表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

コメディー系

ライバル令嬢と婚約者争い、必勝法はお胸ですわよ! 〜無自覚ぶっ飛び侯爵令嬢、いつの間にか世界を救う!?〜

「ワタクシとあなた、どちらがあの方を振り向かせられるか勝負ですわよ!」


 とあるお茶会。

 ワタクシはそう叫ぶと、相手の令嬢を挑発的な目で睨みつけましたわ。


「望むところだわ!」


 彼女もどうやら乗り気らしいですわね。

 これはますます腕が鳴りますわ。


 まず自己紹介からいたしましょう。

 ワタクシはシュトロミン侯爵家の一人娘、エリーエ・シュトロミンと申しますの。


 そしてお相手の方は、アディー伯爵家の令嬢であるギル嬢ですわ。


 そうそう、何故こんな話になっているかと言いますと。

 ワタクシとギル嬢は幼馴染なのですけれど、このところ仲が悪いんですの。

 それもそのはず、同じ人物を婚約者に狙っているからですわ。


 それがジョン公爵令息。

 金髪に青い瞳をしていらっしゃって、とてもスタイルも良くて、お優しいと評判。貴族令嬢の憧れですわ。

 まだ婚約者のいない彼の婚約者候補はワタクシとギル嬢の二人だけ。だからこそ当然、婚約者争いに火花を散らすわけですの。


 そして今日、その決着をつけようという話になったわけですわ。

 条件はもちろんただ一つ。どちらが婚約者として選んでいただけるか、これだけでしてよ。


「絶対に負けませんわ!」

「私だってエリーエ様に負ける気はしないわよ」


 さて、いくら幼馴染とはいえ容赦は致しません。

 ワタクシは必ず、ジョン公爵令息をこの手にして見せますわ!



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「と、いうわけで、カルティ、どうやったらワタクシが勝てるか考えてくださいまし!」


「えぇ、それ僕が考えるの……?」


 どうしたらいいか弟のカルティに相談したら、嫌な顔をされてしまいましたわ。弟のくせに生意気な。

 お父様やお母様に相談してもきっと相手にしてもらえなかったでしょうから、カルティに頼るしかありませんわ。力づくでも何か良案を吐かせませんとね。


「ジョン公爵令息に気に入ってもらえる条件って何ですかしら? お屋敷に突入して色仕掛けで攻撃!とかいいんじゃありません?」


「いやいやダメでしょ。普通に。色仕掛けってそれ、貴族の悪い噂になるからやめて」


 せっかくいいことを閃いたと思いましたのに、苦い顔で否定されてしまいましたわ。

 カルティは細かいことを気にしすぎですのよ。でも実際、今まで彼の忠告のおかげで助かったことは幾度もあるのですから腹立たしいんですわよね。


「まず、男ってものはね姉さん。美貌と胸に惹かれるんだ」


「胸?」


 ワタクシは美貌には自信がありましてよ。

 艶やかな黒髪に漆黒の瞳。黒いドレスなどまとえば、美魔女などと呼ばれるほどですもの。

 けれど……。


 胸だけは、胸だけはアウトですわ。

 胸がぺったんこなんですの。これがワタクシことエリーエ侯爵令嬢の最大の欠点。


 うわぁぁぁぁ!

 どうしましょうどうしましょうどうしましょう! 胸がなかったら負けだなんて! さいっあく! 最悪ですわぁ!


「カルティ!」


「何だよ姉さん。急に興奮しちゃって……」


「確か魔王の城に『何でも願いが叶うランプ』がありましたわよね? あれでお胸をバインバインにしますわよ!」


「は?」


 実はこの世界には、願いを叶えられる特殊アイテムがあるのです。

 きっとそれさえ使えばこの貧素なお胸、なんとかなるに違いありませんわ!


「ちょ、ちょっと待ってよ。魔王がどれだけ危険かわかってるの? この前の侵略の時、国一番の騎士がやられたって言ってたじゃないか」


「だからどうしましたの? たまたまその騎士がよそ見しただけでしょう。さあさあ、とっとと荷物をまとめて出発しますわよ! ほら早く」


 ワタクシはカルティが何を問題にしているのかさっぱりですわ。

 どんな障害が生まれようとも、ワタクシはジョン公爵令息の婚約者になるため全力を尽くすのみ。つべこべは言ってられませんわよ。


「姉さん……それもしかして、僕も行くの?」


「そうですわよ。ワタクシ一人では危ないでしょう? ワタクシ、レディーなんですから」


 にんまり笑って見せると、何故かカルティが疲れたようなため息を漏らしましたの。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 そういうわけで、ワタクシどもは魔国へと向かいましたわ。

 話を聞いて回った人々全員が「やめときな」などと言うのですが、ワタクシ、諦め切れない事情があるのです!


