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第十話

全20話の半分まできました。

 「ただいま……」

 久しぶりの我が家、カオルは小さな声で居間に入ると、真っ先にピアノに目を向けた。子どもの頃から弾きなれたそのパートナーは厚いビロードのカバーで覆われている。リハビリの甲斐むなしく、右足に麻痺が残り、ピアノはもう続けられない。胸が疼いた。

 幸いカオルの家にはいくらか余分な貯えがあった。海外の有名コンクールを本気で目指すならと、高給とはいえない父の大学教師の給料からやりくりし、遊学資金として積み立てていたのだ。おおかた治療にかかる費用に化けてしまうことだろう。カオルは父に相談し、ピアノは売り払ってもらおうと考えた。金銭的なことより何より、ピアノを見るのが辛かった。

 「退院おめでとう!」

 満面の笑みを浮かべ、母がカオルを抱きしめる。

 「あっ!」

 ぴかぴかのチェロを抱えた父の姿を見て、カオルは思わず声を上げた。

 「高校に入ったら、チェロを始めればいい」

 父はカオルの肩をぽんと叩いた。


このたび本作を含む四つの物語から成る連作形式の小説「カオルとカオリ」をセルフ出版(ペーパーバック、電子書籍)しました。

最初のエピソードあたるのが本作です。心に適うようでしたら、購入をご検討いただけますと幸いです。

ペーパーバック版 ⇒ https://www.amazon.co.jp/dp/B0CJXHQW1G

電子書籍版 ⇒ https://www.amazon.co.jp/dp/B0CJXLHMTB

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