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自称聡明な友人は察しがよい


そういうわけで、俺達は空き地で修行をしていた。


天音とアランの相手役として俺がサンドバックとなり、それを見てチルハが指導している形だ。

ちなみにヒートは「何回も連続して魔法を打てるようになりたいんで体力つけるッス!」とかなんとか言って走り込みにでかけた。


「あーーつかれた!!今日はここまでね!」


日もすっかり落ち、天音とアランの体力が切れたところで修行を終えた。

今は走り込みをしているヒートを待って雑談をしている状態だ。


「ゴースケくんって痛みはあらへんの?」


俺は好奇心の塊であるチルハの問いに、少し考えてからコクリと頷く。

痛みはゼロでは無いが、感覚としてかなり鈍くなっているように思える。

熱いものや冷たい物も人間の時よりも感じにくくなっている。なんというか、分厚い布を全身身にまとっている感覚だ。


「だから、痛みで動きが鈍くならないんや…」


チルハがブツブツと呪文のような言葉をつぶやく。嫌な予感しかしない。

この間、この娘は俺の寝床に忍び込んで、魔物に効く薬を試してきたのだ。その時は特に異変が無かったから軽い頭突きで済んだが、なんと12時間後に効果が表れ1分間全身が痺れるというとんでもない目にあったのだ。


「なんだよそんなんズルじゃん!」


天音があまりにもな言いがかりをつけてくる。


「そうだな実戦だと痛みで敵の動きが必ず鈍くなる瞬間があるだろうし、ちょっとサンドバックにするにしてはストーンキャットは強すぎるかもしれないな…」


「せやね。ゴースケくんと戦うのに慣れることで他の弱い敵を楽勝って思えるようになるとええな!」


あまりにも身に余る俺を誉めるターンで恥ずかしくなって天音の後ろに隠れるが


「だろー!俺の轟介はサイキョーなんだよ!」


何故か天音が一番鼻を高くしていた。なんでだよ。


「でも、アランくんやっぱ強いなぁ…ゴースケくんと渡り合えるなんて…」


チルハがどこか羨ましそうに言う。

チルハの言う通りアランは実力がトップレベルだと持て囃されるだけあって、かなり良い動きをしていた。

普段のイタイ言動とヤバい服装で忘れがちだが、天音をお姫様抱っこしたままかなりのスピードで走っていたぐらいだ。身のこなしは軽く、それでいてかなり力もある。それに、透明になる魔法を使ってくるものだから厄介なことこの上ない。


「ふ、トレビアンだろ?」


「マジで強いからムカツクよな~弱点とかないの?」


「暗殺する気か?honey…」


「なんでだよ!」


アランは天音に軽口を叩いてから


「まぁ、俺の弱点と言うと魔物…だな」


と、あっさり自分の弱点を晒した。


「魔物?!範囲広っ」


「俺の魔法は姿を消すのみで音や香りを消すことはできないからな。嗅覚や聴覚をメインに動く獣相手ではあまり意味が無いんだ。」


「そういえばアランくん対人系の依頼がメインやんな」


「対人系って何?どういうの?」


「魔法を悪用した犯罪を犯すものを捕えるのがメインだな。時間がかかるし高難易度な依頼は多いがその分報酬も多くもらえるんだ」


「時間かかるんだ、ま、そりゃそうか~」


「そうだな短くても2週間、一番長くて一年ぐらいかけたこともあったな。」


「1年かぁ長いなぁ」


「…honeyを初めて見たのもその時だったよ」


「「「?!」」」


アランは少しだけ照れ臭そうに言った


「そ、そうなん?!」


「え?!1年前?…いや~人違いじゃないの?さすがに~」


天音は気まずそうに俺を見た。

うん。間違いなく人違いだろうな。だって俺達が転生したきたのはつい最近の話である。アランの話を聞く限りその1年間の任務とやらは最近の話とは思えない。


「ふ、俺が運命の相手を間違えるわけないだろう!!」


「誰が運命の相手だよ。意味わかんね~仮面なんかしてっから見間違えんだよ~」


そんな軽口を叩き合っている二人を見て、チルハは一歩離れたところからぼんやりと見ていた。


先程のヒートとチルハの会話を思い返すに、アランに対して思うことがあるのだろうか。はたまた、アランに憧れていたという線もあり得なくも…ありえないな。

駄目だ。童貞が考えるとどうにも妄想力豊かになってしまう。


「みなさ~んすいません!おまたせしました!!」


ちょうどよいところで、汗だくの暑苦しい男が帰ってきた。


「男臭っ!むさくるしいからさっさとシャワー浴びてこいよ」


「もっと労わってほしいッス!」


「俺もシャワーを浴びてリフレッシュしてくるとするか…」


「おー行ってこい行ってこい!」


汗だくの男二人を見送ったことで、この場には俺と女性陣のみになった。


「で~、お前はなんでそんなに不機嫌なんだよ~チルハちゃんよ~」


そう言ってアマネはチルハのほっぺをうにうにと動かした。ひわわわわとおなじみの鳴き声をあげながらもチルハは楽しそうに笑った。


「アマネちゃんにはお見通しやね」


「聡明で悪いね!」


そんなイメージ持ったことなかった。


「超すごいリーダー様は仲間の隠し事なんて一発でお見通しなんだからな!」


それでも今の天音はやたら頼もしく見えた。

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