「姉さん無理だって。魔国に人間が入ったら途端に殺されるよ」


「大丈夫ですわよ。人間がダメなら、魔物になればいいではありませんの!」


「えぇ……?」


 ワタクシは世界中を飛び回り、ようやっと『悪魔の種』と呼ばれる物を見つけましたわ。

 これを食すと、一瞬で魔物となり理性を失うんですの。禁断の果実とされ、誰からも忌まれる物ですわ。


 でも、


「ヒール」


 浄化さえすれば、頭がおかしくならずに魔物になれるはずですわよね!

 ワタクシは『悪魔の種』を呑み込みましたわ。隣で弟が大袈裟に慌てていますけれど、知ったこっちゃありませんわよ。


 そうするとすぐさまワタクシの体に変化が起きて、黒い魔犬に変身ですわ!

 うん。ワタクシ本来の美しさをコンパクトにまとめたような計算された美。いいですわね、これも。


「さあ、カルティもやってみなさいな」


「姉さん、もしかして聖女じゃないのかい? 『悪魔の種』の効果をまるっきり……」


「いいから食べなさいとそう言っているのですわ!」


 ワタクシは、肉球のある犬の掌で『悪魔の種』を掴み取り、カルティの口に押し当てましたわ。

 それを口にしたせいか、しばらくカルティが地面をのたうち回ります。あらあらどうしたのかしら?

 やがてカルティもワタクシと瓜二つの魔犬になりましたの。


「姉さん、これ、ものすっごく痛いじゃないか! なんだよこの体の内側を掻き回されるような不快感は! それになんで姉さんはそんなに平気なのさ!」


「ワタクシ、大抵のことには動じませんのよ。これくらいの痛み、治癒魔法で誤魔化せばないも同然ですわ!」


「ならなんで僕にはかけてくれなかったんだよ……」


 あらあら。犬になっても何かと細かいですわね。ワタクシのように大胆に生きればいいですのにねぇ。

 そんなことを思いながらワタクシは、弟を引き連れて魔国へ向かいましたの。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「ランプGETですわよ! ルルル、ラララララ〜♪」


「ぐ、ふぅ、はぁ、はぁ……。姉さん、治して……」


 ランプを手にしてはしゃいでおりましたら、ボロボロのカルティが呻いていますわ。

 そうでしたわ、早く治してやりませんと死んでしまいますわね。うっかりしておりました。


「ヒール」


 ワタクシが一言呟くと、彼の傷はすっかり回復。

 目を見開いて驚愕している弟。一体どうしたのでしょう。ワタクシの治癒魔法が何か変だったかしら?


 でもそんなことはどうでもいいのですわ。

 魔王から奪ったこのランプ、存分に使いませんとね。


 ……そうそう、魔国に入ってからのお話をいたしましょう。

 犬の姿になって魔国へ突入したワタクシたち。

 魔城へ着くと早速用件を問われ、「ランプを奪いに来ましたわ」と言うと、門番である魔牛とすぐさま戦闘になってしまいましたの。


 まあ、ワタクシの聖魔法であの世へ吹っ飛ばしてしまいましたけれど?

 他の魔族も同じようにしてぶっ飛ばし、魔王のところまで行きましたの。


「ランプをよこしなさい」


「なんだ子犬が、我に偉そうな口を――」


 話が通じなさそうだったので、その場で大量の洪水を起こして殺してしまいましたわ。

 どうしてこんな魔王に勝てない人間がいたのでしょう? 楽ちん楽ちん。


 そうそう。聖魔法を使って犬の姿からはすぐに戻りましたわ。


 でも洪水のおかげでカルティは溺れてしまったらしく、全身ボロボロ。なのでワタクシが治してやったというわけなのでした。


「さぁーて。このランプちゃんにお願いをしましょうかしら」


 魔王の所持品であった金色のランプを撫で回しながら、ワタクシは呟く。

 そして、


「胸を世界一でっかくしてくださいませ」


 その瞬間、ワタクシのお胸は魔国を押しつぶすほどに巨大化しましたの。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「これでジョン公爵令息のお心はワタクシの手に……!」


「いやいやいや。姉さんそれ本気で言ってる?」


 世界一大きなお胸は魔国の山となって広がっています。

 こんなのは前代未聞、きっとジョン公爵令息も驚いてくれるでしょう。


 ただし……確かにこれでは我が国に戻れませんわね。


 さて、どうしましょう。

 ランプに願いをかけられるのは一度だけのようで、もう一度小さくしてくれるはずはありませんしねぇ。


「よぅし。仕方ないのでジョン令息をここまで呼んでいらっしゃいカルティ。いいですわね?」


「……」


 カルティはもはや何か言う元気もないらしく、トボトボと帰って行きましたわ。

 さあて暇ですわね。このお胸、大きいのはいいのですけれど動けませんのよね。体が大きくなったわけではありませんもの。

 そんなことを思っていたら。


「魔王ー! ってわあ!」


 全身鎧兜の青年が現れたのですわ。

 「誰ですかしら?」とワタクシが問うと、彼はワタクシの右乳房をノコノコと登って来て言いましたの。


「オイラは勇者だけど……なんだこの状況は」


「魔王を倒しにいらしたならもう魔王はいなくってよ? せっかくいらっしゃったのにご愁傷様ですわ。……ああそうそう。勇者さんお願いがありますの。ワタクシのお胸、ちょっと切ってくださいませんかしら?」


