寝覚めの悪い朝
刑務所
裁判を終え、異議を唱える上告などの期間が過ぎ、初めて刑に服す所謂初犯刑務所に収監さる。
始めは写真を撮られて、番号を振り分けられて、荷物の確認そして、体の特徴の確認や裸で異変物の持ち込みがないかなど独特の検査が終わる。
以後名前は呼ばれるが基本的には振り分けられた番号で呼ばれる。
朝晩の点呼
用事を頼む際、弁護士や職場の元上司、同級生などの手紙は受け取りを拒否し、刑務作業を務める。工場に配属され、休憩時間もただ無口で誰とも交流を持たず、集団行動に適していないと部屋内作業に変えられ、黙々と毎日を過ごした。ただひたすら妹の仇を胸に耐え忍んだ。
復讐鬼として何日も何ヶ月も何年も、夢にうなされる日々。
久しぶりに夢をみた。乾ききった喉に水をごくごくと流し込み、寝覚の悪い朝を迎えた。
『大丈夫か?』
『嫌な夢を見ただけさ。』
サンドマン領の旅路もそろそろ後半に差し掛かってきた。
『この峠の手前は獣人軽視の盗賊が蔓延っています。』
『どうしますか?』
『マフィーとリュスたちは少し留守番をしてくれるかい』
『ではお供しましょう。』
俺はロデフを連れてひとまず峠を目指した。
盗賊の根城を発見した。夜の闇に溶け込み、おおよその数を割り出した。
五十人は超える、中規模な盗賊団である。
夢見の悪さから苛つきが取れない。この中の奴らは旅人を襲い、女性に乱暴した奴らもいるだろう。前世の記憶を夢見たことで今日のルーベンは殺伐とした雰囲気を醸し出していた。
『一旦戻りましょう、二人では万が一のこともございます。』
根城の灯りを睨みつけながら退散した。
『町に着いたら情報を提供して討伐隊を派遣していただくのが良いかと。多分喜ばれるでしょう。』
『俺の姉ちゃんにも相談するといいよ。冒険者として有名なんだ、ここらの盗賊をなんとかできたら商売もずっと楽になるしありがたい。』
獣人狩りが多発している元凶をこのまま放置できない。かといって強行手段も取れないと安全策を話し合っていく。
峠には後からくる旅人たちに事情を説明して盗賊が警戒せざる得ない人数での行動としたい。
野宿の明かりに釣られ少人数の旅人が声をかける。
人だけの旅人も獣人を交えた冒険者も峠の盗賊に注意を払い、時間を取られることよりも襲われる危険性を重視した。
人が集まり、峠を超える。
監視の気配も感じる。待っていろとばかりに睨み返し俺は峠を下って行った。
オランジらプリミティールがいたら、すぐまた被害が出たら、それからと言うものしばらく刑務所の夢をみた。
トイレが備え付けられた3畳の部屋、窓には鉄格子、ラジオが流れ、いつしか一日が終わる。
嫌な夢と寝覚めの悪い朝が続いた。




