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士気を上げる友人はその可能性に光だけを見出した

俺達はチルハの実家を後にして、今度は第4区に向かっていた。


「洗脳か…それは随分厄介な魔法だな…」


「今まで魔王城に近づく騎士がほとんどいなかったのもそれッスかね?」


「そもそもどの範囲で効く魔法なんやろ…一度かけられたらもうダメなんかな?」


3人がそれぞれ私見を口にする。


「なぁウーサー、お前は光の勇者見つけてどうしたの?」


天音は俺に肩車されている自分の背より高い場所にいるウーサーに話しかけた


「そんなの決まってるだろ、魔王を倒してもらうんだ」


「じゃ、俺達で倒しちゃっても問題無いわけだな~」


ヒートとアランとチルハはギョッとした顔で天音を見た。


俺は、「あぁ、覚悟を決めたのか」と、天音を見守った。


「honey…突拍子の無い事を言い出すのはいつものことだが、今回はどうした?」


「ん~、俺このパーティーでなら倒せる気がするんだよ」


もっと具体的に説明してやれ。なんなら心を読む力を告白してもいいじゃないか。


「そ、そんな根拠も無しに行くような場所じゃないッスよ!!」


「…たしかに」


驚くべきことに、天音が説明する前にチルハがそう呟いた。


「ゴースケくんなら洗脳の影響を受けへんかも…」


「そう!それだよチルハ!!」


いや、それじゃないだろ。のっかるな。


……嫌、もしかしたら本当に俺にはかからない可能性がある。

魔王の魔法の範囲がまだ不明だが、もしかしたら、もしかしたらゴーレムの俺は洗脳が効かないのではないか?


「ゴースケ!やっぱお前が最強だよ!!」


はいはい。なんなんだその俺の強さに対する信頼は。軽く言ってくるが俺には重すぎる。


「…………俺は、正直、王が魔王と協力関係を結んでいることを疑っていた」


唐突にアランが言った。


いや、天音が魔王の魔法を説明した時、もしかしたら天音とデートして魔王城を見つけた時から、ずっと言おうとしていた言葉なのかもしれない。


その言葉は重かった。


「どんなに倒しても数か月後には必ず元に戻っている。まるで補充されるように魔物は増える。精鋭の騎士団を持ちながら魔王はいつまでも倒されない…魔王に脅されるなどして何らかの提携をしているのではないかと疑っていた」


その可能性について、一度も考えなかったといえばウソになる。ヒートもチルハも身に覚えがあるような顔をしている。

嘘だ。ヒートはあんぐりと口を開けている。多分アイツはわかっていなかったな。うん。


とにかく、俺や天音と違って、何年も王都に奉仕しているアランがそういった疑念を抱いて生活をすることの苦しさは想像に難くない。


特に、アランのような生き様の美しさを重視するタイプの人間にはそれがどんなに苦しかったか…


しかし、語る言葉に反してアランの言葉は少しずつ明るくなっていた。


「だが、もしhoneyの言う通り魔法が洗脳なのだとしたら王は洗脳されているだけなのではないか…もしかしたら魔王を倒すことを諦めてないのでは…その可能性がでてきたわけだよな」


誰とでも仲良くなりたい、性善説で動きがちな天音と似ているアランには、きっとその"可能性"は大きな心の救いになったのではないか。

その言葉端にはどこか興奮が見えた。


天音もアランの提示する可能性の言葉を聴いてパアっと笑みを浮かべた


「そうだよ!みんな洗脳されてるだけなのかもしれない!!」


「な、なら助けなくちゃッスよね!!」


「天音ちゃんの言う通り魔王を倒したらみんな助かるかもやね!」


魔王の力に対抗できる手段も、魔王を倒す目的も見つけたことで、パーティーの目的は一つの方向にまとまりはじめていた。


ただ一人、俺の頭上の少年ウーサーだけが最初から今までずっと暗い顔を変えていなかったことだけが俺には気がかりであった。

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