 勇者さんは「そうか! ならその頼み、引き受けよう!」と笑ってくださいました。

 そしてワタクシのお胸の山を駆け回り、真っ二つに切断して行ったんですの。


 治癒魔法をかけていたので全く痛くありませんわ。

 切られた乳房は一秒後にはすっかり回復し、ドッジボールほどの大きさにまでなりましたの。

 ちょっと小さくなりすぎましたかしら? でもこれで動けますわ!


「ありがとうございます、勇者さん」


「おう! じゃ、オイラ国に帰る!」


 勇者さんは帰って行かれました。


 そこへまもなくジョン令息が到着。

 ワタクシの乳山の残骸を見て驚いていらっしゃいますね。ワタクシの乳房、魅力的でしょう?


「あらジョン様、お久しぶりですわ。ワタクシのこのお胸を見てくださいまし」


 しかしジョン令息は絶句していらっしゃいますわ。どうしたのでしょう。

 一方のカルティといえば「姉さんにはついていけないよ……」だなんて言っています。


「ねえジョン様、お答えくださいまし? あなたのために魔王を倒してまでこのお胸を手に入れたのですわよ?」


「魔王を倒す……!?」


「ええ。弟から聞いていなかったかしら?」


 ボヨンボヨンとお胸を揺らしながら彼に近づきます。

 でも何しろあの巨乳化によってドレスが破れていますから、素肌が丸出しですわ。あら恥ずかしい。


「あ、ダメだ……」


 あらまあ!

 ジョン公爵令息ったら、ワタクシが抱きつくなり昏倒されてしまいましたわ! これは一体どうしたことでしょう!?


「カルティ、もしかしてジョン令息に何かしましたわね!?」


「してないよ! ってか完全に姉さんのせいだから! 姉さんぶっ飛びすぎだよ!」



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 魔物の一掃、そして魔王も討伐。

 ワタクシの功績はすぐに国中に広まり、ワタクシは聖女とされ崇められましたわ。


 結果的に言えば、どうやら世界を救ってしまったようですわ。

 ワタクシはただランプを手に入れたかっただけなんですけれどもね。それにあのランプ、お胸が大きくなった時に潰してしまいましたし。


 まあ、済んだことですもの。それはいいですわ。


 ワタクシの功績が讃えられた一方で、例の勝負には敗してしまいましたの。

 ジョン公爵令息ったら、あれからというものワタクシを見るなり気絶してしまい……。結局、ギル・アディー伯爵令嬢が婚約者として決定いたしましたわ。


 悔しーい!!!


「ごめん遊ばせ〜」と笑うギル嬢に腹が立ちますわ!

 ジョン令息もジョン令息ですわよ。どうして世界一お胸の大きいワタクシに振り向いてくださらないのです!


「それは姉さんが……」


「魅力的すぎたからですわね!」


「違うよ!?」


 ふふふ。ワタクシの美貌が眩しすぎてジョン令息は目を向けられなかったのですわ。

 もっと強く勇ましく、ワタクシにピッタリな旦那様を探さないとですわね。


「オイラの嫁さんになってよ」


 その頃ちょうど、勇者さんがいらっしゃいまいた。鎧を脱いだ彼は完全に田舎者ですわね。

 でもワタクシ、運命を感じましたのよ。


「はい! 勇者さん、ワタクシがあなたの妻になりますわ! ただしあなたがワタクシの婿ですわよ!」



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 ワタクシはそうして勇者さんと結婚し、たくさんの赤ん坊をもうけたわけですけれども。

 勇者さんったら冒険がお好きでして、ワタクシはいろいろな場所へ旅をすることになりましたの。


 でも何故か、カルティがついてくるのですわ。


「カルティ、あなたは領地があるでしょう?」


「姉さんたちを放っておけないだろ。ったく……」


 カルティはどうやらワタクシのお胸にぞっこんのようですわ。ワタクシのことよりも領地の心配をすればいいですのにね。

 ということで、ワタクシたち家族とカルティは世界旅行を楽しむのでした。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
設定投げて! バナー
― 新着の感想 ―
[良い点] たしかにぶっ飛び過ぎ! ☆⌒(*^∇゜)v
[良い点] タイトルどおりのぶっ飛び具合! ここまでの無双は、なかなかないですね(^ ^) 面白かったです!
[良い点] 過ぎたるは猶及ばざるが如し……!( ˘ω˘ ;) 公爵令息様が逃げ出すのも無理はないかもですねこれは。 ともすれば聖女どころか第二の魔王とされてもおかしくないシュトロミン嬢の活躍が楽しかっ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