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夢見るアリスと白兎アイホート  作者: 潮田しお
第1章『奇跡の林檎は絶望となりえるのか』
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Dream.4『初めての探索』

 まず調べるべきは……、やっぱり遺体だよね。

 私は十字を切ってナーサリーさんの鎮魂を祈った。宗教が違うから意味は無いだろうけど。


「……失礼します」


 ナーサリーさんは、仰向けに倒れて亡くなっていた。頬には涙が伝った跡がある。

 目を背けたくなるほど凄惨な最期だ。喉をパックリと切り裂かれ、口から血を吐いている。腹部の傷も酷い。子宮に届くほど深く突き刺して切り裂いたかのようだ。一体何のために……。その他にも、腕や背に切り傷があり、計16回は血を流している。滅多刺しだ。


「…………」


「イヴちゃん、あんまり見ない方がいいよ。それに、そんなに拳を強く握っちゃ怪我しちゃう」


 イヴは気が立った様子でキッと私を睨みつけて冷ややかに言う。


「どうせ、すぐ治る。……わたしは犯人を許さない。この光景を目に焼き付けていつでも怒りを思い出せるようにして、殺す」


 それはきっと、正体不明の犯人にも、私にも投げかけた呪い。私はなんだか言い表せない悲しい気分になってイヴちゃんの頭を撫でようとしたけれど、強く払われてしまった。


「次は現場。シュブ姉はキッチンで襲われて、這って逃げようとしたけれど、そこで殺された」


 イヴはキッチンから伸びる血痕から遺体までに視線を送る。血痕のサイドにある椅子が壊れている。攻撃から身を守ろうとしていたのだろうか。等間隔に並んでいる長机もその付近にあるものは位置が斜めにズレている。


 キッチンに入ると、(おびただ)しい鮮血が壁に一筋散っていた。最初に喉を切られて、声を潰されたのだろうか。

 また、食器棚の引き出しも開けっ放しになっている。中を覗くと銀製のナイフやスプーン、フォークが入っていた。凶器は元々ここに入っていたのだろう。


「あとは……あれ?」


 調理台で死角になっていて気づかなかったが、奥に野菜や果物が詰められた籠が置いてあった。水滴がきらきら光り、一部虫食いの葉がオーガニックであることを示している。


「まだ朝露がついてる、新鮮ってことだよね。昨日の時点では余り物しかなかったはず。ということは、誰かが来ている!?」


 そして、私はその誰かの正体を被害者本人から聞いている。


「麓の……村人?イヴちゃん!犯人わかったかもしれないよ!」


 イヴはため息を吐いて冷静に指摘する。


「村人は何人もいる。みんな生産業。容疑者の村人全員にあなたは犯人か?って聞いて回るつもり?」


「あぁ、そっかー。でも、前進はしたよね!次は容疑者を絞らなきゃ……どうすればいいんだろ」


 腕を組んで首を傾げ、うーんと考えてみる。


「ナーサリーさんが今日は誰が来るのか知ってたり…するかな?」


「死人と話でもするの?」


「それが出来たら1番いいんだけどね」


「……別に出来なくもない」


 イヴの常識を覆すような発言にアリスは動転する。


「えぇ〜っっ!?なら早く言ってよ!」


「でもわたしはその呪文について知らない」


 アリスはその発言にガックリと肩を落とす。


「なんだぁ〜。あ、そういえばナーサリーさんの部屋に本が沢山あったなぁ。そんな感じのオカルトな本もあるかも!」


「魔道書……。死者蘇生と言えば屍食教典儀(ししょくきょうてんぎ)だけど、そんな忌々しい本シュブ姉が持ってるわけ……」


 怖い名前の本だな〜。


「とりあえず、ワンチャンに賭けてみよ?ね?」

と、イヴの手を取って部屋に行くことにした。




 部屋の入口の左側に机、その隣に本棚、右側に写真と中央奥にベッド。前と変わったところは無い。

 本棚の前に立ってそれらしい本を探す。黒く分厚い本が目に入り引き抜こうとするがピッタリ嵌っていてなかなか取れない。

 無理やり引き抜こうとしたせいか、棚が揺れて上の段から落ちてきた本が頭に当たってしまった。


「いっったぁ〜〜、最悪」


 頭頂部を擦ると若干膨らんでいた。後ろから鼻を鳴らす音が聞こえた。恥ずかしい。


「その食…なんとかってこれでいいのかな?」


 やっとのことで取り出せた本をイヴに見せる。

汚れたカバーに革ベルトのついた如何にも古そうな本だった。


「これはネクロノミコン。でも、まぁこれなら載ってるか」


「呪文どの辺にあるかな?」


「さぁ?斜め読みするだけで5日と半日は掛かるだろうから今は使えない」


 イヴはページをパラパラと捲って閉じた。


「えぇ〜痛い目にあったのに〜。他に特定出来そうな……あ、日記つけてたりするかな?カレンダーでもいいや」


 魔道書の前にしていた話を思い出して机の引き出しを開けてみる。案の定予想が当たっていて、手のひらサイズの日記帳を見つけた。

 しかし、ダイヤル式の鍵が掛かっていて開かない。


「イヴちゃん、パスワードらしい数字知らない?4桁だから何かの日付が入ると思うんだけど」


 日記をイヴに渡してみたが、誕生日も記念日も当てはまらなかったようだ。もしかしてと初期パスワードを入れてみてもダメだった。


「鍵を壊してしまえればいいんだけど、無理だよね」


 遺品に傷を付けることなんて私にはできない。


「あ、そうだ。イヴちゃんなんでここに来たの?用事があったとか?」


 たまたまにしてはタイミングが悪すぎる。


「嫌な予感がしたから戻ってきた。それだけ。そうとしか説明出来ない。……他には?」


「そっか……。うーん、聞き込みに行くしか思いつかないな。ここで足踏みしているよりはいいよね」


 パジャマから服に着替えて玄関に行く。服はドリームランドに来たときの水色のワンピース。夢見の話を聞いてもしかしたら直せるんじゃないかと思って寝る前に試していた。綺麗に元通りになって良かった。タイミング的にも、後回しにして血塗れの服をイヴちゃんに見つかりでもしたら……

 隣に目線を落とす。私が逃げないようにとイヴちゃんはずっと傍に居る。


「それじゃあ、行こっか」


 イヴちゃんの手を取り、2度目のドリームランドの大地を踏みしめた。

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