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元おじいちゃんが行く、異世界産業改革  作者: 新宿 富久
第一章 島での生活
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ガソリンエンジン

昼食を食べた俺は、早速鍛冶場へと行き汎用性の高いリコイルスタータ付きエンジンの製作に取り掛かった。リコイルスタータはロープなどを使いエンジンの主軸(クランクシャフト)を直接回しエンジンを掛ける構造になっている。


設計図と部品は既にアイテムボックス内で作ってあるので後はそれを組み立てるだけなのだが、これがまた少々手間がかかる。だったらアイテムボックス内で組み立てろと思われるのだろうが、やはり自分の手で組み上げたいという気持ちもある。


「んじゃシリンダブロックからやりますか…ん?ミヅキとメリッサか。どうした?」


「いえ…何をしているのか気になりまして…」


「そういう事か…しかし…二人とも随分目がキラキラしてるな」


「うっ…、すまない…アタシとミヅキはこういったカラクリも好きでな」


「私は目新しい物に目が無くて…」


「なるほどな」


ならばここは一つと思い、一緒にやるか?と聞いてみた。すると物凄い勢いで二人の顔が近づいた。美人だからか尚更威圧感が凄かった。するとそれに気づいたのか二人は顔を赤くし申し訳ない顔をしていた。


「可愛かったから良し、んじゃシリンダブロックは俺がやるから、メリッサはキャブレターの方を、ミヅキは燃料タンクやホース、リコイルスタータを頼む」


「わ、わかりました…」


「あ、あぁ…わかった…」


何でこんなに顔を赤くしているのか少し疑問だったが、気にせず自分の作業をする事にした。工具があまり用意しておらず、時々欲しい工具が既に使われている事もあったが、そういった事も少々楽しく思えた。零戦の整備をしていた時も、こんな事あったなと思い懐かしく感じた。


「よし、ピストン、クランクシャフトよし、後はバルブとカムシャフト、バルブリフタ、プッシュロッド、ロッカアームを用意してっと…」


「前から思ってたが、ケンイチ独り言多いよな?」


「あはは…昔からよく言われるんだよなぁ…まぁそのおかげで助かっている面もあったりするけどな」


「ふふ…楽しそうにやっているので、こっちとしては癒されますけど」


「なんか…気恥ずかしい…」


途中でこんな雑談を挟みながらゆっくり作業をする事ができ、俺としては十分だった。今まで何をするにも友人を除けば一人だった。今更思うが、前世ではだれかと結婚して幸せに暮らすべきだっただろうかと後悔をした。あの時はそういった事を突き放してしまったが、今なら誰かと結婚するのもありだなと思い始めた。

とりあえず結婚などは一旦置いといて、クランクシャフトとカムシャフトの動きがしっかり合うか確認を行い、バルブのクリアランスの調整を始めた。


「…よし、ブロックとヘッドは終わったな。後はガスケットとオイルパンを取り付けてっと」


「ケンイチ、アタシの方は出来たぞ?」


「私も終わりました」


「お、んじゃまずはフライホイールと点火用マグネットを取り付けて…配線をスパークプラグに通して…キャブとマフラーはあるか?」


「あぁ、あるぞ」


「よし、なら燃料タンクとスロットルの取り付けをミヅキとメリッサでやってもらえるか?」


「了解だ」


「わかりました」


俺はマフラーから取り付けを行い、その後キャブレターを取り付けて、燃料タンクの取り付けが終わったころを見計らい、燃料ホースをキャブに取り付け、エアクリーナーも取り付けて、リコイルスタータに取り掛かった。汎用型の小型エンジンの組み上げをしているとそろそろ夕方になりそうだと思った俺は急ぎ目にやる事にした。その時には俺ら以外の娘たちがエンジン組立に興味を持ったのか集まってきた。


「よし…これでほとんど終わりだな。後は燃料を少し入れて、エンジンオイルを入れて終わりだな」


俺がガソリンとオイルを入れると作業は全部終わった。


「頼むから動いてくれよ…」


と言ってエンジンを少し撫でた。そしてロープを引いたが一発目は全く動かなかった。もしやダメか…?と思いもう一度引いてみたすると今度はブルルン!という大きな共にエンジンが完璧に始動した。俺はチョークという調整器を使い、燃料と空気の混合配分を変えた。この調整でエンジンが止まってしまう可能性もあったが問題無く始動した。


「ははは…出来てしまった…」


「お、音が凄いです…」


獣人娘たちは音の大きさに驚き耳を塞いでいたが、少し経つと慣れたようだった。


「なぁメリッサ、少し燃料タンクの部分を押さえてくれ」


「わかった」


俺はスロットルレバーを動かし、回転数を上げさせた。すると元気よくそれに応答し動作は問題ないという事がわかった。


「…うん、完璧だ。そういや木造の船は川に停泊させているよな?」


「ならそこにあるぞ?…もしや乗っけるのか?」


「そうだ」


俺は一旦エンジンを止め、シャフトとスクリューを用意し、それをクランクシャフトと直結させ、木造船に乗っけた。万が一エンジンがずれたりすると困るため、エリカとステファンと共にエンジンを押さえつけるためのマウントを作った。太めの木をフレーム替わりにつけてボルト止めしただけの超簡単な構造だが。


「なぁ、アタシが始動させてもいいか?」


「いいぞ、やってみな」


だがあまり上手く始動しないようだった。アドバイスとしてある程度カチカチ言った所で思いっきり回してごらんと言うと少しブルンという音がし2発目で始動した。クランクと直結状態なためエンジンを止めない限り船は動き続けるのだが、それが楽しかったようでメリッサは遊んでいた。


「どうだ?これがエンジンの力だ」


「凄いな…これなら人の手も帆も要らないぞ!」


その後はミヅキ達が交代交代でエンジンを始動させ船を動かしていた。


「てか俺アホだな…わざわざ蒸気タービン発電使わなくてもこれで発電出来んじゃねぇか…」


と思わず自分自身にツッコミを入れてしまった。

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