第一章 悪の始動
初小説です
1、2話は村日常編描くと思います
設定はラストまで決まってるのでどれだけうまく面白く描けるか、モチベーションが続くかが大事かなって考えてます
「眩しい…」
目を開けて最初に感じたのはそれだった
青く広がる空
木々の間から差し込む光
揺れる葉が影を落とし、
木々のざわめきがノイズひとつなく聞こえてくる
「…..」
体を起こそうとした瞬間、全身に鋭い痛みが走った
もう一度起きあがろうとする、
重い
まるで自分の体ではないような感覚だった
それでもなんとか起き上がり、周囲を見渡す、
「森….?」
見渡す限りの緑、高い木々、聞こえる鳥の声、
少なくとも見覚えがないことはわかった
ここはどこなんだ?
なぜここにいるんだ?
何をしていたんだ?
あれ?
嫌な汗が背中を伝う、
名前は?家族は?友達は?故郷は?
….名前?
いや名前だけじゃない
自分の過去が何ひとつ思い出せない。
呼吸が浅くなっていき
心臓が嫌な音を立てる、
その時だった
ガサッ
背後の草むらが揺れた、
嫌な予感がしつつもゆっくりと後ろを振り向いて見る
木々の間からこちらを凝視している黒い影があった
四足
黒い皮膚
異様に長い腕に爪
獣にも人間にも見えない何か
息が詰まった
なんなのかわからない
だが危険であるとそう本能が警告をしていた
反射的に駆け出した
そしてこちらを追いかけるようにその異形は迫ってきた
速い
異形がスピードを上げ、こちらに攻撃をしてきた
避けられない
死ぬ
そう思った瞬間
ドォン!!
轟音が鳴り響き、
森全体が揺れた
「……….」
言葉が出なかった
突然の異形の頭部が吹き飛び、黒い血が木々を染める
地面に転がった死体がそして蒸発したかのように消えた、
あたりを見てみると金髪の大きな帽子を被った女がおり、
その手から煙が出ていた
「危なかったわね」
女はそう言いながら手を腰に当てた
まるで散歩の途中で虫を踏み潰した程度の顔をしていて
突然のことに何が起こったかわからず呆然としてしまう
この女が敵が味方かわからない
だが、少なくともさっきの化け物よりは信用できそうだ
数秒間の沈黙ののち男が先に口を開いた
「あなた、怪我はない?」
「大丈夫です」
「なんでこんなとこに一人でいるの?」
どう返そうか迷った、
「わかんないんです」
「は?」
「何も思い出せなくて」
女は眉を細め、少し顔がこわばった
「名前は?」
「わかりません」
「家族は?」
「それも….」
「悪い冗談とかじゃなくて?」
「はい」
女は何かを考え、何か思い出したような表情をした
「あぁ、最近ね、」
女は少し声を落とした
「記憶を失った人たちが増えてるらしいの」
「……」
「原因はわからない」
「ただ、全員同じ顔してるんだってさ」
「まるで何かを忘れさせられたみたいに」
「あなたもその一人かも知れないわね」
「直す方法はないんですか?」
「ずっとこのままなんですか?」
女は少し黙り、申し訳なさそうな顔をしてこちらを見た
「今のところは治ったっていう話は聞いたことがない」
「ただ、ここ最近から起こり始めた現象だからこそ直す方法が見つかるかも」
記憶は戻らないかもしれない。
その言葉だけが頭の中で何度も反響する。
自分が誰なのかもわからない。
帰る場所があるのかすらわからない。
胸の奥が冷たくなった
「ねえ」
女は頭を掻いた
「そんな顔しないで」
女が手を差し出してきて
「あなた親も家もわからないんでしょ?」
「はい…..」
「思い出すまで面倒見てあげる」
「え?」
「放っておいたらまた魔物の餌になるだけだし」
女は笑い、
「それに一人くらい増えてもたいして変わらないもの」
「…」
「飯も少し多く作ればいい」
「あなたがよければ、の話だけれど」
言葉が出なかった
名前もわからない
家族もわからない
帰る場所もわからない
そんな自分に目の前の女は当たり前のように手を差し出している
なぜかはわからない
会ったばかりのはずなのに
その手を掴むのを躊躇うことはできなかった
「…..お願いします」
女は満足そうに笑っていた
そうしてその場から去り、その女の住む村へ向かって行く、
会話をせずに歩いていると
「そういえばあなた名前が思い出せないんでしょ?」
「ごめんなさい」
「ちがうちがう!そういうのじゃなくて、ただ、呼び名がないって言うのも不便だからね」
女が少し悩んだあと
「アムネ、なんてどう?思い出すまでの仮の名前として」
「アムネ……」
少年….いや、青年はその名前を口の中で転がした。
不思議だった
初めて聞く名前のはずなのに、どこかしっくりくる気がした。
「いい名前だと思います」
「そう?」
女は満足そうに笑った。
「そういえばまだ自己紹介してなかったわね」
「私の名前はアリシア、よろしくねアムネ」
「アリシアさん、これからよろしくお願いします」
「ちょっと敬語なんて堅苦しすぎるよ、タメ口でいいからさ?ほら!」
「えーっと…..」
アムネは少し困った
今までどうやって人と話してたかすら思い出せない
「じゃあ…..アリシア?」
「そう!それ!」
アリシアは満足そうに笑った
