突然現れた腹違いの妹に、婚約者の王太子を奪われ、婚約破棄をされ、悪役令嬢認定されたかわいそうな姉エメーリアによる平和的復讐について語ろう!
「私、レオンはここにエメーリア・ランカスタとの婚約破棄を宣言する!」
私は舞踏会の夜、こう婚約者の王太子殿下に宣言されました。
この日は私たちの婚姻を誓い合うという日になるはずでしたが、なぜか殿下の横には私の腹違いの妹のマリアがいてにやにやと笑っているのです。
「……え?」
「君は妹のマリアをいじめて、階段から突き落とそうとしたことはわかっている!」
「突き落としてませんわ」
「マリアが嘘を言うわけがない!」
なんというかそういえばマリアを見たときに頬を赤らめたのは見てましたけど、ああ、男好きに騙されましたわね。私は心のなかでため息をつきましたわ。
踊り子を母に持つというマリアが半年前に我が家にやってきて以来、母は寝込み、父は家に帰らず、家族バラバラになってしまいました。
父が浮気をしていたというのは意外でしたが、心当たりがあるようで、わが家の紋章入りの指輪を持ってきてあなたの娘ですというマリアを家に受け入れたのですわ。
いやなんというかそこからわが家の執事や、従弟、使用人とかたっぱしから彼女に落とされというか……。そこから母は嫌気がさしたのか実家に帰り、わが館は彼女の天下になってしまいました。
顔は確かにきれいな子でした。栗色の髪に珍しい金の目、まるで猫のような……。
容姿からいえば、確かに私よりかなり上です。年齢は半年しか違わないのに色気があるというか。
でもねえ、どうしていきなり学園の舞踏会に黒いドレスを着て自信満々に殿下の横にたつのか、みんなあれは誰だとざわざわしていますわ。
「お姉さまが私を階段から突き落として殺そうとしたのですわ! 使用人もそういってますわ!」
はあ、そう来たかですわ。殿下、マリアの胸を鼻を伸ばしてみるのはやめたほうがいいですわ。
「婚約破棄、はい結構ですわ。でもマリアを階段から突き落としてはいませんわよ」
「使用人が!」
「使用人はマリアとできていますの、たぶんケインのことですわよねえ」
「あ。あう」
私はそれくらいは知ってますわよとため息をつきます。言葉が詰まるマリアに、ケインとあとは執事のレイ、あとは庭師の息子のバートンと他に八人ほどいましたわよね? とにこっと笑って話してやります。
「そんなことはしてません!」
「……従弟のカイルが白状しましたわ、あなたの色仕掛けとやらでついつい手を出してしまい、金品を要求されていたと、あ、一応証書も書かせたので間違いはないですわ」
「あうあうあう」
「マリア、お前!」
あうあうというマリアが顔を真っ青にして、殿下の顔は真っ赤ですわ。
割と見ていると楽しいですわね。
「カイルは一応既婚者ですし、不義密通は確か国外追放ですわねえ。あ、もう陛下には書状をしたためて送っていますわ」
いえこんな展開の前に、もうマリアのごたごたに疲れ果てて、陛下には事情は話してましたの、一族連座をなんとか避けるためですわ。気が付かなくてもっとことが大きくなったらたまりませんもの。
陛下の温情で、なんとかなりそうですが、目の前で大喧嘩を始めた二人を見て、さあどうしましょうと私はため息をつきました。
あーあ取っ組み合いとか情けないですわ。まあこんな人と婚約して結婚なんてしなくてよかったですし、ろくでもない妹と縁が切れそうでよかったですわ。
どうも諜報能力というものに二人とも欠けていたようですわね。
あーあ、少し手ぬるすぎましたかしら、私は平和主義者ですしと、ひっかき攻撃をするマリアを見て、私は少しそう思ったのでありました。
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