餌付けできたようです!
すみません,ちょいちょい話をいじっています。
彼は,作ったこちらが気持ち良いくらいの食べっぷりを披露してくれた。いつも1人で食べているので,2人の食卓はなんだか新鮮だった。
「美味かった,ごちそうさま。」律儀に言ってくれた。
私が皿を下げだすと,彼が皿洗いを申し出てくれたので,丁重にお断りする。いつも家でやっていたので,と答えると。「規格外のお嬢様だな。」と言われた。
彼の雰囲気が柔らかくなったので,思い切って提案してみる。
「朝夕の食事は私が作りましょうか?昼は学食があるからいいでしょうけど,外食ばかりすると体を壊します。おうちでは,シェフが作っていたのでしょう?私の料理はそのレベルには程遠いと思いますが,1人分作ると材料が半端に余るので,食べてくれると助かります。」
私のセリフに対してシェフあたりのところで彼は眉をひそめた。あれ,何か気に障るようなことを言ってしまっただろうか。
しかし,彼は,
「正直そうしてもらえると助かる。だが,帰りが遅くなることも多い。料理を無駄にしてしまいそうだから,食べられそうな日だけメールを入れる。朝は毎日お願いしたい。食費はそれ用の
クレジットを作るから、それでやりくりしてほしい。」と好意的な返事をくれた。
「わかりました。」
「それから,君は俺のことを久我さんと呼んでいるだろう。君もその苗字になったんだから紛らわしいだろう。下の名前で呼んで構わない。」
いきなり名前呼びとかハードルが高くないでしょうか。本物の新婚さんみたいでいたたまれない。あ,一応本物の新婚さんか。
「咲弥子?」なんだか照れる。
「では,誠也さんで…。」
「ああ,それで構わない。」
車の中では冷たい人だと思ったのに,どうやら胃袋をつかんでしまったらしい。まあ,関係は良好であるに越してことはないか。