変わらない友人はわかりきった答えを言う
――光の勇者とは、唯一魔王を倒せる切り札である伝説の勇者のことである。
王都の騎士団を差し置いて、2年前颯爽と現れ魔王を殺す寸前ますまでいきあと一歩のところで倒せたらしいが、何らかの理由で逃げ出したらしい。
それ以来見つかっていないがその勇者が使う魔法は人の心を見ることができる。
その魔法は魔王の唯一の弱点だとか。
というのが天音が少年から読んだ内容らしい。
「…めっちゃ趣味悪い異名じゃね?光の勇者」
そこじゃないだろう。
そもそも心当たりはあるのか?
いや、そんなはずはない。
俺が目覚めたのは数か月前の話だ。2年前に現れたという光の勇者がお前なわけないだろ。
心を読む魔法と似た魔法を持った騎士だっていてもおかしく無いし、
「…」
天音はやたら穏やかな表情で俺を見ていた。生暖かい笑みだとでも言うべきか。
なんだよ…心当たりがあるのか?
「い~や全く!」
紛らわしい表情しやがって!!
「お前が俺が光の勇者なのが嫌みたいだったからさ!!ウケるな~って」
当たり前だ。光の勇者だとかそんな大層なものを背負う必要、ない方がいいに決まってる。
「本当に俺が光の勇者だった時はいっちょ倒しに行って天下とろうぜ!」
そういえば初期にも言ってたなそんなこと。安心しろ。お前が光の勇者である可能性は極めて低い。
「まぁ、魔王の弱点が心を読む魔法であることは事実なんだろうけどね」
……………光の勇者が別にいる場合、お前がやる必要は無いだろ。そんな危険なこと
「えーお前と一緒なら行ける気がするよ~」
天音は無邪気に笑った。
なんでそんなにお前は俺の力を過信してるんだ。
俺はただ図体がでかいだけのゴーレムだ。
どんなRPGもゴーレムなんて良くて序盤の中ボスぐらいだろう。
「お前はお前だしこの世界はプログラミングされてるわけじゃないんだぞ?ゴーレムが魔王を倒す物語とか俺超見て見たい」
もしかして、お前魔王を倒しにいくつもりか!?
「そこまで無謀じゃないって~俺今世は若くして死にたくないし~それにこの国の人は多分…」
天音は含みのある言い方をして何かを言いかけた時、ノックの音が聞こえた。
「あ、あいつらか!もう入れてもいいよなこの子の事情は察したし」
なんとも気になるところで中断してくれるな。まぁ後でもいい話ってわけなんだろうな。
「この子はウーサ―。みんなが言ってた通り第5区出身で自分の住処が魔物に襲われてこの街まで仲間と逃げてきて一人だけ生き残ったらしい」
「それは気の毒やな…」
「自分の国を助けてくれなかったことを逆恨みして、たまたま見つけた王都の騎士に殴りかかって捕まったらしい。一時的に捕まえられて処遇を決めかねてる間に逃げてここで行き倒れたってわけ」
「なかなか着物据わったboyだな…」
いつのまにかアランも加わった俺達パーティーは、丸まって状況確認をしていた。
「それにしてもあの警戒しっきりの状態から口を割らせるなんてさすがッス姐さん!」
「…ま、まぁな!!他の人間にはバラすなって言われてるからあくまでも知らないふりしてくれよ!」
なるほど、そうして自分の魔法を隠すわけか。
「とりあえずこの子どうするん?」
チルハの問いに天音はわかりやすく考える仕草をしてから言った。
「匿う!!!!そして光の勇者を見つけたる!!」
俺を含め、4人とも天音からその結論がでることはわかりきっていた。わかりきりすぎて顔を合わせて笑ってしまった。