九話 友達と仲間
友達と仲間
リュスに友達ができた。もちろん、エイミーである。ボブス子爵に挨拶を済ませた際、
「友よ。」なんて声をかけられたが決して俺の友ではないと苦笑いを浮かべた。
エイミーの家に俺たちは世話になっていた。俺たちの同行者は増え、今は5人が世話になっている。
俺にリュス、ロデフのほかにロデフの知人の魔法使いの少女とエルフが加わっていた。
少女の方は見かけが少女だけで、
<オランジ>
<40歳>
<人間・魔女・女>
<称号・欺きし女、茨の魔女>
つまり結構いい歳のおばさんが歳をごまかしたり魔法で幼女の容姿を維持している。<欺きし女>の称号は笑ってしまったが俺よりも格上魔法使い、魔女に出会うのは始めてで彼女の魔法で後悔させられている。もう一つの称号に恥じることのない(木)の操作魔法で俺は茨で簀巻きにされていた。
エルフのほうも歳は重ねているがエルフという種族は本来長寿の種族であった。
<プリミティーユ>
<80歳>
<エルフ・狩人・女>
<称号・森の探究者、森の申し子>
80歳と歳をとっているが人間でいうところの18歳になるくらいの若いエルフだった。エルフの成人はおおむね60〜70歳、人間でいう16歳くらいらしい、この国の成人が15歳なので50年余分に歳を重ねないと成人として扱われない。寿命は180歳から300歳と幅広いが主に老化はみせず、生涯を終える種族である。
称号はエルフらしいもので今回森のダンジョンで経験とお金を稼ぐことを決めたのでオランジの20年来の友人として彼女の転移魔法で迎えに行っていた。
オランジはロデフのかつての仲間で彼女の転移魔法でサンドマン伯爵領に向かうことができた。彼女は王都郊外のバラの茂った通称『バラ屋敷』に暮らしていて、ロデフとともにお願いに上がった。
幼女趣味のおばさんはリュスの身なりを二人の男に山姥のような顔でののしってくれた。
一応リュスに服も買い与えてるし汚れも風呂のある宿で洗い落としている。ロデフは王都に行くまでに冒険者ギルドで貯金を下ろしている。長年愛用した体験は逮捕された際に没収されているものの、そもそも戦いの際は鉄よりも頑丈で鋭い爪が武器になり、枷が外れた今はわざわざ武器も必要なく、最低限の防具を買った後はリュスの服代に費やしている。冒険者ギルドで案じられた手配書もフリュートから離れた場所では知れ渡っていなかった。そのあとオランジが手を回し、ギルドカードの再発行とロデフの正当防衛を認めさせてと、このおばさん、かなりいろいろ顔が利くようなのだ。まぁ王都に俺の家じゃ逆立ちしても太刀打ちできない豪邸を所有しているのだから当然である。
ちなみに俺は茨で簀巻きにされたこともリュスのことで罵られたこともかなり根に持っているため心の中でおばさんと呼び続けている。
日常生活に支障の出るようなお姫様のような恰好をリュスにさすようなセンスでリュスの喜んだ服を買った俺たちが罵られたことに納得などいかない。
自分の衣装もバラをあしらった無駄に豪華なものやいわゆるゴスロリ系のひらひらの衣装、ちなみにエイミーもオランジの被害者として農家の娘には似合わない衣装を着させられている。着せ替え人形から難を免れたている若い娘はプリミティーユだけ、エイミーの姉も俺の滞在を聞きつけ顔を出した際、今の職場に似合うからと刺繍だらけのメイド服を押し付けられている。ちなみにエイミーの姉は、俺の紹介でボブス子爵夫人のメイド見習いをしている。子爵夫人がバラの刺繍やらに感動していたなんて情報は耳を塞いでいる。
そんな濃いおばさんと美麗なエルフを加えた俺たちは『迷い』のダンジョンを順調にマッピングしている。
神のおかげでおばさんも驚くほどのスキルを持つ俺が正確な攻略図を書き記している。おばさんは目を細めて俺を観察したり、俺の保有スキルを探ったりしているが【鑑定】をもたないうえ、俺には他者からのステータス分析を妨害するスキルも保有している。
おかげで「下級貴族のくせに。」やら「器用貧乏め。」やらと悪態をついてくれる。
