配すんな、帆が無くても動く。この前ミヅキとガソリンエンジンを作っただろ?まぁ、それとは違うんだが、ともかくあぁいったエンジンを使って動かす物だと思ってくれていい」
「なるほど…。ではこれからどうすれば良いのでしょう?」
「そうだな、とりあえず乗艦しよう。まずはボイラーを温めないとな」
それから俺たちはまずタラップを使い乗艦し艦内を見て回る前に機関室へと向かい、そこで始動前確認を行う事にした。航空機を動かす前に艦が動かないと意味が無いため、まずは艦を動かせる状態にしておきたかった。
艦内に入ると中は真っ暗でどこか不気味な雰囲気が漂っていた。それも仕方ないだろう。艦内の窓から遠い所は光が入らないため、俺は魔法を使い明かりをつけながら機関室へと進んだ。ミヅキたちは怖かったようだが、メリッサとエミリー、エリカとユキナはあまり怖がっていなさそうだった。
「さて、機関室に来たはいいが、ここからやる事がかなり増えるが…いいか?」
「えぇ、大丈夫ですよ」
ミヅキたちに聞くとみんなコレに興味を示していた。これなら大丈夫だと思った俺は彼女たちに次々と指示を出した。まずはボイラー系統に水を張り、圧力計などの点検、運転に必要なバルブ類の開閉をなど行い、燃料を送りボイラーを点火させしばらく暖機をさせつつ、同時に補器ボイラーも稼働させた。すると艦内の照明が次々と点灯し明るくなった。
「おぉっ!これは凄い!」
メリッサたちが驚きの声を上げている。確かに今まで暗い中に居たため急に明るい場所に出たら驚くだろう。しかしまだこれで終わりではない。機関を始動させ、スクリュープロペラを回転させる必要がある。だがそのためにはタービンの回転を減速させる装置などの動力伝達系統の作動確認を行い、そのあとにやっと本格的な運転となる。そして俺たちはこの一連の流れを全て行った。
「ふぅ…これで一先ず完了だな……」
そこで俺は機関を始動させることにした。俺が蒸気タービンエンジンを起動させると、轟音と共にエンジンが回り始めた。時間はかかったがなんとか無事に動いたことに安堵していた。
「よし、なら飛行甲板に行こうか」
「え、えぇ…」
苦労してタービンが始動したことが嬉しいのか、音に驚いたのか、理由は定かではないが、彼女たちは少し戸惑っているようだった。俺はそのままミヅキたちを飛行甲板へと連れていき、九六式艦上戦闘機を思い浮かべながら召喚をさせた。すると目の前に九六式艦戦が現れた。
「これが航空機…ですか……」