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窮屈な靴

作者: 佐藤

 その靴は窮屈で、私は歩きだそうとする度に

「あぁ、この靴はやっぱり私には窮屈だ」と、ため息をつく。


 でも、その靴はとても綺麗で、それを見た人は皆

「なんて綺麗な靴なんだ!それを履いているあなたも

素晴らしい人だ!」と手を叩く。私はこの素敵な靴のお陰で、

人よりも高い目線で生きることができる。


 けれど最近、この靴は、私にとって窮屈だ。

足に合わないせいか痛み、バランスを取ることも難しい。

その不格好な歩き方を笑われ、指を差されているような気がする。

この靴と自分は、不釣り合いではないかとさえ思ってしまう。

歩き続けることに不安を感じ、誰かに相談しても皆

「きっとそのうち慣れる。素敵な靴だから、

我慢しないともったいない」と首を横に振る。

「確かにそうかもしれない」と頷いてから、もう何年経っただろう。


 私はこの靴が、段々嫌になってきた。最初はこの靴を履きたくて

仕方がなかったが、どう考えても私の負担が大きすぎる。

どうして自分の足に合わないのに、こうして毎日履き続けなければ

ならないのかと怒り、私は自分に合う靴を探しに行こうと決意した。


 それなのに、この靴が、邪魔をする。

この靴の価値が、私の靴選びの邪魔をする。

それは、いつの間にか私の価値が、この靴そのものになっていたから。

「この靴を失えば、きっと私には価値が無い」そう気づいてしまったから。


 すると、こんなにも窮屈でたまらないのに、この靴を手放すことが

怖くなった。どうしてこの素敵な靴は、私にぴたりとはまって

くれなかったのだろう。どうして私は、この素敵な靴を

履きこなす努力ができないのだろう。


 靴擦れで血が出たら、許してもらえるのだろうか。

それとも「きちんと靴を履けないなんて!」と怒られるだろうか。


 私は今日も窮屈な靴を履きながら、

「あぁ、自分に合った靴で歩く人は羨ましい。

そうすればもっと遠くに行けるのに」と、ため息をついた。

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