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その5

「わかってると思うけど、ゴールデンドラゴンの一族は天界と友好関係を結んでいるわ。それで、ここにいるロンはゴールデンドラゴンの族長の孫よ」


 少ししてサリー姉ちゃんが静かに宣言した。


「そのロンに、あなたみたいなのがなんの用?」


「結婚するって用があるのよ」


「は?」


「質問には答えたわ。もうどきなさいよ」


 サターニアが面倒そうにサリー姉ちゃんを押しのけ、俺の前までやってきた。いつもと同じで俺の腕に抱き着いてくる。それを見たサリー姉ちゃんが鬼みたいな形相になった。女神じゃなくて鬼神だな。それで、なんでか俺のほうをにらんでくる。怖え。


「ロン! これはどういうことなの!?」


「どういうことも何も、えーと、話すと長く+なるんだけど」


「あらロン、長くなんかないじゃない」


 俺の言葉をさえぎり、サターニアが俺とサリー姉ちゃんの間に立った。何をするかと思っていたら、いきなりサターニアが俺にキスしてくる!


「ふむー!?」


 あわてて俺はサターニアを押しのけた。


「あのな、そういうのは」


「これ以上に何か説明が必要かしら?」


 俺の言葉を聞こうともせず、サターニアが勝ち誇ったようにサリー姉ちゃんへ宣言した。サリー姉ちゃんが青い顔で俺に目をむける。本音を言うと、俺もいきなりファーストキスを奪われて青くなりたい気分だったんだが。


「あ、あの、ロン」


 サリー姉ちゃんが俺とサターニアを交互に指さした。


「まさかあなた、その女と愛し合ったの!?」


 とんでもないことを言ってきた。


「あの、ちょっと待ってくれよ。愛し合ったって、そんなわけがないだろうが」


「ははーん、あなたたち、その感じだと、私とロンが出会うまで、ちょっと仲が良かったみたいね」


 俺の言葉をさえぎるみたいにサターニアが言い、あらためて俺に抱き着いてきた。


「でも、ざーんねん。もう手遅れでした。あなたの彼氏は私が何もかもいただいちゃいまーす」


「ううううう」


 サリー姉ちゃんが歯を剥きだしながらサターニアをにらみつけた。


「人がなんだかんだ理由をつけて、理想のイケメンチート男子を育て上げたと思ってたのに、この泥棒女――」


「うるさいわね。私が泥棒女だったらなんだっていうのよ?」


「こうするのよ!」


 サリー姉ちゃんが怒りの形相のままサターニアに飛びかかった。いかん、本気でブチ切れていたらしい。さすがにこれは予想できなかったのか、サターニアがサリー姉ちゃんと絡み合うみたいになってひっくり返った。


「ちょ、ちょっと何するのよ!?」


 慌てた顔でサターニアがサリー姉ちゃんを突き飛ばしながら起き上がった。


「あんた、こんなことして、休戦協定はどうするのよ!?」


「もちろん天界と魔界の休戦協定は守るわよ!」


 両手の爪でひっかくみたいな構えをとりながらサリー姉ちゃんが歯を剥いた。


「でも、個人の喧嘩は協定に入ってなかったからね! お互い、所属する世界の力は使わない!! それなら文句はないでしょ!」


「――なるほど、そうくるわけね」


 サターニアもサリー姉ちゃんと同じような構えをとった。


「そういうことなら私も遠慮なくやらせてもらうわ!」


「望むところよ!!」


 言ってサターニアとサリー姉ちゃんが同時に組み合った。テーブルをひっくり返して揉み合いになる。うわ見苦しいな。というか、女の戦いなんてはじめて見たけど、これどうやって止めればいいんだ?


「「「はっはっはあ!!」」」


 どうすればいいのかわからない俺の背後から、豪快な笑い声が聞こえてきた。振りむくと、カウンターでジョッキをあけていたおっさんたちが楽しそうに笑っている。


「こりゃおもしれーや! サリーナ姫がどこぞのお貴族様とお忍びで遊びにきたと思ったら、今度は女神サリー様がやってきて、男の奪い合いでレスリングか!」


「これ、どっちが勝つかで来年の農耕がどうなるのか、なんて占えるのか?」


「なんだよマスター、こんな余興を用意するとは考えたじゃねえか!」


 口々に言いながら、おもしろそうに両足でどんどんと床を鳴らしだす。サリーナ姫とかお貴族様とか、なんかよくわからん言葉もでてきたが、とりあえず客を喜ばせる寸劇だと思ってるのは理解できた。それはそれで面倒にならずに済みそうだが、とにかくふたりを止めないと。


「「このー!!」」


 サターニアとサリー姉ちゃんが揉み合ったままゴロゴロと床を転がる。こりゃ、本当に手がつけられないな。どうしようと思っていた俺の視界の隅で、視界の隅に見えていた食堂の入り口のドアが勢いよく開いた。


「おまえたち、そこを動くな!」


 威圧的な怒号が響いた。揉み合っていたサターニアとサリー姉ちゃんも動きをとめる。俺もなんだと思って顔をあげると、夕方、俺が王都に入るときに会った衛兵と同じような姿をした、ごつい身体つきの男たちが何人も立っていた。同時にカウンターのおっさんたちもヤバいって顔つきになる。


 ありがたい話だ。この衛兵たちはコスプレじゃないって判断したらしい。

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― 新着の感想 ―
[良い点] なんだこの戦いはwwwwww しょぼい神魔大戦が酒場で繰り広げられてて草
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