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強い友人の隣は俺であってほしかった

「単刀直入に言いましょう。女神様は王さえ殺せば人間に戻れるであります」


「本当ッスか!!」


希望に満ちた声でヒートは言った。

しかし、その言葉の裏の意味は、既に天音は完全に人間ではない存在になってしまっているという意味でもある。

そして、どう頑張っても国家転覆にはなるというわけか。


「女神様の強大な力は吾輩の魔法だけで集めたわけではありません。王の魔法が一緒に無いと成り立たないのであります」


「え、魔王からは、王は魔法を消す魔法と聞いてたんスけど…」


「マオちゃんにはそう見えていたのですね。王はあえて詳しい情報を与えなかったのでしょう。……後でマオちゃんを裏切る予定でしたから。」


アイリスは言いにくそうにそんな残酷な事実を口にした。

聡明な魔王がそれに気づかないわけがない。

あの日、「いかないで」という魔王のか弱い声が蘇った。


「なんで、アンタ魔王の友達じゃ…」


ヒートは言いかけるが、それはアイリスの地雷であったのか「今はその話はどうでもよいであります」と語気を荒くし無理やり言葉を止めた。


「それより、王の本来の魔法は魔法を消す魔法ではない。魔法を操る魔法であります」


「魔法を操る魔法?」


「例えば貴殿の魔法であれば、魔法を使えなくさせたり、オーバーヒートさせたり、弱くさせたりなど勝手に王が操作できるであります。つまり、強大な魔法を持つ女神様は王がいないとその魔法を抑えきれず逃がしてしまうので、王がいないと女神状態で入れないであります。」


「…じゃあどっちみち、今の王が寿命で死んだら終わりじゃないッスか。あまりにも刹那的な神ッス」


「王は死にませんよ。あの方は長く安定した世を作ることだけを考える怪物のような存在。マオちゃんの不老不死を奪って一生長生きする予定であります」


「でも不老不死は今…」


「はい。何者かによって奪われました」


どうやらその犯人が天音だということは知らないようだ。


「兎にも角にも女神様が今の立場を望むなら、王を絶対に殺させません。そして、王は女神様の強化ができる。最強のコンビというわけです」


それは、すごく嫌な響きだった。


自分以上に相性の良い相手が天音にいるという事がこんなにもモヤっとするものだとは思わなかった。

傲慢にも、そこが自分の場所だという意識があったのだろうか。


「それでも行くつもりでありますか。貴殿達に勝ち目など無いのであります」


「それはどうでしょうね」


ふと、涼し気な声が頭上から聞こえてきた。


「マオちゃん?!」


冷静だったアイリスの声が裏返った。魔王は相変わらずの無表情で俺の肩に座った。


「お久しぶりですね。アイリス。あまり会いたくはありませんでしたが」


「マオちゃん吾輩は……」


「積る話はあとでしましょう。私達はこれからラスボスを倒しに行かなくてはいけないので」


アイリスの伸ばしかけた手が密かに引っ込んだ。

もしかして、この少女の俺達に共感した部分というのは魔王によるものだというのだろうか。


「チルハくんは?」


「チルハは置いてきました。あの子独りで十分そうなので。なんです?あのチート魔法」


「一人置いてきたんスか!?」


「安心してください。騎士はほとんど倒しました。それとも貴方は騎士よりも王とあの馬鹿に挑む方が安全だと?」


異論はないな。そう思っていたら魔王は俺の頭を無理やり階段の上に向けた。俺はロボットか。


「マオちゃん。吾輩王が裏切るのを知ってって黙っていたであります」


「今、それ言います?」


魔王は目を細めて嘲笑した。アイリスはぎこちない笑みを返した。


「王はマオちゃんを真っ先に捕らえにかかります。不老不死はきっと心の中を読む魔法の次ぐらいに欲しい魔法でありますから」


「その時はまた貴方が私を裏切ってこの魔法を奪うのでしょう」


「…そうですね。その代わり世話係を買ってでるでありますよ」


「素敵な提案ですね」


魔王の皮肉を聴いて、アイリスはふっと自嘲的な笑みを浮かべた。そして大きく息を吸い込んだ。


「総員、道をつくるであります!!」


芯のある凛とした声でアイリスが叫んだ。騎士達が敬礼をして道を作る


「地獄の花道であります。どういう死にざまをするのか見ていてあげるのでご安心を。」


今度は自然に、へらりとした笑みをアイリスは浮かべた。それに魔王は変わらず嘲笑に近い笑みで返した。


「はい、末代まで語り継いであげてください。国家転覆を目論み神に挑んだ馬鹿達を」

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