ネトオクで星座を落札する
スマホでネトオクを見ていたら、オリオン座が競売されていた。
え? オリオン座ってあれ? 冬の夜空に輝くあの星座?
一瞬目を疑った。でも、オークションに出品されていたのは、間違いなく狩人オリオンの雄大な姿を形どった星々であった。都会の夜景に浮かぶオリオン座の画像に、商品説明が添えてある。
『千万年前の商品ですのでやや劣化をしていますが、未使用です。キズなし、新品同様』
『最低落札価格 ¥3,500~』
うおおお、安いっ! てか、星座の相場よく知らないけど!
僕は反射的に競売に参加し、落札価格¥5,800で、見事オリオン座を落札した。
それから、胸を躍らせてオリオン座の到着を待ち続けた。
……あれ? なかなか商品が届きませんけど。てか、出品者からの発送連絡すらありませんけど。
騙されたか? 11月中旬頃、痺れを切らせて、出品者にメールで確認を取る。
『商品は行き違いで発送したところです。今夜、夜空を見上げて下さい』
その晩、半信半疑で見上げると、確かに僕が落札した商品が、キラキラと夜空に輝いていた。
うおおお、この広大な宇宙に、僕の所有物が輝いている。僕は時を忘れてオリオン座を眺めた。
おや? オリオンがこん棒を振りかざす右腕の付け根にある星、あれってもう少し赤みがかった色をしてなかったっけ?
妙な違和感を感じた僕は、出品者にメールで問い合わせをした。
「すみません。あのベテルギウス、偽造品ではないですか?」
『言いがかりはやめて下さい。あれは正規のベテルギウス。正真正銘の一等星です』
猜疑心を拭い去れない僕は、ベランダに巨大な天体望遠鏡を持ち出して、数百光年先にある星の表面を確認した。星の表面には、隕石が落ちたような跡が無数にあった。
「キズ物じゃねーか。騙したな。何が新品同様だ」
『……配送の途中にキズがついたのかも』
「これはクレーム案件だ。星座は返品する」
クーリングオフ期間中だったので、返品手続きは速かった。ほっ。危うくバッタモンを掴まされるところだったぜ。
数日後、スマホでネトオクを見ていたら、なんと、あのオリオン座が、また出品されていた。
年代物、キズあり、を逆手に取り、ヴィンテージ商品として高額で競売されている。
落札価格は、まさかの、¥50,000。
その日から毎晩、他人の所有物となったオリオン座を歯噛みをしながら眺めては、
「爆発しろ! 赤色巨星になって超新星爆発で消えて無くなれ!」
と、星に願いをかけている。




