はい?
でも…
「じゃあ、あなたと腕を組んで歩いていた継母の妹は?」
彼の膝の間に座りながら聞いてみる。これがすべての発端なのだ。ちなみに、彼の膝の間に居るのは断じて私の意志ではない。
彼はため息をつく、
「ああ、まさか撮られていたとは、迂闊だった。あそこには叔母と一緒に行っていたんだが、いきなり腕に絡みつかれたんだ。相手もそこそこの資産家だし、目的がわからなかったんで、やんわりと相手をたしなめることしか出来なかったんだ。」
ふーん
「私とは手をつないだことさえなかったのに。」ついつい恨み事が漏れる。
「なんだ、手をつなぎたかったのか?もっとすごいこともしてるのに。」彼が意地悪気にニヤリと笑った。
「拗ねるなよ。これからは、いくらでもしてやるよ。」軽いリップ音を立てて唇が離れる。私は真っ赤になりながら口をパクパクさせて反論を試みるが、甘い微笑みに何も言えなくなる。思いを交わしてから、「この人は誰ですか」というレベルで彼が甘い。今も膝の間で抱き締められているし、私の心臓が持たない。前からスキンシップは多いような気はしていたが、こんなにあからさまではなかった!
…というか、
「大事なことを話そうとしていたんだから、ちょっと離れて。」
「嫌だ。このままでも話すのに問題はないだろ?」おおいにある。
「継母のことなの。」彼が少し離れてくれる。まあこれでいいか。
「継母は、どうしてあなたと自分の妹の中を誤解させようとしたのか疑問なの。そんなことをしても彼女にメリットは無いでしょう?あなたがあの子と結婚する気がないのなら、ウチとの関係が切れてしまうことになるだろうし。私への嫌がらせにしてももう何年も会っていなかったのに唐突すぎない??」
あの時は頭に血が上って、そこまで考えられなかったけど、よくよく考えてみればおかしな話だ。
彼は口を開きかけて沈黙した。そして、向かい合うように座りなおす。彼の曇りのない瞳が私を射貫くように見つめる。
「どうしたの?」先ほどまでとは打って変わって深刻な表情の彼に緊張が走る。
「こんな話は咲弥子に聞かせたくない。でも、知る権利があるだろう。」
ゴクリ
私も真剣な表情になって彼の話を聞く。彼は、継母の何を知っているのだろう。私に聞かせたくない話って??
「お前の継母は、お前の命を狙っていたんだ。」
「…」
はい?