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逆立ちトプスは天を舞う

「おらおら、トリケラトプスー」

「やーい、トリケラトリケラ」

「止めろよ」

 なにを言っても僕の周りをグルグル回ってる奴らは止めない。毎日毎日こうだ。奴らは休み時間になる度に集まって、こうして僕をバカにする。飽きるの待ってたってこいつらは一生飽きないだろう。もうずっと続いてるんだから。なんでトリケラトプスと呼ばれているのかもわからない位に前から。

 やっと次の授業の教師が入って来た。休み時間の十分間がとても長い。

「もう授業かよ」

「次なんだっけ?」

「数学だよ」

 教師が来た途端に僕から興味を無くしたように自分達の席へ戻って行く。早く学校が終わって欲しい。でも授業は終わらないで欲しい。直接的な暴力がないのがせめてもの救いなのか。淡々と授業を進める教師が怖い。見て見ぬ振りをするクラスメイトが怖い。みんながみんな僕を笑っている気がする。


 授業はもう終盤だ。もうすぐまたあの時間が始まる。教師の話など耳から入っても頭に入らない。休み時間の事ばかりが頭にちらつく。僕がトリケラトプスじゃなくてティラノサウルスとかだったらいじめられなかったのか。どのみち恐竜じゃ変わりないか。

 チャイムが鳴って教師が出て行く。待っていたかのようにあいつらは僕の周りに集まって来る。

「おいトリケラ、昼休みだからいつも通り屋上来いよ」

「来なかったら、わかってるよな」

 やっぱりだ。休み時間の中でも昼休みが一番嫌いだ。屋上なんて滅多に人が来ないもの。またどうせいじめられる事はわかってる。だから今日こそは前から計画していたアレをする事にする。決心はもうついている。腕っ節では敵わないだろうけど、これならもう懲りるだろう。 そう心を決めると屋上への階段もいつもより楽に上れる。このあとどうなるかはわからない。でももう決めたんだ。

「やっと来たなトリケラ」

「遅いぞお前、なにやってたんだ」

 扉を開けた途端に腕を掴まれ倒される。立とうとしたらまたすぐに倒される。殴ったり蹴ったりは一切しない。だからこそジワジワと僕の体を蝕んでいく。

「おらトリケラなんとか言ってみろよ」

「ほれほれ、自慢の角で突いてみるか」

 奴らがゲラゲラと笑っている内に僕は走って輪から抜け出す。

「あっ、なにしてんだよ」

 うしろから追って来る奴らの声を無視して走り続ける。屋上の端まで来て、そのまま僕は、フェンスを跳び越えた。






 逆立ちトプスは天を舞う。







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