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独りぼっちな友人を知る女③


カレンは語った

よくつるんでいたグループ内で、馬鹿だけどみんなに好かれる人気者の天音と付き合ってみたいと思った話を、天音に感じた孤独の話を。


「アイツ、いつも男友達の誰かしらの家に泊まっててさ、寂しがり屋なんだって気づいた時、なんかめっちゃ愛しくなっちゃって、その寂しさ埋めてやりて~みたいな気持ちになって」


口調は軽く、ドラマの登場人物について話しているような他人事感のある言い方だったが、天音を好きになった理由はほとんど俺と同じだった。


「ただ、アイツの寂しさって私が思ってたより簡単じゃなかったっつーか、私じゃ埋められなかったっつーか、根深かったっつーか」


「貴女が思わずフッてしまう程に?」


「…まぁね。育った環境の問題だったみたいで、私が変に寄り添った方がヤバいっつーか、抱えきれないっつーかま、気軽に触れたら火傷する超危険物件だったわけよ」


育った環境の問題?

俺は幼いころ、少ない回数ではあるが天音の両親と会ったことがある。

どちらも天音と違って真面目な感じのしっかりした人だった。


「兵頭轟介、アンタ幼馴染なら知ってるっしょ、アイツがネグレクト受けてたこと」


だからこの言葉に、今すれ違った人間が飛び込み自殺したことを知ったようなショックを受けた。

どこも問題のない普通な家庭だと思っていた、天音は友達がいっぱいいて俺とは違って誰からでも好かれる幸せ者なのだと思っていたから。


「アイツの親、互いに不倫してたみたいで小さいころから全然家に帰ってこなかったんだって」


魔王は念願の天音の不幸話を聞いてもおもったよりも面白くなさそうな顔をしてる


「ふーん思ったよりもつまらない理由ですね」


「いっそ笑い話になった方がマシだったんだけどね」


天音の孤独に気づけなかった自分が悔しかった。

いつからだろうか。もしかしたら、一人ポツンとベランダで座っていた、初めて出会ったあの時からずっとアイツは孤独だったのかもしれない。


「それでは貴方は用済みなので死んでもらいますね」


無慈悲にも魔王はカレンに手刀を突き立てた。魔王の手刀は少し触れただけでも血が出る程に殺傷力のある凶器である。

魔王に完全に動きを封じられた状態でナイフを突き立てられるというのはまさしく崖に追い詰められているのと同じ絶体絶命の状況である。


「あちゃ~☆やっぱ?じゃ、遺言残していい?」


対してカレンはなんてことないように、笑って言った。


「相手に遺言を残させることに、個人的に良い思い出が無いので嫌です」


待て待て待て、今すぐ殺すことは無いだろ。


俺は魔王の手をつかみ止める。


「情でも湧きましたかゴースケ。ですがこの子は貴方の大切な人が神になるのを見殺しにしてる人ですよ。それとも女性は殺さないポリシーでもあるのです?」


俺はお前を殺そうとしてたのを忘れたのか?性別関係なく魔法が使えるこの世界でそんなポリシーは無い。


俺も同じだ。天音の親の事を、気づかないふりしていた。見殺ししていた。


「…じゃ、アンタに遺言言うわ兵頭轟介クン。」


「アンタに天音を背負う覚悟ある?寂しさを埋める自信ある?」


俺一人じゃ無理だ。絶対に。

でも、今は俺含め4人もアイツを慕う馬鹿達がいるんだよ。5人も家族がいるなら寂しいわけ無いだろ


「ははっ、何言ってかわかんね~わ」


カラッと笑った

そりゃそうだよな。


「じゃあ私が翻訳してあげましょうか」


できないだろ。天音じゃないんだし


「この男、天音の事が好きなんですよ。なので王子様になりたいんです」


勝手な事を言うんじゃないよ。俺は慌てて首を振りまくる。いや間違えてはないのかもしれないのだが

焦る俺をよそに2人はマイペースに会話を続けていく


「マジ?ホモ?いや、今天音女だからノンケか、いやでも生前からの知り合いなら普通に前の性別チラつかん?」


「愛とは性別を凌駕するものなのですよ」


「アンタが愛とか言うと胡散臭いね」


「ふふ、私もまだこの言葉は苦いです」


「ですが、どうやらあの人が私を倒せたのはその愛とかいう力らしいので、私も勉強しようと思っているのです。」


魔王は急に満足したのか、手をカレンの首に突き立てた。


「それでは死んでください」


「……」


そう言ってカレンの首を貫いた



……と思いきや

魔王の手はカレンの首をへこませるだけであった。まるで弾力性のあるゴムのように、魔王がどこまで深く突き刺しても貫けない。

魔王の手加減?


そんなことする奴だったのか、いやそんなはずはない。

魔王の表情は冷静っぽいもの明らかに戸惑っているオーラを出している。

一瞬のその隙に、魔王の腕から燃え上がった。魔王は即座にカレンから退き、獣のように四つん這いで前を見据える


「さすが、対策が早いな」


血のように赤黒い髪をした渋めの顔立ちをした、俺を昨夜炎の中に閉じ込めた男が立っていた。


魔王は間髪入れずとびかかる。しかし、カレンの触手がそれを許さず魔王を突き落とした。

魔王は下の階に吹っ飛んでいく。


「サンキューパイセン!助かったわ!マジピンチだった~!」


カレンは軽い調子で笑い立ち上がった。


「もうちょっと女子トークしてもよかったんだけど、アタシ達正義のミカタだからさ!悪い泥棒サンたちには大人しくしててもらわないといかんのよ!」


そう簡単にここを通してくれるわけでは無さそうだ。


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