「その方が聞いてて楽だよ」
「わかった、よろしくアリシア」
「うん」
アリシアは嬉しいそうに頷いた。
そんな会話をしているとなんだか異様な雰囲気が漂ってきた
少しあたりを見回してみると、先ほど見た異形が徘徊をしていた
先ほどのことを思い出し恐怖で少し声が震える、
「ねえアリ….」
そう言いかけた瞬間にはもうすでにアリシアは火の塊のようなものを異形に向けて発砲していた
先ほどと同じように異形は力無く倒れ、先ほどと同じように蒸発したように消えた
「あなたが気づけるものを私が見逃すはずがないじゃない」
「すごい…」
そう無意識に溢していた、そういえば、と疑問に思っていたことを口にする
「さっきから思っていたんだけどあの変なのは何なの?」
「ん?」
「魔物のこと?」
「多分それだと思う」
アリシアは消えて行く黒い煙を見ながら頷いた
「あれは魔物って言って」
「一年前に現れ始めた化け物」
「一年前?」
「そう」
アリシアの顔が少し暗くなった
「ある日突然、洞窟や森の奥から湧き始めたらしくて」
「最初じゃ村に来た旅商人や王都から来た騎士からしか聞けないような噂みたいなものだったんだけどね」
「今じゃあこの村の近くにも結構いる」
「昔の私は見るまで信じることはできなかったよ」
アムネは先ほど襲って来た魔物を思い出し、
あれほどの化け物がそこらじゅうにいる、
そう考えるだけで背筋が冷えた。
「そんな心配しなくても私が守ってあげるから心配しないで」
「魔物は私が必ず殺すからさ」
その言葉に妙な重みを感じた
「実際に村でも魔物のせいで死んだ人が何人かいる」
「私が守っていかなきゃダメなんだ」
アリシアはそう言ったあと少しだけ黙った
まるで何かを思い出しているかのように
そしてその時アリシアの足が止まった
「ほらアムネ、村が見えるよ」
そういい木々の間を指差す
「見えない….」
「あーごめんなさい!ちょっと待ってね」
アリシアは荷物を置いてアムネを抱きかかえた
「これで見える?」
綺麗で近くに川も流れる村があった
石造りの家と木造の家が並び
畑では農民たちが作業をしている
子供たちは広場を走り回り
商人らしき人間が荷車を引いていた
平和だった
少なくとも魔物が徘徊する森の中よりはずっと
「どう?」
アリシアが少し得意げに聞いてくる
「綺麗な村だね」
「でしょ?」
アリシアは嬉しそうに笑った
「私はこの村が好きなんだよ」
「のどかで、いろんな人に見られることなく、静かに楽しく過ごせるこの村が」
「それってどういう….」
「今はいいの!ほら行くよ!」
そう言いながら村へ向かって歩き始める
村へ入ると多くの人がアリシアへ声をかけてきた
「アリシアちゃんおかえり!」
「ただいまー!」
「また見回りかい?」
「うん!」
どうやら村ではかなり顔が広いらしい
その度にアリシアは笑顔で返事をしていた
そして当然のようにアムネにも視線が集まる
「その子は?」
「森で拾った!」
「犬猫じゃないんだから」
老人が苦笑する
「この子記憶喪失なんだって」
「ほう」
老人は少し驚いた顔をした
「最近噂になってるやつか」
「多分ね」
「大変じゃのう」
アムネは曖昧に笑うことしかできなかった
村の中を進んでいると広場が見えてきた
そこでは複数人の大人たちが掃除をしていた
石畳を磨き
落ち葉を集め
井戸の周囲を確認している
「何してるの?」
「あれはまあ清掃チームだね」
アリシアが答える
「村を綺麗にしてるんだよ」
「掃除だけ?」
「掃除だけじゃないよ」
そう言いながら一人を指差した
その人が地面へ手をかざすと
淡い光が広がり
石畳に残っていた黒い汚れが消えていった
「魔物が残した瘴気も消してるの」
「放置すると病気になったりするからね」
「へえ…」
アムネは素直に感心した
目立たない仕事だが
確かに必要な仕事なのだろう
その時だった
「お姉ちゃん!!」
広場の向こうから少女が走ってくる
アムネと同じくらいの年齢だろうか
茶色い髪を後ろで束ねた元気そうな少女だった
「おかえり!」
「ただいまルナ」
「見回りお疲れ様なの!」
少女はこっちに視線を向け、またアリシアに戻す
「この人誰ー?」
案の定聞かれる
「アムネ」
「記憶喪失」
「これから一緒に生活」
「説明雑すぎ!!」
少女は少しため息をつき、呆れた顔をしたあとアムネへ向き直った
「私の名前はルナ!」
「よろしくね!」
そう言って笑った
アムネも少しだけ笑う
「よろしく」
それが
アムネにとって村でできた最初の友人だった
アリシアが微笑ましそうにこちらを見ていた
「今からご飯作るからそれまで村を案内してあげて」
「はーい!」
「それじゃあアムネついてきて!」
急に手を掴まれ外に連れ出される
「遠くに行ったり、森に入らないでね〜」
「了解ー!」
ドアの外に出て、正面にあるものを指差す
「あれが井戸!」
「水を汲む場所だよね」
「せーかい!」
ルナはまた足を進めた
「あっちがね!広場!」
「みんなでよくあそこで遊ぶんだ!」
意外と広いな、とそう思った
そしてまた手を引かれ村のあちこちを案内された
こっちが畑で….. こっちが村長の家で…..
