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返却された友人は子分をあやす

「ねえさぁああああああああああん!!!心配したんスよおおおおおお!」

「くーりんぐおふされとる!!」


その夜。疲れてぐーすかと眠る天音はヒートの部屋にそのまま返されていた。


「返そう!」というあまりにも淡泊な張り紙と共に


「…んぁ…何?部屋?」


天音はゆっくりと目を開け、欠伸をした。


「アマネちゃーん!!!」


いの一番にチルハが天音に抱き着いた。

天音が「わ」と小さく声をあげると、ヒートも「ねえええさあああん!!」とドデカ声で抱き着こうとしてきた


「お前みたいな巨体がいきなり抱き着いてきたら俺達潰れちゃうだろうが!!」


「すみませええん」


天音は喚くヒートの頭をあやすように、ポンポンと叩いた。


「いや、俺も悪かったな~!お前らがこんなに俺のこと心配してくれるなんて思わなかった」


「また、目立つようなことして王に目をつけられたらどうしようかと…!」


「そっちかよ」


天音はくすぐったそう笑って、二人の頭を撫でていた。



一方、俺はその様子をアランと共に少し離れた木の上から見ていた。


「ふふ、あの暴れキャットは俺には手に負えないようだ」


随分勝手理由だな。あんなにいい感じだったのに。


「…俺は初めて彼女を見た時、自分と同類だと思ったんだ」


アランは天音を見つめたまま突拍子も無く語りだした。


「人一倍周りを振り回す気質だが周りからは理解されず、自分を貫くことに何の抵抗もないが故に周囲から浮いてしまう。そのくせに人の事が大好きなんだ。」


あぁ、そうだ。そうなんだ。

間違いなく天音は天性の人を振り回すタイプの人間である。


前世の時は周囲と上手くそれがハマっていたことからみんなに好かれる存在であったが、同時に天音の事をものすごく苦手としている人も多く見てきた。特に俺の周りの友人などは、一人や少人数、熱血よりも一歩引いたところで見ているのが性に合う連中が多く、そんな天音を嫌ってすらいた。

また、天音はとにかく友達が多かったが、誰か特定の人間と仲の良い印象は無かったし、彼女も一か月続いたことが無いと聞いた。


「あの子はおまけにカリスマ性まで持ってるから、そういった奇特性に無意識に惹かれ人は集まる。しかしきっと、浅い関係で終わってしまうタイプなのだろうな。誰よりも孤独を恐れているのに」


俺は無意識に天音を陽キャと深く考えずカテゴライズし、何一つ不自由のしてない、誰とでも抵抗なく話せる人間だなんて思いこんでいた。


だが、アランの言葉でその本質を思い出した。



そうだ、アイツは、桐生天音は、どうしようもないぐらいの寂しがり屋だった。



はじめて天音と出会った時、アイツはマンションの階段で一人で泣いてた。


理由は単純だ。家に一人でいるのが嫌だったから。という子供らしいもの。


天音の親は放任主義だったのか、忙しい仕事の人だったのか、家にいるところをほとんど見たことがなかった。そのため、同じマンションに住んでいた俺と毎日のように遊んでいた。

一人になることをとにかくいやが


中学生になり、天音は友達が一気に増え、夜遅くまで遊んでくれるような友達もできた。

つまり、俺は不必要になった。自然と俺から離れていき、気づいたら疎遠の状態に至っていた。

そこからの天音は、一瞬でも恋人ができたり、朝帰りをしたり、友達と家で騒いだり、旅行に出かけたりととにかく充実しているように見えた。


だけど、もしかしたら、充実しているように見えた前世もまだ、どこかで孤独を感じていたのかもしれない。


俺はその可能性になぜだかひどく打ちのめされていた。


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