「容姿は幼女でも罵るときは、歳相応ですね。」
「黙れ、小僧。」
口答えするたびに棘による切り傷だらけである。
とはいえ、前世でコミュニケーションなど捨て去った日々を過ごしてきた俺としては楽しいやり取りでもあった。
デーモンウッドのほかに中ボスを3種類確認した。
バラのモンスターにおばさんは憤慨し、
「美の冒涜め。」
と吐き捨てて楽々と仕留めている。
人食いバラは花の中央によだれの様なものを垂らした大きな口があり、おばさんの機嫌を損ねたのだ。このパーティーは前世のコミュニケーション能力の低さに貴族を演じてる俺を筆頭におとなしいメンバーが多い。ロデフの場合寡黙、プリミティーユの場合無口という二人の性格。やかましいおばさんの独壇場で会話が成立する。付き合いを続けるとダンジョンで時折上機嫌なプリミティーユが見れることがある。無口だが安全圏の泉で何気に美声の鼻歌を歌っていたり、エルフ語らしい歌を口ずさんでいたりする。ドロップアイテムで希少な薬草や種子を見つけると瞳を輝かせ、調べていたりもする。以外に表情が豊かなので見とれたりもする。しかし俺は惚れたりしない。心の棘は今も深く刺さっていることを感じている。
精神魔法を放つマインドパペットという木人形もコケを体中に生やした岩肌の大イノシシも中ボスではあるが俺たちの敵にはならなかった。
ダンジョンは俺の去った後にも攻略が続いていて、誰も把握してはいないことだがすでに中盤までは進んでいた。序盤からかなり『迷い』の性質を前面におすこのダンジョンの難易度を高めに見ていたことから予測が立てられなかったのだ。中盤の山場ともいえる迷わした挙句のモンスターの巣窟はギルドの尖鋭が無事攻略している。今後の冒険者の安全も図り巣窟と呼ばれるモンスターの集団がたまりやすい場所、モンスターだまりとも呼ばれる場所は定期的にベテラン冒険者が駆除に出かけたり可能なら人為的に破壊したりもしている。ダンジョンの地形が変わらないような場所では道を塞ぐ倒木などの障害物も撤去したりする。まれにその倒木が希少な木材だったり、通路の先に宝箱が眠ったりしていることもある。ダンジョンにある倒木だけに物理攻撃では傷もつかなかったり、一部の魔法属性に反応する木だったりするので持ち帰れれば大きな稼ぎになるのだがモンスター同様、すぐに消滅したり、酷いときはせっかく運びきっても脱出の際に手元からもアイテムボックスからも消滅してしまうことがある。それは倒木だけではない。ダンジョン壁に組み込まれた薬草や効能の認められる種子などもである。ダンジョンの作り出したものはなかなか持ち帰りにくい。ダンジョンのモンスターもこれらのものも主にダンジョンの秘めた魔力やらで生まれているためなのであった。補足だがダンジョン以外で出会うモンスターには繁殖能力もあったり、分裂や増殖なんて手段で数を増やしたりする。ときおりダンジョンから外にでたらしきモンスターもいるが外ではダンジョン生まれのモンスターも死体が消滅したりしない。死体の消滅はダンジョンが吸収しているからと考えられる。冒険者の遺体も一晩あれば跡形もなく消滅している。これらの冒険者の装備品や所持品が宝箱にあらわれたりすると考えられているがそれだけでは考えられないレアアイテムもある。俺が以前にうろの宝箱から見つけたレアアイテム『森の宝珠』は世界に何度も見かけるような宝物ではない。本来なら子爵にでも報告するべきものなのだが、ダンジョンで見つけたものは発見者に所有権が認められる。パーティーによってはそれがトラブルに発生することもあるのだが俺が一人で発見しその所有を秘匿しているため、誰もその存在をいまだ把握していない。なにせ同様のアイテム『森の宝玉』がエルフの国の国宝とされていることを俺は知っていた。きっとエルフであるプリミティーユに知られたらとんでもないことになるだろう。