こっちが牧場……
と、ルナと様々な場所を巡った
「村の案内おわりー!」
「疲れた….」
「えーそんなに?」
「そういえばまだ見してない場所あった!」
疲れたアムネを強く引っ張り森の中へ入って行く
「森は危ないんじゃ、!」
「だいじょーぶだいじょーぶ!」
森に入って少し経ち、ルナが口を開いた
「ちょっとまって」
「ベリリアがいる」
ルナが指差した方向を見ると、アリシアと出会ったときに襲われた魔物がいた
息が詰まる
小声でルナに問いかける
「なにがだいじょーぶなの、」
「まあ見てなさいって」
ルナが立ち上がりアムネから離れ、立ち上がり声を出す
「こっちよ!」
その魔物がルナの方を見、襲いかかる
そして魔物は爪を出し、大きくふりかぶる
「….」
アムネは目を背けていたがドン!と音がし、振り返る、
魔物の攻撃はルナの前で止まっていた
「私の固有魔法はバリアを作れるの」
「アムネもさっき言ったことの意味わかったでしょ?」
そう言いながら魔物にナイフを何度も何度も刺し始める
バリアによって逃げ道を無くした熊はなすすべもなく倒れた
「久しぶりだったけどうまくいってよかったわ!」
トラウマでもこうもあっさり3回も倒される様子を見ると慣れてきてしまった
ルナに疑問を口にする
「アリシアは火の玉を出してたり、ルナはバリアを作っていたり、どう言う現象なの?」
ルナが少し驚いた表情をした
「んーと固有魔法のこと?」
「井戸のことわかるのに固有魔法のことはわからないの!?」
「そんな常識的なのか」
「そりゃそうよ!」
「生まれた時からみんなずっと持ってるもの!」
「アムネも一つは必ず持ってるはず!」
そうなのか、と少し驚いてしまう
「まあとりあえずその話は後!」
「こっち来て!」
ルナについて行く
草の下を通り川を越え、そして
「綺麗….」
夕焼けに照らされる花、光を反射する川、若緑の葉っぱ、村を一望できる美しい景色、場所であった
「ここね、私のお気に入りの場所なの!」
「アリシアと村の友達しか知らないんだ〜」
「改めて!これからよろしくね、アムネ!」
手をこちらに差し出す
その手を取り、握手する
目覚めて初めて見る夕日は、とても眩しかった
「そういえばだけどさ、」
「どーしたの?」
「アリシアがご飯作って待ってるんじゃなかったっけ」
あっ!とルナは思い出した途端焦り始めた
「森に入るなって言われてた!しかも魔物と戦ったなんでバレたら説教どころじゃ…..」
「魔物がなんだっけ〜?」
後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきて、
二人でゆっくりと後ろへ振り返る
そこにはアリシアの姿があった
「ルナ」
「はい….」
「帰ったら「お話」しよっか」
その時のアリシアの表情は恐ろしかった
家に戻り、アリシアがアムネに聞く、
「村のことは大体わかったかな?」
「なんとなくはわかったよ」
「ならよかった」
アリシアが椅子に指を指す
「そこ、座って」
「流石にお腹空いてるでしょ?」
そう言い、目の前に暖かそうなスープを置いた
「お疲れ様とこれからよろしくねの気持ち込めたから」
「いただきます」
木でできたスプーンでスープをひとすくいし、口に運ぶ
「あちっ、」
アリシアがこっちを見て微笑む
「少し冷ましながら食べてね」
一口づつ啜り、味わいながら飲む、
「美味しい、」
久しぶりの食事のようで、喉があまり通らない
だが、ゆっくり、ゆっくりと飲んでいく
器の底が見えてきた頃、
ドアが急に開いた音がした
「ただいま!!!」
息切れを含んだ声が後ろから聞こえてきた
「やっと帰ってきたか〜おかえり」
アリシアが笑顔で出迎える
だが、ルナは何も返さずソファーに倒れ込んだ
「アリシア、ルナに何させたの?」
「井戸の水運び」
ああそれで、とアムネは納得した
テンポよく進めていきましょ




