お米
「ありがとうございます…」
その言葉が突然聞こえた。それに気づいた俺は一体何だ?と思い目を開けた。するとミヅキとアリスの顔が見えた。
「お?起きたか」
「え?メリッサ…アリス…?」
「ん?どうした?」
俺はメリッサに膝枕されていることに気づき、起き上がろうとしたがアリスとミヅキに優しく手を添えられ、起き上がってはいけないと言われている感じがした。…本当、彼女たちは優しくて魅力的な女性だなと思い、俺はしばらくメリッサに甘える事にした。
「本当…美しい華ばかりだな…」
彼女たちを見た俺は思わずそう口にするとミヅキ達が頬を赤く染めた。俺はまたやってしまったなと思ったが、否定するとミヅキ達はきっと傷つくと思い何も言わないことにした。それに彼女たちが美しいのは事実だから何も言わないのが正解だろう。
少し休んだ後俺は起き上がり、家に帰ろうとミヅキ達に提案した。
「ではそうしましょう。そろそろ夕方にもなりそうですしね」
「だな、…ケンイチの寝顔、可愛かったぞ?」
「か、からかうなよ…」
帰る途中でもいじられ少々恥ずかしかったが、女性との関りがほとんど無かった俺にとっては嬉しくもあった。そして道中では魔物に会う事は無かった。
「しかし…魔物がいないな…」
「その代わりに普通のウサギや牛、イノシシなどが現れるようになりましたね…やはり…そういう事なんでしょうか…?」
「かもしれんな、あれほどの強い瘴気を放っていたら何かしら影響も受けるだろうしな」
「…何はともあれ、これで島は元通りになったと見ていいのか?」
「多分…な…島の全貌を見ていないから何とも言えないが…空から見れれば別なんだが…」
「…ま、それはまた今度だな。空を飛ぶには石油が必要だからな」
「石油?どんな物だ?」
「簡単に言うと真っ黒い油だ」
「ん?それなら見たぞ?島の北東を通る時に風に乗って変な臭いがしたんだ。そしたら真っ黒い物がブクブクしていてな。回収しようと思ったが、得体の知れないを持ち歩くのは気が引けてな…」
「それは正しい行動だよ。しかし…石油があるなら…」
本当にそれが石油なら、 俺たちの技術力はとんでもなく大発展する。もしもそれが海洋にもあればそれだけで資源、資金源となり、かなり強力になるだろう。しかし海洋で採取するためには人員も必要になるため取りやめるべきだと判断した。あと必要なのはアルミなのだが、それは一旦諦める事にした。
そして家がようやく見えた時、俺は縁側に何かが置いてある事に気づいた。まるで俵のような物と小さい草のようなものだった。もしやと思い俺は少し駆け足で向かった。縁側に行くとそこに行くとやはり俵と稲の苗だった。俵を開けるとそこには米が入っていた。しかも米だけではなく、菜の花や小豆、ワサビや大豆、醤油などの調味料も入っていた。そして俺は米を手に取り確認した。
「や…やっぱりこれは…米だ…」
しかし…一体だれが…?と思っていた時ミヅキが俺に聞いた。
「これが…米…ですか?」
「こんな硬そうな物…本当に美味しいのか?」
「あぁ、しっかり調理すれば美味いぞ」
「ケリーは初めて見ました…」
「私は前に見た事あるけど…ちょっと形が違うわね…」
キャロルが言っているそれは多分インディカ米だろう、ジャポニカ米はインディカ米より種類が少ないため見たことが無いのも納得だ。そして夕飯は俺が料理を振舞うことにした。俺は白米と生姜焼きとけんちん汁を用意し、デザートには羊羹を出すことにした。俺が生姜焼きのための肉を作っている途中、ミヅキが顔を出してきた。
「ん?まだできてないぞ?」
「いえ…少し…手伝いたく…」
「そうか、ならけんちん汁を頼む。材料は既に切ってあるから、それを鍋に入れて炒めてくれ。そのあとはまた教えるよ」
「はい、わかりました」
楽しそうに料理をするミヅキが美しくまた見惚れてしまったが、すぐに料理の方に集中した。だが誰があそこに米などを置いたのか…かなり不思議だった。それがどうしても俺は気になってしょうがなかった。それからもミヅキと協力し合いながら料理を作り、料理を居間で待っているメリッサたちに届けると目をキラキラと輝かせた。全員でいただきますと言い食べ始めた。
「うんめぇ…」
「えぇ、本当に美味しいです」
何か料理を作る度に美味しそうに食べてくれる彼女たちがやはり可愛いと思った。というか今更だが、ミヅキたちは箸を使うのが上手いな…。しかし…米とかを縁側に置いたのは誰だったのだろうかと思い、また考えているとある考えにたどり着いた。
そういえば木花咲耶姫は桜の木の神様でもあり豊作の女神だったことを思い出した。そしてありがとうという声が聞こえた事といい、一度イザナミ様に会った俺としてはそうなのではと思った。仮に偶然だとしても不思議とそう信じてしまう何かがあった。
ご飯を食べ終えた俺はいつも通り彼女たちに自由に過ごしてもらう事にした。俺はやりたい事があり寝室へと向かうと、昨晩と同じようにミヅキもついてきた。ミヅキと一緒に部屋に入ると見慣れない物が置いてあった。何だ?と思い見てみるとそこにはかの有名な作品に出てきそうな杖があった。
「つ…杖…何でここに?」
杖の形は真っ直ぐで持ち手は握りやすいように少し太くなっていたが、そこは流水文様のような物が彫られていた。
「今朝は無かったですよね…?」
「そうだな…ん?手紙…?」
杖が置いてあったその横には手紙が置いてあり、その手紙を読むと…
「この度は私をお救い下さり、ありがとうございます。これはそのお礼でございます。貴方様ならこの桜の杖を正しい方法で使ってくださるでしょう。私はあなた方を天から見守っています。これからも健やかにあなたの自由に、お過ごしくださいませ」
と書かれていた。
「…一体…誰なのでしょう…?」
「さぁな…多分だが…、神様の誰かだろうな…」
「…ではその神様に感謝を捧げます」
ミヅキはそう言って杖に向かって手を合わせていた。俺も手を合わせ、ありがとうございますと言い、杖を持った。するとどこか杖が手になじむような感覚があった。まさか…杖が俺の認めたのか…?と思うと頬に優しい風が吹いた。ありがとう、光栄だ。そう口にすると杖が少し光った。それを確認した俺は杖を机の端にそっと置いた。
「…さて、今日もまた設計図を書くとするか」
今日一日色々起こり過ぎたが、終わった後はどこかやり切った気持ちになった。このまま平和が続けばいいな、と思う俺だった。




