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あの日 - どうして私なの?  作者: 腹刺音
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女子高生地下鉄駅構内刺殺事件

1989年(平成元年)7月25日に札幌市西区琴似の地下鉄琴似駅構内のトイレで札幌山の手高校2年生の女子生徒、菅原瑤子さんが通り魔に刺され死亡した事件を題材にしています。

夏休みに入ったばかりの7月25日、高校2年の菅原瑤子は補習授業を受けるために学校に登校していた。


クラブ活動のバンドの練習をスタジオでするために、お昼前に友達2人と学校を出た。琴似駅につくと駅ビルのレコード屋に立ち寄った。


トイレに行きたくなった瑤子は駅構内のトイレに向かった。


トイレには短大生と他行の女子高生の二人がいた。瑤子が用を足して、鏡の前で髪を整えていた時だった。


女子トイレの入り口から男が一人入ってきた。


男は肩から掛けたカバンのファスナーを開けた。


瑤子たちは短大生らと顔を見合わせた。


男はカバンから何かを握るように取り出した。


トイレの蛍光灯に照らされたそれは鈍い光に反射していた。


ナイフ・・・?


男はその切っ先を手前に立っていた瑤子に向けると、無言で右手を腹に突き出してきた。


うぐぅっぅ・・・


喉の奥から自然に声が漏れた。


瑤子は何が自分に起きたのかわからなかった。男が目の前に立っている。脇腹が痛い。


瑤子は脇腹に右手を添えようとしたが、男の手が邪魔だった。


瑤子が脇腹に視線を落とすと、男の右手に握られたナイフが夏服のセーラー服に刺さっていた。血でべっとり染まったナイフがヌルヌルと抜かれていった。


瑤子はすぐに脇腹を右手で押さえた。掌にべっとりと生暖かいものが広がった。


血・・・


制服が濡れてしみ込んでいくのがわかった。


きゃぁぁあぁ


短大生らは悲鳴をあげながら、トイレから出ていった。


取り残された瑤子は壁に追いやれると、男は右手を後ろに大きく振り、そのまま握ったナイフを腹に突き刺してきた。


男がナイフを抜くと、瑤子は両手で刺された腹を抑えながら、トイレを出た。


駅と連結しているレコードに戻ろうとした。


階段の手すりを左手で掴んだ。左手に付いた血が手すりに伸びた。


フラフラする足取りで両手で腹を押さえる瑤子。腹からは血が止まることなく流れ出てくる。スカートにそして、瑤子の足取りを記録するように通路にも血がポタポタと垂れている。


通行人は女子高生が腹痛でも起こしたのかと思って、ちらっと視線をやって、通り過ぎるだけだった。


助けて・・・私、刺されたの・・・


瑤子はかすれるよう声をあげるが、それを聞き取る者はいなかった。


やっと友人が待つレコード店が見えてきた。すでにセーラー服は腹部を中心に血で真っ赤に染まっていた。腹から流れ出た血は太ももをつたって、靴下をも赤く染めて、靴の中も血でビチャビチャだった。


瑤子!どうしたの?


友人が変わり果てて戻ってきた瑤子に気が付いた。


「ねぇ、どうしたの?」


さ、刺された、刺された、知らない人・・・


瑤子は友人の声を聞いて気が抜けたのか、その場にしゃがみ込み、そしてうつ伏せに倒れた。顔面は蒼白だった。


血が通路に広がっていった。


助けて・・・お腹・・・痛い・・・


救急車が到着すると、救急隊は瑤子の制服をまくり上げた。腹が三日月形に裂けていた。傷口から腸がはみ出しているようだった。


救急隊員は慣れたような手つきで、腹からはみ出した腸をサランラップのようなもので覆い、ストレッチャーに乗せていった。


瑤子は近くの病院に搬送されたが、すぐに市立札幌病院に転送された。重体の状態が続いた。友達からの輸血も受けた。45,000ccもの輸血が行われた。手術も3回に及んだという。瑤子の容態は安定し始め、意識もしっかりするようになっていたが、8月12日、再び傷から出血が始まり、そのまま14日の午前10時15分、瑤子は16歳という若さでこの世を去った。

菅原瑤子さんを刺した犯人は逃走した。まもなくして駅周辺に似顔絵付きの看板が設置された。その後犯人は逮捕されるも、精神分裂病(現在の統合失調症)であったため罪に問うことができなかったという。

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