ダンジョンを進むごとにモンスターのレベル自体も高くなっていく。その分ドロップアイテムも魅力的になる。俺たちはおばさんにひたすら中ボスの相手をさせられたり、レアなドロップアイテム獲得にこき使われていた。
デーモンウッドのレアアイテムが確認されていたことから他のも試してみたところ、人食いバラの野郎が厄介なレアアイテムを落としやがった。
『バラの涙』(効力:この滴を肌に塗るとバラの香りとともに強力な魔法結界を発揮する)
バラの香りでおばさんは反応した。あのよだれの様なものは涙だったらしい。口からなのに。一応ビンに入った物だったのであれとは断定できない。さらにこの『○○の涙』は香水として錬金術者が重宝していたことからおばさんの獲物として乱獲されることになった。それだけでも大変なところ、イノシシの野郎も厄介なことにプリミティーユの触手に反応するものを落としてしまった。
『精霊の銀糸』(素材:特に精霊のハープに用いられる)
俺の修行とばかりに『精霊のハープ』に必要な数だけ挑まされた。やはり80歳、歳を積み重ね欲深になっている。まぁエルフの国をでているようなエルフは己の欲望に素直なのだろう。外に出たエルフの多くが学者になったり、音楽を極めようとしたり、冒険にいそしんだり、変わり者なんて揶揄されたりしやしない。でなければ変化をよしとせず、欲にかられることも少ないはずのエルフが外に興味を持つこともない。
プリミティーユは<森の探究者>なんて称号を持つほどの好奇心と探究心を兼ね揃えている。しかも学者として植物をあつめ、音楽を愛し、冒険をつづけている。……かなりやっかいなエルフだと気付いた。
「ルーベン殿、気をつけよ。」
ロデフのアドバイスで厄介な熊系のモンスターを倒す。
「小僧、見かけに惑わされるな。」
おばさんの注意で可愛らしい小人の様なモンスターのたちの悪い魔法を耐えしのぐ。
「その木はモンスター。」
プリミティーユの指摘で【看破】の前にモンスターを暴く。
俺は3人の先生方に指示する形で経験を積んでいく。
かなり順調にダンジョンを攻略している。時間が限られているため、かなりのスパルタである。総合レベルも順調に上がっているがふと気づいてしまったのだが俺の成長が人より早いように思う。3人の総合レベルはもちろん経験の差もあって俺より上だが今はさすがに3人よりレベルが低いにしてもこのままでステータスが上がり続けるなら肩を並べるどころか彼らを追い越しかねないことに気付いてしまった。成長期なんて冗談で濁せないハイペースである。
ダンジョンで俺だけ戦闘を行っているわけではない。このからくりに気付くのはまだまだ先のことである。
ダンジョンでは時間を惜しむように戦闘をこなし、町に帰ればあとわずかの滞在期間となったことから余計にかまってオーラを出す少女二人の相手もする。
「ルーベン様、お怪我はありませんか?」
「ロデフおじ様、今日はどんなモンスターと対峙なされたのです。ルーベンにい様はたくさん活躍されたのですか?」
二人は毎日ダンジョンの話をせがんでくる。ダンジョンにも行きたがっているがさすがにロデフが許可しないので毎日、ダンジョンであったことを話聞かしている。
充実した日々に違いないが、大変な毎日である。
『迷い』のダンジョンを踏破したことがあるおばさんは俺のマッピングの性能で助けられていると俺には内緒で子爵に報告していた。
何年かけても踏破が叶わないダンジョンもある中、俺たちはハイスペースで最終地点である大ボスの間に到達していた。
少しばかり苦労はしたものの俺たちは無事ダンジョンを制覇した。
子爵の期待に応えたもののひそかに俺たちが期待していたものは見つけられなかった。ダンジョンによっては隠しダンジョン、裏ダンジョンなんて呼ばれる、大ボスを倒した後に解放されるダンジョン深部が存在するケースがある。ゲームのような存在を知らされていただけにがっかりだった。
いやがっかりしたのだが、それは存在した。
ダンジョン攻略を祝う子爵の食事会を抜け出した俺にそれは伝えにやってきたのである。




