潜 入
「山本 結衣?なにもんじゃ?」
「どうやら加田先生の紹介で支援のほうに入ったのが三ヶ月前、来てすぐ支援の方でちょっとした事件がありまして…」
「事件?」
「はい。
その時の対応が上原から上がってきまして…」
「おぬしの目に留まった…とゆうことか…」
「まぁそうゆうことです。」
「まぁおぬしがそこまで言うのなら間違いないじゃろうが、いきなりこの要塞にのう…よほどの女じゃな。」
「すべてにおいて、完璧といわざるおえんでしょうな」
カタン、ノックの音と同じタイミングで老人がグラスを置いた。
「どうぞ。」
「失礼します。」
「ほおう、これはべっぴんさんじゃな。」
鐘巻はいやらしい微笑みを浮かべ、その目だけは笑わず、その女の心をのぞくことに集中していた。
「君は、相当出来る様じゃが、この要塞に来ること、いやこの要塞をみてなんとも思わんかね?」
「はぁ、それは多少の疑問を感じてはおりますが、反町さんから先生をお名前が出た瞬間に、覚悟を決めておりますので…」
「覚悟?」
「はい。
私、先生が副総理をなさっている時にすでに感服しておりましたので。」
「ほう、見所はあるが、わしのどの部分にじゃ。」
「先生の悪の部分に。」
「これでも善人で売っておったんじゃがのう、どこで分かる?」
「人相といいましょうか…細かく言うと目ですね。
瞳の奥にある、暗闇が見えまして…
この要塞から出て行くことが、永遠に無かったとしても私、悔いは残しはしないと思います。
そうゆう覚悟ですわ。」
「大吾が気に入るはずじゃな。
肝もすわっとるわい、ガッハッハッハッ、まぁお願いする。
頑張ってくれたまえ。」
「はい、よろしくお願いします。」
ふぅ〜まっ、こんなもんか…
それにしても、こんな要塞、頭に機械でも入って無かったら、絶対に迷子になるわね。
ながいこと居ればまぁ覚えるんだろうけど。
どうするのかしら龍二は…って考えてもしょうがないし、三日間とにかくうろうろしましょうかね、私は…場所覚えるフリしながら…
「ルートは頭の中だし俺は暇になったな…結衣は間違いないだろうし、武器はあそこにあるし、忙しいお二人さんが居ない三日後に向けて、何かやりのこしたことがないか考えとこうか…」
などと余裕がまだまだあった俺に、インカムから声がしてきた。
「チィース!」
「いらない。」
「えっ!」
「いらない。だ、馬鹿、聞こえねぇのか?」
「そりゃないっすよーりゅうさん。
俺だって来たくて来たわけじゃないし、ドクターに言われて来てんスから…
それに今回、暴れるだけじゃないでしょ?お宝になにかあるとボスも首飛ぶらしいっすから。」
「そんなことしるか、ちゃんとやってやるから、お前は帰れ!」
「たっきもっとさーん、わがまま言わないで下さいよぉ、ボスがうるさかったんでね、今回は…」
「そうだろうな。
だからって俺の任務はお守りじゃねぇだろ?こんなのいらねぇよ。」
「まぁまぁ純ちゃんも、腕上げてるっつうか、腕なんていらないでしょ、ただ運ぶだけなら…」
「だから、運ぶってことは俺か結衣がこの馬鹿に渡すってことだろうが!天才!そこで必ずなんかやるし、やってきたんだよ!こいつわ!」
…長い沈黙。…
「わかり」
「わかった、やらしてやるよ、ただし最後だ、純。
今度やったらその場で殺すぞ。
それでもやるのか?俺は嘘は苦手だぞ。」
沖本の返事を割って、俺が承諾した。
純は涙ぐみながら、なにか決意のようなものを瞳に燃やしながら言葉を吐いた。
「よろしくお願いします…」
「いやぁ、丸く収まって、良かっ」
プチッ。
無線を切ってやった。
「結衣はここには居ないが、やつも命がけだ。
それ忘れんなよ。」
純は言葉が出なくなったらしい、黙って、ただただ頷いていた。
俺は、惇に丸一日かかってミッションの進行を叩き込んだ。
「すごいっすね、相変わらず。
随所に無茶苦茶が一杯だ。
よくいつもいつもこれを普通にやりますね。」
「俺達には普通だし、大吾や親父、沖本、そして結衣にいたっては、このぐらいじゃなきゃだめねって言われるよ、きっと。
ただ…」
「ただなんですか?」
「さっきも言った様に、大吾は侵入者が俺だときずいて無くっても、対応出来るってことだ。」
「うーん…それじゃどうしたら…」
「アドリブだな。」
「アドリブ?」
「ああ、考えちゃ駄目だ。
感性の勝負になるだろうな。
つまり………適当ってことかな。」
「はぁ〜?適当っすか?」
「感性なんてそんなもんじゃねーの。」
「大丈夫なんですかね…」
「大丈夫かどうかじゃねーだろ?やんなきゃしょーがねーんだから。」
「そーですね。」
と、惇に言ったものの、俺の胸騒ぎが止まることはなかった。
ずっと感じているこの感覚、大吾との空気感とゆうか、相性の悪さとゆうか…
「死ぬかもしれねぇな」とゆう言葉を俺は飲み込んだ。
俺達の仕事はそうゆう仕事じゃねーか、なにを今更…驕ってるんだな、絶対死なないとでも思ってんのか、俺は馬鹿になってるのかぼけがきたかどっちかだな。




