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幸福だという友人は懇願する

集まってきた騎士達をヒートが爆発で牽制する。

とはいえ、音と光の爆発であるため気づかれたら再び不利な状態に戻るだろう。


「王、ヒートの魔法は暴走させないでね。心の声聞こえないから」


「わかった。シンプルに無力化で行こうかい」


国王は魔王を片腕で吹き飛ばす。

恐らく魔法を操る魔法とやらでわざと弱体化させたのだろう。やはり只者ではない。


すると、俺の手から、固まった泥がはがれるように岩が消えた。

そこには、むきだしの肉のような人間の手。


ヤバイ。人間に戻りかけている。


俺は王から慌てて距離を取った。


すると、天音が俺を吹き飛ばすように、光弾を追撃させた。

俺は腕を払うようにして吹き飛ばす。ついでに、騎士達をなぎ倒しつつヒートの援護もする。


「やっぱお前が一番厄介だわ」


天音はため息をつくようにそう言うと、空気を薙ぐように手をバっと振り払った。


次の瞬間


周りの景色が変わっていた。


朝方の登りかけの太陽と城が見える。眠っている街が良く見える。

この王都の全てを見渡せるこの場所は、俺達がいつも修行していた空き地、俺と天音が、この世界に来てから初めてコミュニケーションをとることができた場所。


「うってつけだろ?多分俺もお前もここに来るの最後になるだろうから」


他に人はいないようだった。

明け方なのだから当たり前か。きっと天音はそれも見越してここに場所を移した。


恐らく、今の天音は本気を出すだけで回りの人間を巻き込んでしまう程の力を手に入れているということだろう。

これから神になるという人間が災害になっては意味がないもんな。


ヒートよりもアランよりもチルハよりも魔王よりも、俺をまず殺しにかかるようだ。臨戦態勢を作り、天音の行動を伺った。


すると、逆に天音は降参をするように、全身の力を抜くように戦闘態勢をといた。


そして


「最後のお願い。アイツら連れて逃げてよ。」


泣きそうな笑顔を浮かべ、震えるように懇願した。


「お前なら逃げ切れるでしょ。頼むよ。俺、お前らに死んでほしくないんだよ。お願い。俺が神になれば、何もかもが解決するの。それだけでみんなが幸せになれるんだよ」


どういうことだよ。説明しろよ。俺達はずっとそう言ってるだろ。


俺の疑問に、天音は答えてくれなかった。


「俺、みんなの英雄になれて力を手に入れてめっちゃ幸せだから。轟介は心配してくれてるんだろうけど、大丈夫。別に俺、死ぬわけじゃないし、恩みたいなのも感じなくていいよ、この通りみんなに黙って神になっちゃうような薄情者なんだから。俺のことなんて忘れちゃえばいいんだよ、もうお前らは俺一人いなくても大丈夫だろ?」


天音はまくしたてるように言い訳のような、言い聞かせるような、言葉の洪水を浴びさせてくる。


「だから、お願いだから俺のこと諦めてよ」


天音は、そう言って土下座をしていた。


ふざけるな。


ふざけるなふざけるなふざけるな。


自分の事を幸せって言いながら泣く奴がいるかよ。


お前は、どうなんだよ。お前はそれで幸せになれるのかよ、また笑えるのかよ。


俺の幸せをなんでお前に決められなくちゃいけないんだよ。


幸せになれるわけ無いだろ。お前が幸せじゃない世界なんて、

お前の人格が無くなることで、お前がいなくなることで、無理矢理幸せにさせられた世界での生活が、幸せなわけないだろ。


――あぁ、きっとこの言葉は天音に届いていない。


コイツは一度も俺の目を見ていない。

あの日から一度も俺の心を読んでいない。


そうやって俺を無視して、知らないふりして、自分勝手に心を決めつけて。ふざけるな。


こんなに怒ったのは生まれて初めてだ。

胃液が沸騰し、血液の流れが速くなり、全てを踏み潰して終わらせてしまいたいような感覚だ。


沸き上がり続ける苛立ちが頂点に達し、俺は衝動的に地面にクレーターができる程強く一歩を踏み出し


天音を抱きしめていた。

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