いきさつ
「しっかし…大きい家だな…」
建物の造りとしては二階建てで、庭はそこまで広くは無いが、その庭には池があり露地、または茶庭と呼ばれている物があった。しかしエリカはどこで宮大工の工法を学んだのか気になり聞いてみる事にした。
「なぁエリカ、この知識はどこで…?」
「30年前に大日本帝国に行ったときに学んだんだ。その時に建築の技法を学んだのさ」
「…日本のどこで?」
「お?やっぱり旦那も日本人か。最初会ったとき顔つきでそうじゃなかと思っていたが、やっぱりそうだったか」
「気づいていたのか」
「そりゃな、向こうに20年近くも居たんだ。それより日本のどこで学んだのか知りたいのか?」
そう聞かれ俺は頷いた。この世界に大日本帝国があるなら、その国の地名も同じなのだろうかと気になった。
「最初は九州、長崎の佐世保に到着、そのあとは四国に行き、本州を旅し北海道まで行き、また奈良に戻ってそこで本格的に学んだのさ」
「そのあとは?」
するとエリカは少し顔を伏せた。辛いなら言わなくてもいいと言おうとしたがエリカがそれを制止した。
「…船で帰っている途中、私の住んでいたギリシャ王国がレカルス帝国の軍勢により攻められたと、ワイバーンに乗って船に来た兵士から聞いたのさ」
「そんな事が…」
「そしてその兵士はさらにこう言ったんだ。エルフの君は逃げるならアイルランドにあるフェルランド王国に行くべきだとね」
「そこでミヅキと出会った訳か…」
しかしアイルランドからどんな経路でここに来たのだろうかと気になったが、そこは聞かない事にした。だが、もし大日本帝国がまだ機能しているのなら、様々な面で支援を行い守る必要があると思った。そこからさらに近隣諸国まで共栄圏を広げ各地を解放させる必要があると見た。
「…なぁ、日本は無事なのか?」
「今の所は…だがな。ヨーロッパ諸国のほとんどが陥落した今、その戦火がアジアにどこかに広がってもおかしくはない」
ならば早めに行動をしないと手遅れになる可能性もあるだろう。そのため早めに駆逐艦でも建造しようと決めた。しかし建造したはいいが、日本に行くまでの食糧も含め特に人員の確保が問題になるだろう。
「なぁ、旦那は日本のどこから来たんだ?」
「…そういえばまだ全てを話してなかったな。…これから夕食だろ?そのあとみんなに話すよ」
「そうか…」
この会話は俺たちだけではなく、ミヅキたち全員が聞いていた。そろそろ話す時が来たか…そう思った俺はどこから話そうか悩んでいた。俺が死んだときから話すべきか、幼い頃の話からするべきか悩んだ。
「君たちはどこから聞きたい?俺が死んだときからか、俺が子供の時からの話か」
「…では幼い頃のあなたの話から、お願いします」
「わかった。それと夕飯は俺とミヅキで作るよ。それとエリカ」
「なんだ?」
「俺たちの家を造ってくれて、ありがとうな」
そう伝えると少々照れ臭そうに大したことじゃねぇよと言った。