暴走
12話の続きです。
「誠也さん…?どうしてここが??」
「そんな事どうでもいい。」彼は,明らかに激昂している。腕をつかまれて,体を玄関の扉に押し付けられた。いわゆる壁ドンだ,初めてされた。
いや,感動している場合ではない。
「あの男はお前の何なんだ?」その問いにハテナが浮かぶ。
「あの男って??」彼は一体どうしたのだろう。
「ここにお前を連れて来た男だ。」
「辻さんのこと?あの人は,私が春からお世話になる会社の上司で…。」途中出さえぎられる。
「知っている。お前にとってどういう存在かを
聞いている!!」詰め寄られ,まるで恋人の浮気を問い詰めるかのような状況に,勘違いしそうになる。
そんな自分が浅ましくて,思わず顔を逸らした。
「やっぱりそうか!!!」彼が歯をギリッと食いしばる。そして同時に,突然の浮遊感に襲われる。女子の憧れである,いわゆるお姫様抱っこというやつだが,突然されれば恐怖しかない。
「ちょっと,怖い!おろして!」そう訴えてみるが,彼はにべもない。
「黙ってろ,舌を噛みたいのか。」
そう言って,買って間もないベッドまで連れていかれた。そして,彼のネクタイで猿轡をされる。
彼がまとう雰囲気が怖い。いつもの彼はどこへ行ってしまったのだろう。
というか,そもそもなぜ彼がこんなにも怒っているのだろう。私は,彼の邪魔にならないように彼の前から消えたのだ。感謝されるならともかく,こんな仕打ちを受ける筋合いは全くないはずだ。若干腹が立ってきた。そういう思いを込めて彼を睨んでみる。
「抵抗しても無駄だ。お前は私のものになるんだ。なあ,咲弥子」私の手を頭上でひとまとめにしながら,彼は微笑んでいた。
その微笑みに背筋がぞわっとする。肉食獣を前にしたかのように,本能的に危険を悟る。
彼が,パジャマのボタンに手をかける。「やめて!」と,言おうとしても猿轡のせいでくぐもった音しか出せない。そうするうちに,上のボタンがすべて取り外される。
「綺麗な肌だ…。これをあの男にも触らせたのか?」彼は,恍惚とした表情の後で,突然無表情になって聞いた。必死で首を振る。
「それならいい,真実かどうかはすぐ分かるしな。」
首筋に唇を寄せられる。嫌悪感はないが,豹変した彼が怖くて自然と体がこわ張る。
彼がそれを感じて,唇を噛み,私の首筋に吸血鬼のようにかみついた。たぶんくっきり歯型がついているだろう強さで。痛みは恐怖と直結する。
「俺から逃げるのは許さない。」そう言って,衣服を全て取り払われる。彼自身も服を脱ぎ捨てながら,苦しそうな顔で告げる,
「もう泣いても暴れても止めない。」と。
―――それからのことはあまり覚えていない。いや,正確には必死に忘れようとした。あの日,涙を流しながら必死に抵抗したが,彼は一切の手加減もせず,私を貫いた。当然のことながら,そういう行為が初めてだった私は恐怖と痛みによって気絶した。
あの痛みと熱だけは鮮明に覚えている。
R15ってどこまでいいんでしょう?