ルシュウ再会する2
同じ頃、邸宅の中では、領主チムガは報告に来た兵士を殴りつけていた。
「この役立たずが」
「はっ、ただ今、探索中であります故、」
兵士の言葉が途切れた。
「たわけがっ。またしても侵入を許しおって」
チムガはそう怒鳴りざまに剣を抜き、目の前の兵士の首を落とした。首が床に転がるという残忍な光景を前に、他の兵士たちは身震いをした。
「片づけよ」
チムガは冷静な声で死体を指さした。演技ではない。捕らえた少女を餌にして、前回侵入した盗賊を捕らえる。そういうつもりであったが、もくろみが潰れた。
「まあ、よいわ」
チムガは側近の者を手招きで呼び、言葉を継いだ。
「予定通り、明日の夜やれ」
そして、念を押した。
「一人も逃すなよ」
この時、声が響いた。
「チムガ様」
あのガルムとかいう辺境者につけておいた執政官のグーロンである。どうやら先ほどからそこにいて、チムガの怒りが治まるのを待っていたらしい。利口な方法だった。
「なんだ?」
「あの別邸の男のことでございます」
「ああ、金でもせびりおったか」
「いえ、この騒ぎに刺激されて、何やら落ちつかぬ様子。どうしたものかと、伺いに参りました」
「何か不信を抱いておるのか?」
「いえ。何故、自分を囚人の狩出しに使わぬのかとあがいております」
「ふんっ。あがく者ほど、わき目も振らずに走るものだ。適当にあしろうておけ」
「視察司の様子はいかが?」
「三日後に到着する。粗相が無いようで迎えよと、先触れの使者が告げて帰りおったわ」
「出迎えはいかがいたします?」
「決まっておろう」
「では、その日まで、盗賊どもを手厚くもてなしてやりましょう」
グーロンはそんな言葉を残して軽く一礼し、場を辞した。盗賊ども。もちろん、ガルムたちは自分たちがグーロンからそのように称されていることを知らない。




