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そんな友人の反応に俺は戸惑っていた。


「何度でも言おうマイハニー。俺と結婚してくれ」


「けっ!?」


「こ!?」


「「ん!???」」


ヒートとチルハの大きなハーモニーが部屋に響いた。


アランの仮面の奥の表情は読み取れず、ふざけて言っているのか本気で言っているのか全く判断がつかない。


「え?なんでなん!?意味わからへん!?」


「なんでこの話の流れで結婚なんスか!?」


「そそ、そもそも初対面やんな?!」


「で、でも姐さん外見だけなら金髪美女だし!」


「はっはっは落ち着き給えlittle cats」


なぜかアランはこの状況で一番落ち着き払っていた。

当の天音はというと


「……」


「気絶してるっすーーー!?」


どうやら脳みそがキャパオーバーしたらしい。

座ったまま魂が抜けていた。

俺は必死にアマネを叩き起こそうと顔をペシペシと叩くが、アランはそんなアマネを抱き上げる。


俺ごと。


「はっはははは!!俺のミステリアスなムーブに翻弄されているなlittlecats…というわけでマイハニーは頂いてくぞ!!」


高らかにそう言ってアランは窓を開けてアマネを姫抱きにしたまま飛び立った。


「ま、まずいっす!!」


慌ててヒートが窓から身を乗りだす。地面を爆破をして動きを止めるつもりなのだろう。


しかし、なぜかヒートは魔法を発動しなかった



「き、消えたっす!?!?」


明らかに視界の中の範囲にいるにも関わらず、ヒートはそんな事を叫ぶ。


「ひわわわわわわど、どないしよヒートくんひわわわ」


「落ち着くっすチルハ君!!と、とりあえず探さないと!ねえええさあああん!!」


明らかに不安が残る二人の声を尻目に気絶したアマネを抱いてアランは駆けていく。

意外と筋力があるようで、細身の女+俺を抱えても普通の人よりはるかに速い速度で走っている。


「…抵抗しないのか、stone cat」


ストーンキャットって何!?俺の事!?


「主人が危険な目に合っているのだぞ?」


まぁこの状況がまずいのかまずくないのか正直判断がつかない。


いや、わけはわからないが。

ただ、俺は正直、実力がトップクラスだという人間を仲間に入れるチャンスを見過ごすのは勿体ないと感じていた。

仮に天音が危ない目にあっても、倒せばいいだけだ。俺はこの男の真意を先に知りたい。


それとも本気でアマネに結婚を申し込んでいるのだろうか。


え、まじで?


「ふむ、主の意思が無くても動くとはトレビアンな魔法だな。」


頭を抱えて悩んでいると、そんな言葉が上から降りかかってきた。


…魔法?


あぁ、天音は建前上、ゴーレムを操る魔法ってことにしてるのか。あれ?



じゃあ、天音本来の魔法はなんだ?



俺は天音に出会う前からゴーレムで、恐らく天音のそばにいなくても体のサイズを変えることができる。これはまぎれもなく俺の魔法だ。


それなら、天音は一体何の魔法を持っている?


…いや、目立ちたがりな天音が自分の魔法を見せびらかさないわけがない。もしかして、そもそも魔法を持っていないのか?


「…っは!?何!何!?」


俺の思考が状況の打破よりも天音の魔法に流れていったとき、突如天音の目がかっぴらいた。


「ふ、お目覚めかマイハニー?」


天音とアランの目があったことにより、気絶する前の記憶を思い出したらしい。


「わーーーーーー!?なんだこの状況!?」


大声と同時に、抱えられているにも関わらずじたばたと大暴れを始めた。


「ちょ、暴れるとゲフっ」


「あ、わり」


アランの顎に見事足がクリーンヒットして、俺達はアランを下敷きにして倒れこんだ。


「何なんでコイツと俺一緒にいんの!?ゴースケは!?チルハ!?ヒート!?ゴースケ!?」


ゴースケならいるぞ。お前の尻の下に


「ゴースケ~!!お前がいるなら安心だ~!!」


俺の存在に気づいたアマネはぶんぶんと俺を振り回して抱きしめた。

少し汗で冷たく、やたら張りのある胸が押し当てられ、わけもわからず頭がくらくらした。


「とんだ暴れキャットだぜ…」


「暴れキャットって何?俺のこと?!暴れ馬的な?」


窓に衝突して墜落しても、人間一人抱えて走って挙句の果て蹴り飛ばされても、この調子なのはかなりタフな証拠かもしれない。

アランはやたらかっこつけたポーズでこちらを向いていた。


「今の状況を教えてあげようマイハニー俺はあの後」


「え!ヒートとチルハから俺を盗んできたってこと!?」


「う~ん理解力が素晴らしいな。さすがマイハニー」


「返してやれよ~あいつら俺がいないと寂しくて死んじゃうんだぞ」


随分と自惚れたことを言うな。ウサギさんじゃないんだぞ。どっちかっていうと犬だろ。


「盗んだものをリリースしたらそれはトレビアンではないだろう?盗んだものは愛でてこそさ」


「愛でる…?あ、そういえば俺結婚申し込まれてたんだった!!!!」


「トレビアンなメモリアルを思い出してくれたかマイハニー…」


メモリアルという程厚くないだろ。今日会ったんだし。


「け、結婚って、本気で言ってんの?」


天音は笑ってはいるが、意外にも照れ臭そうに目をそらしながら言った。

こんな表情初めて見た。


「そうだ。」


唯一アランの表情を伺える口元は真剣だった。


「この退廃的とも言える土壌で、お前はささやかながらも凛と草をのばし華やかに咲いていた。それがとてつもなく美しく見惚れてしまったのだ…」


気障すぎて何を言っているか全くわからない。そしてあくまでも天音の中身は男だ。そんな言葉で靡くわけ…


「ふふ、聞いたかぁ?ゴースケ。」


同じくわかっていないだろうに、天音はドヤ顔にドヤ顔を重ねた顔で俺を見ていた。


「この世界の人間は見る目があるな!俺、やたら好かれる自信があるぞ!」


いや、3人以外の全員から目の敵にされてるぞ。


それでも天音は勝ち誇った顔でアランの口説き文句を聞き入れていた。


正直、わけわからないとか言って一蹴するに決まっていると思っていたためこの反応はかなり意外だ。


なぜか、生前、飼い犬が俺よりも近所のお姉さんに尻尾を振っていたりだとか、近所の面倒見ていた女の子が天音に惚れた時の事を思い出した。


存外、満更でもなさそうな天音の態度に俺は戸惑っているのだ。


数分前に抱いた天音の魔法についての疑問なんてとっくに吹き飛ぶほどに。

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