第質話 術合戦
勝也は卍と✕を足したマークが描かれた白いマントを着ており赤黒い上下のスーツを着ていた。
そして勝也の両手にはソウベエとクロルがいた。
「ソウベエ……クロル……!!」
「サワツネを待っていてくれ。修介」
勝也は空中を浮遊しながら西に移動している。
「まだ間に合う! "精功"を使って追いかける!」
「…………分かった。…………無茶するなよ」
落ち着け………………………………………………………………。
足に精を集中させる。
そのまま足を動かす。
足がいつもより軽い!
俺はそのまま走り出した。
勝也との距離は目測大体五十メートル。
周りは飛んでいる勝也に注目している。
俺は地面に落ちていた十数センチの石を拾う。重さは悪くない。足にさらに精を集中させる。足がさらに軽くなった! そのまま右腕に精を集中させる。精を集中させた足を速く動かし加速し右腕に石を持って思いっきり勝也に投げつけた!
勝也の背中に石は直撃!
勝也は地面にすれすれの低空飛行になった。
チャンス!
全力で足に精を集中させる。
思いっきり勝也に向かって走る。
そしてそのスピードのまま勝也の背中にタックルをした!
柔らかい勝也の背中を右肩に感じる。
ソウベエとクロルは歩道に投げ出された。
「ハァーーーッハァーーーッハァーーーッハァーーーッハァーーーッ」
「ト〜〜〜ト〜〜〜この俺にタックルをかますとはやるな〜〜〜」
「⁉ 勝也? ……か?」
勝也は大人しい性格だ。こんな話し方は決してしない。
だが勝也だった。まごうことなき勝也だった。
しかし、丸眼鏡の奥の目は赤緑っぽくなっており人間のような気がしない。
まさか。
「ト〜〜〜ト〜〜〜。お前。それは確か"精功"だろぅ〜〜〜。こっちに来てから誰かに教わったのか〜〜〜? んんん〜〜〜?」
"精功"を知っているだと。
「":jcjwjxxmjccj";iykn!!!」
周りの魔物の一人が何やら叫んだ。
「さ〜〜〜せるっか〜〜〜」
勝也は右手を上げる。
"グラル"!
「⁉」
勝也の右手から出た五十センチぐらいの岩が叫んだ魔物に命中した。
「⁉」
周りは悲鳴に包まれ正に阿鼻叫喚とした状況になった。
「…………魔法⁉」
勝也に頭を踏まれる。
「そ〜〜〜だよ〜〜〜。魔法だよ〜〜〜! そしてお前もああなるんだよ〜〜〜!」
"グラ――――"
"ウンブラ・ルガド"!
勝也に大量の影のレーザーが直撃した。
「アブァッアッハァァァァァァァ!!!」
勝也は吹き飛び電灯にぶつかった。
振り向くと、攻撃の主はクロルだった。
サングラスにヒビが入っている。
「クロル!」
「から……だ……が。痺れる」
どうやら今の攻撃は蛇の髪から出したらしい。
「お〜〜〜ま〜〜〜え〜〜〜ぇぇぇ!」
両腕を膝より下にし、物凄い猫背にしながら襲いかかってきた。
「⁉」
疲れで全く体が動かない。
"ゼルク"!!!
ソウベエが物凄い速度で走ってきて勝也の左頬に右ストレートをきめた!
