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あの日 - どうして私なの?  作者: 腹刺音
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この日に限って・・・

平成22年(2010年)6月愛知県一宮市で起きた女子高生通り魔刺傷事件をモチーフに作成しました。被害者側の視点で事件発生までをドキュメント風にまとめました。

この日、私は学校を終えると、そのまま予備校に向かい、夜8時ごろ駅から自宅に向かって歩いていました。


いつもは自転車を使っているのですが、この日、自転車のカギをなくてしまい、仕方なく徒歩で帰ることになったのです。


一宮駅で多くの人が改札を抜けていきましたが、私が歩くことにある稲荷公園方面はあまり人がいませんでした。前に歩いていたサラリーマンやOLの人もひとり、ふたりといなくなっていきました。気が付くと、私は一人で歩いていました。こんなところで痴漢にあったり、知らない男の人が出てきて刺されたりしたら大変なことになりますが、それが実際に起こるかどうかを自分に置き換えて考えたことは正直ありませんでした。


公園に近づくとなんとなく誰かにつけられているような気がしました。周りに時々、周りに目をやりましたが、誰もいません。


公園の入り口を通り過ぎました。歩きながら誰かいないか見ましたが、人影はありませんでした。


気にしすぎかなと思って歩いていました。


周りのことがだんだん気にならなくなってきた時のことでした。


後ろに誰かいるような気がしました。速足というか小走りで、ササササッと私の背後に近寄ってくる感じです。


(えっ、何?)


振り返ろとした時に男の人が私を通り抜けていきました。


びっくりしたのか、嫌な予感がしたのか、心臓がバクバクして、思わず立ち止まってしまいました。


通り抜けていった男の人が振り返ってきて、そのまま私にぶつかってきたのです。


瞬間的な出来事でした。反射的にきゃぁぁと悲鳴をあげたと思います。


ブスッという鈍い音、そして激しい痛みがお腹から全身に駆け巡りました。


耳元で男の人の息遣いを感じました。


横目で男の人を見ました。目つきや表情はこの世の人のようではありませんでした。とにかく怖くて、殺されると思いました。


肩にかかっていたスクールカバンが腕にずり落ちそして地面に落ちました。


私は男の人の腕をつかんでいました。男の人は手に握ったものを胸に突き刺してきました。


暗くて、何が何だかわかりません。


私は右手でお腹を押さえました。じわっと手のひらに生暖かいものが広がりました。


制服の生地がお腹にまとわりついてきました。


胸からも暖かい液が流れ出ていました。


手のひらから腕を伝って、その液が流れ落ちていきました。


私はふらふらする足取りでお腹を押さえながら、逃げようとしました。


男の人は私の後から歩いてきて、背中を突き刺しました。続けて、肩と腕の間に激痛が走りました。


その人は走って逃げていきました。時々私を振り返ってきます。


私は公園の中に逃げ込みました。というより、ふらふらしていて、たまたま公園の入り口があって、入ったのかもしれません。薄暗い電灯に照らされていました。白いセーラー服が赤くなっていました。


そしてようやく、自分が刺されたのだとわかったのです。


かすれるような声で「誰か、助けて・・・」と声を出しました。


公園の入り口に戻り、もう一度「助けてください・・・」と声を上げました。


誰も来ないような気がして、私はその場に倒れました。


でもなんとか意識を保とうとして、うつぶせになりながらも、家に帰ろうとしました。ドクドクと血が噴き出しているのがわかります。制服は刺し傷で穴があき、そしてほとんどが血で染まっていたと思います。


しばらくして、ジョギング中の男の人が近寄ってきました。


「おい、大丈夫か?」


私が答える前に、その人は救急車を呼んでくれたようでした。


遠くから救急車のサイレンの音が聞こえます。


救急隊員は私を仰向けにしてストレッチャーに乗せました。


「誰にやられたかわかりますか?」


「知らない・・・・男の人でした。いきなり刺されました・・・」


私は胸や背中、首など複数カ所を刺されたようでした。刺し傷の一部は胸から肺に達していたようです。

犯人は未だ逃走中です。


愛知県警は情報提供を呼び掛けています。

https://www.pref.aichi.jp/police/anzen/sousa/kobetsu/ichinomiya/index-201006.html

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