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ズルイ友人の打ち明け話

――なぁ。天音。俺の心の声が聞こえているんだろう?


天音は、俺の言葉が聞こえていないかのように、にこりと笑ってから夜景に目を移した。


無視をするなアマネ。

お前、俺の心の中読めているだろう。


いや、俺の心の中だけではない。お前、人の心が読める魔法を持っているな。


おかしいと思ったんだ。初めて会った時、ただのゴーレムを俺と判断するのか。人の心を察するのが苦手なお前が気の利いた行動ばかりとれるのか。初めて見る町の地形を完全に把握しているのか。


それでも天音はやはり夜景を見つめつづける。


しかし、俺はその顔が微妙にひきつっているのを見逃さなかった。



―――あ、ポメラニアンの赤ちゃんの大群だ


「マジで!?」


反射的に発せられた人間らしい言葉に「あ」と短い後悔の声が漏れた。

柵に肘をついていた天音は、急に力が抜けたように、ずるずると右腕から顔を滑り落として俺から顔を背けた。


「………………………………………………気づいたか~」


これまでの元気いっぱいの言動から想像できない程小さく籠った声だ。

天音の視界に入っていないはずの俺が、その言葉に頷くと、天音はゆっくりと振り返った。

口元は笑えばいいのか真面目な顔をするのか迷っているのかぐねぐねで、美少女にあるまじきちょっとおもしろい表情だった。


「聞こえてるからな!失礼な」


やはり、心を読む魔法でビンゴだったらしい。


「お前が朝起きた時から二人きりになりたいってずっと考えてたからさー…何事かと思ったのに…」


そんな事を言いながらため息をつく。


「ねぇねぇいつから気づいてたんだよ?」


切り替えの異常に速い天音は、そのため息がスイッチだったかのように開き直ってきた。


疑問に思い始めたのも、確信したのも、この間のアランとお前のデートの時の様子だ。

俺はお前に恋愛映画が苦手だという話をしたことがないからな。

……お前なんで隠してたんだよ


「だって、すごい奴っぽく見せたいじゃん」


ぶれねぇな!お前は!!


「冗談冗談!!聞こえてるってバレたらお前困るかな~って」


は?なんでだよ


「だってお前が心の中で俺の事ほめたたえてたのも全部聞こえてるぜ♡」


思い出すは初対面。


思わず硬直してしまうほどの衝撃的に美しい少女に出会った俺は、心の中で何考えていたか


ゴーレムのはずの俺の頭が一気に熱くなるのを感じた


「なんだっけな~こんな美しい女性初めて見たとかなんとか…」


やめろ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


「あはははは!!俺もお前に心読めることがバレて恥ずかしいからお互い様な!」


なるほどな。俺は優れたリーダー様だから仲間の考えてることなんてお見通し…だとかなんとか…


「はいはいもうこの話は終わりでーす!!さっさとみんなのとこ戻るぞ―!」


お互いの傷をえぐり合っていたら、天音が強制終了して、道を戻ろうとした。


俺は巨大化してそんな天音を捕まえた。


「うわっ何するん?!」


俺は天音を肩に乗せてあぐらをかく。

確かにこの修行場は夜景が綺麗で、穴場のスポットだな。ここに行くのはいつも昼だから気づかなかった。いい事を知った。


「…お前に乗ると景色いいね。何?それを伝えたかったの?」


なんでちょっと怒ってるんだよ。


…もう二度とできないと思ってた、お前とのコミュニケーションができて俺は少し浮かれているんだ。


少しだけ付き合ってくれ


「………………悪かったよ。黙ってて」


天音は俺の頭に甘えるようによっかかってきた。

心臓が大きく跳ねる。


「あ、今ドキッてしたろ」


うるさいな。ご存知の通り童貞なのでドキドキしっぱなしだ。


「美少女に転生したら男を翻弄したいってずっと思ってたんだよな!お前、心の中で右往左往するからおもしろくてさ!」


…身体は大切にしろよ…気持ちはわからなくもないが…


「ははっ母ちゃんかよ」


急に女に転生して戸惑ったりしてないのか?


「いや、めっちゃ戸惑ったよ。女の子ってちょー大変。一か月に一回は股から血が…」


な、生々しい…


「ま、でもこの生では女の生を楽しむって決めたから!」


開き直ってる。やはりポジティブだなお前は。そういうとこだけ尊敬してる。


「元からオシャレとかすんの好きだったし、案外楽しいよ。男の時より気にすることも増えたし右往左往してるけど」


全く戸惑っているように見えなかった。意外だ。

もしかしたら俺の知らないところでひそかに苦労していたのかもしれない


「お前は大変じゃない?」


案外ゴーレムも楽しいよ。俺は元から喋るのが得意じゃないし。デカいから単純に強い肉体を得られたしこの世界ではむしろすごしやすい。


「いや、超絶美少女が誘惑してきて大変じゃない?好きになったりしないの?」


そっちかよ!?


友達が女に転生したからってせ、性欲を抱くなんて最低だろ。いや、その、男だからさすがに触れられたらドキドキとかすることで、女になったからって好きになるのは本当の愛じゃないだろうし俺は


「真面目だなぁ!超ウケル」


俺の心の中の長文言い訳を超ウケルで笑い飛ばしてきた。そういうところだよ。


「アイツらには俺の魔法、秘密にしておいてくれよ?俺が本当は馬鹿だってバレたくないし」


そんなんで離れるやつらじゃないだろ。そんなこともわからない程馬鹿だったか?


「嫌な言い方するねお前!!デコピンしてやる」


びっくりするほど痛くねー


「俺の指の方が痛い!!ズルイよゴーレムなんて」


そう言って天音は笑った。ズルイのはどっちだ。


俺達のくだらない会話は天音の腹の音が鳴るまで続いた。

いつも見てくださっていただきありがとうございます。

ここから折り返しなのですが、一日だけ更新休ませていただきます。

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