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友人と2人きりになったわけだが


「絶対笑わん?」


チルハはローブを深くかぶって言った。


「友達が落ち込んでるのに笑うやつがいるかよ」


天音はかっこよく答えるが、俺がゴーレムに転生したとわかった途端大爆笑してたような。


「…ウチ、あんま今までお友達ができたことなかったから…アマネちゃんがはじめてのお友達なんや、だからこういう気持ちもはじめてでようわからんねん」


チルハはそう言って、膝に顔をうずめる。


「いいよ。一緒に整理していこうな」


天音は年上のお兄さんらしく、ゆっくりとチルハに語り掛けた。


「なんか、アランくんが来て、ヒートくんがいて、みんなで一緒に頑張る今がとっても楽しいねん。でも、だけど、なんかアマネちゃんがアラン君と仲良くしとるの見ると…行かないで…って気持ちになって、なんか悲しくなって…」


そういってチルハはさらに膝に顔をうずめた。


友愛と恋愛、友人と恋人、多くの人間はいざとなったらどちらを優先するか、心のどこかで理解しているからこその葛藤なのだろう。


「俺がアランなんかに盗られるわけないだろ~かわいいやつだな~俺は誰のものでもないぞ~」


そう言って天音はよっかかるようにチルハに寄り添った。


「…心配しなくても俺は特定の男の人とそういう関係になるつもりはないよ」


そう言って、チルハの頭に手を置いた。

俺の頭にも。


…俺は余計だろ。


「…それはそれで問題やん…」


そうは言いながらもチルハは少し気持ちが落ち着いてきたようで、鼻を赤くして顔をあげた。


「あはは心配してくれるなんていい子だなーチルハは」


「…ううん。アマネちゃんはウチのことかわいいとか良い子だとか言ってくれるけど全然そんなんじゃないねん…こんな幼稚な嫉妬…」


「んーにゃチルハはいい子だよ」


食い気味で天音は言った。


「俺はさー友達が生涯童貞だったからそういう気持ちはわからんけど」


俺のことか?それは俺のことか?


「もし、相手に恋人ができたら遠慮して、付き合いとか減らすかも。」


「でもそこで疎遠になっちゃったら都合のいい子で終わっちゃう。何より憎い友達の恋人にとってのな」


なんだか


「そもそも相手の気持ちを決めつけるなんてナンセンスだし、相手が良いって言ってるならふてぶてしく居座っていいんだよ」


なんだか俺に言われているような気がして、やけに居心地が悪くなった。


「…なんか気持ち整理したらスッキリしてきたわ」


天音の自分本位な意見に癒されたのか吹っ切れたのか、はたまたどうでもよくなったのか、チルハはクスクスと笑いながら言った。


「それならなにより!」


天音は豪快に笑って、チルハの頭をローブごと撫でた。


「ほら、男どもも帰ってくるだろうし、飯食い行こうぜ」


天音はそう言って遠くから勢いよく走ってくる男を見て立ち上がった。チルハもそれを見てゆっくりと立ち上がり、二人して、修行場を後にした。


「ねえさん!?アランさんの腹筋みたことあります!?めっちゃバキバキッス!」


そっちはそっちで男同士仲良くなったみたいだ。大型犬のようにアランを慕うヒートにアランはかなり誇らしげだ。


「マジ?触ってみてもよい?」


「フフ…どこからでも触るといいさ…honey…」


「オラっ」


明らかに触れるという勢いじゃない…というか最早腹パンだった。アランはそれなりのダメージを受けたようで「その掛け声は腹筋を触る時の掛け声ではない…」と呻いていた。


「あ、わすれもの。みんな先に行ってて!ごはんも食ってていいよ」


呻いているアランに「わりーわりー!」と反省してなさそうに謝ると、天音がそんなことを言い出した。

ところどころ抜けてるな。お前は。


なんて呆れつつ、ほぼ天音とニコイチである俺はそのまま天音の肩にしがみつく。






「…久しぶりに二人きりじゃない?ゴースケ」


しばらく静かな道を歩いていたところ、ふと天音が言った。


その言葉で、ようやくこの状況が今日一日俺の望んでいた状況であったことに気づく。



「いや~最近にぎやかになったからな~こういう時間もあんま無くなっちゃったよな」


2人きりであるという事実に気づいた途端。無いはずの心臓が大きく跳ねた。


そうだ。俺はアランのデートの時、確信したことがあったのだ。


言わなくては、伝えなくては。


気づいたら、いつもの修行場に戻っていた。


修行場は少し高い場所にあるため、目の前には夜の賑やかな町の風景が広がっている。喧噪から外れた場所だが、やけに町の音が目立つような場所だ。


天音は夜景をみるかのように柵によりかかって「ちょーきれいじゃない?」なんて笑った。


その笑顔を見て、


俺は意を決して心の中で天音に語り掛けた。




――なぁアマネ。



――お前、本当は俺の心の声が聞こえているんだろ?


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