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その9


       3




 翌日、日の出とともに目を覚ました俺が横をむくと、サターニアが無邪気な顔ですうすう寝息を立てていた。こうやって見てると可愛いんだがな。


「そういえば、昨日は身体を洗ってなかったっけ」


 ここは城だ。朝風呂くらい入れるだろうと思いながら俺はベッドをでた。同時にサターニアも起き上がる。俺を見てにっこり微笑んだ。


「おはよう、ロン。今日は何するの?」


「とりあえず風呂に入る」


「じゃ、私は?」


「朝飯を食うなり好きにすればいいぞ」


 言って俺は部屋をでた。むこうからメイドがやってくる。


「あのう」


「あ、はい。なんでしょうか?」


 俺が声をかけたらメイドが驚いた顔で気をつけをした。これが本当のメイドと雇い主の力関係か。やっぱり秋葉原のメイド喫茶とは違う。


「風呂がどこにあるのか教えてほしいんだ」


 もっとフレンドリーな感じでも俺は構わないんだけど、と思いながら訊いたら、メイドが会釈してから右手を廊下の先にむけた。


「あちらをまっすぐ進みまして、階段を降りて、一階にございます」


「わかった。それから、代わりの服とか、下着が欲しいんだけど」


「すぐにお持ちいたします」


「そりゃどうも。じゃ、風呂に入って待ってるから」


 で、一階に行って、ほかのメイドにもう一回風呂の場所を聞いて、それで俺は風呂場を見つけた。服を脱いで入る。なんとなく壁を見ると、ドラゴンの顔をした石像の口からお湯がどばーっと流れていた。親父と少し似ている。


「いまごろ、どうしてるかな」


 まだ山を下りて一ヶ月ちょっとだが、懐かしく思いながら俺は洗面器にお湯を組んだ。頭からかぶる。


「うー気持ちいい。生き返るな」


「じゃ、私も」


 という聞き覚えのある声がすぐ後ろでした! 驚いて振り返ると、俺と同じようにサターニアが洗面器でお湯をかぶっている。もちろん風呂場だから、サターニアもオールヌードだった。胸がでっかいな。俺が人間のころにこれを見たらなんて言っただろうか。


 驚く俺を見て、サターニアが嬉しそうに笑いかけた。


「何を見てるのよ。ロンのエッチ」


「そっちこそ何をやってるんだ」


「私もお風呂に入ろうと思ったのよ。私も昨日、身体を洗ってなかったし」


「何も一緒に入ることはないだろう」


「さっき、朝飯を食うなり好きにしていいって言ったじゃない? 私が背中を流してあげるから」


 機嫌のいい調子で言い、サターニアがタオルと石鹸を手にとった。


 で、なんやらかんやらあって、背中だけじゃなくて前までサターニアと洗いっことしていたら、外で何やらガタガタと妙な音が聞こえてきた。


「なんだ?」


「何かしら?」


 不思議に思いながら頭を洗っていたら風呂場の入口が開いた。


「ロン様! 申し訳ありません。ここにいると聞きまして」


 と言ってきたのは昨日も世話になった衛兵さんだった。で、俺たちを見てぎょっという顔をする。


「あ、あれ!? サリーナ姫様!?」


「え? 違うわよ」


 俺の隣でサターニアが見ながら胸を張った。裸だってのに。


「私はサターニアよ。というか、でて行きなさい。いま私はロンと一緒に仲良くお風呂に入ってるんだから」


「あ、あの、失礼しました。ですが、すみません。いまはそういうわけにも行きませんで」


 衛兵が慌てたように背をむけた。ただ、それでもでて行かずに話をつづける。


「サリーナ姫が朝から見当たらないのです。しかも、サリーナ姫を拉致した賊の書き置きらしいものまで置いてありまして。急ぎ、アーサー王の元へお越しくださるように」


「なんだと?」


「では伝えましたので!」


 言って衛兵が風呂場からでて行った。なるほど、これは非常事態だな。


「すぐでるぞ」


 俺はサターニアに言って、頭からお湯をかぶって石鹸の泡を流した。

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