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とある事情の  作者: 海月
8/19

数年後

長い間更新できませんでした。本当に申し訳ないです(汗)

 いきなりすぎる結婚からもう4年がたった。彼とはお互い大学4年生になった。

私は大学は内部進学のつもりだったが,途中から外部進学に切り替え,彼と同じ国立大学に通っている。


…というのも,思いの他,特進科の生徒の私に対する風当たりが強かったのだ。特進科の女子生徒のほとんどは男に頼らず自分の手で自活することを目標としているので,優良物件と結婚板私に対するまなざしは,とても冷ややかなものだった。卒業まで居心地の悪い思いをした。これは大きな誤算だった。

成績1位はキープしていたので,受験勉強はそこまで大変でなかったからまあ良しとしよう。

 

 大学では結婚のことは隠して,婚約者で通している。幸い,久我の名にしり込みしているのか,直接的に何かされたことはない。すれ違いざま睨まれたことは数回あるが。

彼の方は,事実として結婚しているので,周囲が結婚相手を進めてくることがなくなり,平穏な日々を送っているようだ。…そりゃよかった。



 彼に対する第一印象はあまり良いものでなかったが,初めの日に餌付けに成功してからは割と良好な関係を築いている。

 実は,お互いお堅い文学作品からラノベまで読むような本好きであったので,とても馬が合ったのだ。私がリビングに置いていた,マイナーな作者の単行本を,彼が目にしてから一気に意気投合したのだ。

軽く1時間ぐらい語り合ってしまい,学校に遅れかけたのはいい思い出だ。

 

 冷たくとっつきにくい彼の雰囲気が私の料理を食べるとき,本について語るときだけ和らぐのは,私だけの秘密だ。

 

 彼は,さすが金持ちなだけあって,実家に小さい図書館が作れるのでないかと思うぐらいの本を持っていた。数万円するような学術書や絶版本まであり,私は彼の実家に通い詰めることになった。

…おかげで彼の両親とは良好な関係を築けている。特に彼の義理のお母さんにはとても可愛がってもらっている。休みの日にはたまに2人で買い物に行ったりもしている。

 

 そうして過ごすうちに,気づいてしまった。彼のお義母さんを見つめる目がとても優しいということに。私がお義母さんと出かけたという報告をする度に,せつなそうに目元を緩めることに。


 彼はおそらく,いやたぶん事実,お義母さんを慕っているのだろう。母としてではなく,1人の女性として。


 彼のお義母さん,佳乃さんは彼が幼いころからの知り合いで,彼のお父さんより彼に年齢が近いそうだ。彼が小学生のころには勉強も見てあげたという。本人は彼のことを息子というよりは弟のように思っているらしい。


彼のお義母さんが彼のお父さん,久我社長に溺愛されているのは,はたから見ても明らかで,とても幸せそうな様子だ。彼はそれを間近で見るのに耐えられなかったのだろう。

大学も,久我の跡取りは決まったところに行かなければならないらしい。理由もないのに家を出たら不審がられる。彼にしても苦肉の策だったのだろう。


 私はこの事実を知った時,自分の胸の痛みに気づかないふりをした。


気づいたところでどうにもならない,お互いに好きな人ができるまでの契約だ。彼が少し気を許しているからといって,私は己惚れるほど馬鹿ではない。もう少し,大学を卒業したら,私は一般企業に就職していつ離婚を切り出されてもよいように備えよう。誰にも頼らないで生きていけるように。


 




 

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