【三題噺】 くじ引きの景品
《登場人物》
吉田 慎太郎 大学教授
洋菓子店マーマレードの店主
この物語はフィクションです。
大学教授の吉田は、洋菓子店に行く事になった。そもそもの理由は、他の教授達とのトランプゲームで負けたから……
土砂降りの雨の中、吉田は、負けた事についてブツブツと独り言をこぼしながら歩いて洋菓子店へと向かった。たまたま大学から近く徒歩で5分もかからない所にあった。
「ここか?」
吉田は、1つの店の前に立ち止まり、振り返って店の看板を確認してみる。
看板には《洋菓子店 マーマレード》と書いており、外から見る店内の雰囲気、外装も真新しい感じだった。
吉田は、早速、店の中に入ってみた。ビニール傘を閉じて、手袋を外して洋菓子店のドアを開ける。
カランコロンとドアに取り付けてある鈴の音が、吉田の耳に響く。吉田は傘立てにビニール傘を置いて、肩の水滴をはらう。はらった後で店の周りを観察し、ショーウィンドーの洋菓子やケーキが綺麗に並べられているのが見えた。
ショーウィンドーには、チーズケーキ、チョコケーキ、ショートケーキ、ティラミス、モンブラン、フルーツタルト等置かれていた。すると奥の部屋から店主が出てきた。
「いらっしゃいませ~」
その店主は、年配の方で銀髪、団子鼻であった。
「あ、ああ、え~っと、このガトーショコラを二つ、チーズケーキを一つ、ショートケーキ一つ、モンブランを一つ、以上で」
吉田は、店主の団子鼻に凝視されながらもトランプに参加していた人数分のケーキを選んだ。店主は、吉田が注文したケーキをお店オリジナルのケースにつめて、ナイロン製の袋にケースを入れた。
「お待たせしました。合計で、790円になります」
「あ、じゃあ、すいません。大きいのしかないんで1000円で……」
「お釣り、210円のお返しです。今、キャンペーンをやっておりまして、ケーキの個数=回数分のくじ引きをやっております。合計5個ですので、5回この箱に手を突っ込んで頂いて……」
「あ、はい」
吉田は、言われるがまま、くじ箱に左手を突っ込んだ。1回目、店主が紙を開けると、そこには、何も書かれていない。
「ありゃ~1回目はハズレですね。残念賞の《一口スイートポテト》です」
吉田は、店主に礼を言った後で、くじの景品について訊いた。
「あ、どうも……あの一等はなんですか?」
店主は、にこにこしながら答えた。
「1等は、24型の液晶テレビです。さぁ、あと4回です」
その後、吉田は3回引いたが全部、白であり……《一口スイートポテト》が更に3つ増えた。
最後の一回……
(頼む。当たってくれ!)
吉田は、一生のお願い張りの願いを込めて、目をつぶりながらくじを引き、さっと選んで店主に渡した。
店主は、渡された紙を開く。そこには、色がついている。薄みのかかった黄色だった。
「当たりだ! 大当たりです! おめでとうございます」
「えっ、当たり? やった! ちなみに何等ですか?」
「2等です! 2等の景品は……」
「えっ……?」
あの後、研究室で一人、悩む事になる。その悩みは、当たった2等の景品をどうするか?
2等の景品は、《一口スイートポテト》の約10倍の大きさであるスイートポテトだった。
END
この物語はフィクションです。
大学教授 吉田さん シリーズを書くことにしました。2作目です。
今回も三題噺をサークルでする事になり、書き上げたものです。
今回のお題は、この三つ!! 「スイートポテト」、「雨」、「手袋」の三題でございます。
この三つの単語を必ず用いて話を作るという事です。
難しかったのは、「手袋」「雨」をどう利用するかに迷いが出ました。
読んで、いただけたら嬉しいです!
できたら、感想や「もう少し、ここはこうすれば良かったのでは?」 の意見も頂けたら嬉しい限りです。
宜しくお願いします。