二日酔いって辛い
窓からこぼれてきた光が温かく心地いい。
が、頭が痛い。そして体がだるい。これはあれだ、二日酔いだ。つらいな。変な汗が止まんない。
ウイスキーの飲みすぎだな。指一本も動かないし動かしたくない。やばい。助けてくれぇ。
その時だ、天からの助けは。ドアが四回ノックされた。
「おーい、起きてるかー。そろそろ買い物に出る時間だぞ」
「た、たすけてくれー、ドアはあいてる」
か細い声しか出なかったがハリーはわかってくれたようだ。流石ハリー兄貴だぜ。部屋に入ってきたハリーはこいつやらかしたなという顔をしている。
「おう、サリーやっぱりか。いつもの時間に起きてこないから心配してきてやったぞ。ほら水飲め」
「おお、ありがとう。……いやダメっすね、飲めないすわ。キツイ」
「そうか、そんじゃ今日はだめだな。俺らだけで行ってくるわ」
「いや、行く。あれだけはないとこれからの三か月嫌な思いする。あれは俺じゃないと売ってくれないから、行く」
「そうか、じゃあ早く準備してくれな、食堂でエピとプロも待ってるぜ」
それだけ言い残してハリーは部屋から出て行った。水を枕元に置いて行ってくれていることが確認できた。
実際は怠いだけで動かないことは無いからゆっくり起きてみた。それだけで嫌な汗が出るがシャワーを浴びると倒れそうなぐらい気持ちが悪い。水はぬるいぐらいで丁度良く、勢いよくのどを通っていくのを感じる。バックパックから着替えを取り出し、汗で気持ち悪い服から着替えた。
部屋から出て食堂に向かうとエピはすごい勢いで飯を食い、プロは本を読みながら紅茶を飲んでいた。
「おう、おはようお前ら、朝から元気だな」
「おー、おはようサリー」
食べる手を止めないエピ。
「おはようございます、サリー、調子はどうですか。宜しければ解毒薬お飲みになりますか、まぁ二日酔いに聞くかどうかはわかりませんが」
カップをソーサーに戻して本に栞を挟むプロ。解毒薬はもらっておこう。
「ああ、おはようエピ、プロ。遅くなってごめんな。ハリーはどこ行ったの」
そういいながら俺はプロとエピの向かいの席に座った。今は机に突っ伏すことで体力を温存しているのだ。
「ハリーならコール達の手入れをしに馬小屋に行きましたよ、どうやらサリーさんが起きてくるのがもう少しかかると思ったようです」
「ハリーにはほんと申しわけないことしたな。あとで謝んなくちゃな」
そのまま意識を失いかけていたところ、奴は現れた。
「おうサリー起きたのか、早かったな。ほら突っ伏してないで早く行くぞ。エピも飯食い終わってるぞ」
後ろから突然現れたハリーに脇を抱えられた。マジでいたい。辛い。
「わかったよ行くから放してくれ。行くよ、行くからさ、いや、マジで行くから、うん、ただ、頭痛いだけなんだ」
心臓の鼓動が早くなっていくことにしか注意がいかない。
「わかった。行くって言ったのはサリーなんだからちゃんと歩けよな、頼むぜ」
辛いが、そう言われると頑張るしかない。仕方ない、あれがなきゃ俺は迷宮になんか行きたくないしな。仕方ない。いや仕方ないから行くしかないんだ。行こう。