「アブァッアッハァァァァァァァンンン!!!」
勝也は吹き飛び、また電灯にぶつかった。
「ぐ……毒…………で」
ソウベエはペタンと地面に座ってしまった。
毒⁉
「間に合ったようだな。」
「サワツネ!」
【二人乗りチルミサー】に乗った修介もいる。
修介は叫んだ。
「トト! 【陽養飴】をクロルとソウベエに! そしてお前も食え!」
【陽養飴】。確かポケットに。
だが身体が全く動かない。
「精が切れたな。手伝ってあげよう」
振り向くと、【甘兎】の時の黒スーツ男がいた。
黒スーツ男は俺のポケットに手をいれた。
「"精功"は特訓次第で誰でも出来るが、不十分な"精功"は自らの命を蝕む。……ほら食え」
【陽養飴】だった。
口にいれる。
滑らかな甘さの中に何か強い甘みを感じる。
ただの飴とは思えない。身体の隅々から隅々までに甘さが伝わってくる。
ただ生きているという事実が伝わる。
「陽養飴は"精"を満タンに回復させる効力がある。あの二人には僕が渡そう」
「オラオラオラオラオラオラァァァッ!!!」
【二人乗りチルミサー】に乗った修介が物凄いスピードで勝也に体当たりした。
「ガッッッパアァァァァァァ!!!」
勝也は十数メートル吹き飛んだ。
そのうちに黒スーツ男は動けないクロルとソウベエに【陽養飴】を与えていた。
「こにゅよ、ちッしょおッがあああああああ!!!」
勝也は修介に轢かれて丸眼鏡が割れ歯が数本折れていた。
勝也は両手を上げ何やら叫ぶ。
「ュギョギュルフォア」
勝也の両手の上に宙に浮いた巨大な襖が現れた。
「舐瓜様!」
襖が開く。
"トルスガ"!!!
"ウブラガ"!!!
クロルとソウベエが復活。
ソウベエは右手に左手を添え術を放った。
ほぼ同時に放たれた雷と影は襖の中で何かに直撃し爆発した。
「パプアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」
襖の中から身長百七十センチぐらい、がたいは普通の全身白タイツ男が出てきた。
「パプアアアアアアアアアアアア!!! パプアアアアッッ!!! パプアッッ!!! パプアア!!! パプア! パプアッ! ………………………………パプア………………………………パプア………………パプァ……………………パプァ」
落ちついたのかこっちを見て叫んだ。
「コラアアアアァァァァ!!! 名乗らせるのがルールだろぅぅぅぅがアアアアァァァァ!!!」
「もういい! 早くそいつを始末しろ!」
サワツネが珍しく叫んだ。
サワツネの手には日本刀が二本あった。
奴は右足を前に出し、左足の太ももを右足の太ももに当て足を交差させ右手を右腰に当て左手を白タイツに薄っすら見える口に咥えて言った。
「でぇ〜〜きる〜〜かな〜〜?」
"トルス・ルナ"!!
"ウブラ・ステラ"!!
"トルス・スクロム"!!
"ウブラ・ルナ"!!
"トルスガ"!!
"ウブラガ"!!
"トルス・ドラコー"!!
奴に雷と影の連続攻撃が完璧過ぎる程にヒットした。
だが。
「パプパプパプパプパプパプパプパプパプパプパプパプアパプアパプアパプアパプアパプアパプアパプアパプアパプアパプアパプアパプアパプアパプ……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………パプアアアアアアアアアアアアアア!!!」
その煙の中から足を広げ物凄い内股をしたまま右手を上にし左手を下にしたポーズをとった奴がいた。
「次はオーレの攻撃だ」
白タイツは額に両指の人差し指を添える。
"ベルム"!
額から白い一本の光線が出た。
"シュガド・フラマ"!!!
複数の炎が壁を造った。
「"サラマンダー"かぁぁぁぁ? おいぅ! グルクルス! オーマエも手伝えぇ!」
グルクルスと呼ばれた勝也はどうやら気を失っている。
『奴らを包囲しろおおぉぉ!!!』
黒いが描かれた赤いマント。
それに赤くて薄い西洋甲冑を着た集団が三十人程現れた。
「どンンン! チクショウウゥゥゥ!!」
額に両人差し指を添える。
"ベルムガ"!
光線を地面に命中させる。
爆発と砂煙が混ざりあい視界を遮った。
「だああっがああ、しっかし! すぐに降臨なっさあぁる!」
襖から黒い着物を着た集団が現れた。
ニ十五才ぐらいで女もいる。
がよく見ると、吸血鬼のような牙が生えている。
その集団は襖の前に道をつくるように土下座をした。
誰か来るのか?
襖から卍と✕を足した白いマークが所々に描かれた黒いスーツを着ている黒髪に白い肌の女が現れた。