いきなり
更新に時間がかかってしまい,申し訳ないです。
確かに,私はこの形だけの結婚を受け入れた。しかし,この展開はいくらなんでも早すぎるだろう。
私が結婚を受けれると告げた後。
「それでは,双方合意したといことでいいな?」と問われて,頷くやいなや,父親たちの待つ部屋まで,半ば引きずられるように戻った。おい,私は振袖なんだからそんなに速く歩ける訳ないだろう。
その様子を見て,久我社長は破顔して言った。
「おめでとう,話はまとまったんだね。私もこんな素敵な娘ができるなんて嬉しいよ。今度,私の妻にもぜひ会ってもらいたい,すぐに打ち解けられるだろう。」と。
私はこれを聞いて少なからず安心した。どうも,久我社長はいい人のようだ。
一方,私の父は笑顔を浮かべていたが,私に微笑みかけてくれるような事はなかった。少なからず安堵しているように見えたのは,きっと私を予定通り追い出せることに対してだろう。実の娘の結婚が決まったというのに,その当人に対して一言もないんだなと,他人事のように考えながらも,胸の奥がチクリと痛んだ。
そんな風につらつら考えていると,ボールペンはを渡された。ん?
「もう婚姻届けは本人の署名だけになっているからね,ここにサインして。」と,久我社長。
・・・用意周到すぎやしないか。
さっさと名前を書くと,どこからか現れた秘書のような人がその婚姻届をさらっていった。今からすぐに役所に届けるんだそうだ。秘書まで美形だな。
何ら感慨のない人生の大イベントだった。普通,もっとドキドキするもんだろう。
そして,重ねて久我社長は言った。
「もう,新居は用意してるからね。生活に必要なものはたいてい揃っていると思うから,実家にある荷物は後日取りに行けばいいよ。すぐに新居まで専属運転手に送らせるから。」と。
いやいや,婚姻届け書かされたと思ったら,すぐに同居?!
正直,「急展開すぎるわ!」と,突っ込まなかった自分を褒めてほしい。