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九話目、久し振りのお話、またの名を詰問

 エレナさんが部屋に入り、俺も部屋に入ろうとした時、

ふと男女二人きりの状況である事に気付く。

まあ、誰にも知られてないだろうし、今更でもあるから別にいいか。

そう思って、躊躇いも無く部屋に入った。

 「あまり変化はしてないみたいね…面白味に欠けるわ」

「あまりこの部屋に物を増やす事は出来ませんから。私はこのままで十分ですし」

「一週間と少し経って何が増えたのか期待してたのに、何も変わってないのはどうなのかしら」

 そうかもしれないけど…何も持ってない上に、

居候だから不必要な物を頼むわけにはいかないと思うんだよな…

 「普通はこういったものだと思いますし、今後もこのままだと思いますよ」

「…この部屋に来る楽しみが少し減ったわ…」

「期待されても困るのですが…」

ていうか少しだけなんだ…残った楽しみは一体何?

気にはなるけど聞くべきじゃないと思い、さっさと椅子に座ってもらおうと椅子を動かす。

 「どうぞ座ってください」

「あら、ありがとう」

 エレナさんが椅子に座ったので、俺も対面に座ろうとした時。

 「お茶を持って参りました」

「はい。今開けますね」

 ちょうどセルリアさんが扉をノックして来た。

立っているついでだったから部屋の扉を開けに行く。

 「ありがとうございます」

「どういたしまして」

 部屋に入ったセルリアさんはまっすぐにエレナさんの前にある机に向かい、紅茶を注ぎ始めた。

 「さあ。お茶も準備できたし、お話しでもしましょうか」

 俺が椅子に座ると、すでに準備の出来た机の上を見たエレナさんがそう言った。

 「話…ですか…何を話しましょうか?」

「私、貴方の事を聞きたがったの!ほら、何で川に落ちたのか聞きたいし、

何処から来たのか気になって!」

 ああ…それを楽しみに来たんだ…

五割以上それが目的であろう話を聞き、話すだけならいいかな…と思い、

考えていた嘘の事情を思い出す。

 「分かりました。何から話しましょうか」

「そうね…貴方は何処から来たのかしら?誰か一緒に居たのかしら?」

 早速本当の事を言えない質問を…

そう考えながらも、間を置かずに答える。

 「元々居た場所という意味では、とても遠い場所から。

子供の時事故で両親や友人達と離れ離れになってしまって」

「…そうなの…」

 ある意味では本当のような嘘のような設定を話したら、エレナさん達は沈痛そうな顔をしていた。

…嘘だからそんなに気にしないで…

 「気が付いた時には見知らぬ場所で一人でした。最初は帰るために旅をしていたんです」

「何処に行くか見当はついていたの?」

「いえ、何処にあるかは曖昧なので、色々な場所に行ってそれらしい場所を探していました」

「何か手掛かりがあったのですか?」

「あったと思ったら、噓だったというものしかありませんでした…」

 そんなもの、あったらおかしいんだけどね。

セルリアさんの質問にそう思う。

少しの間、二人がどうするか考えている様子で互いを見ていた。

すると。

 「なら次は貴方が事故に遭う前に住んでいた場所を教えて」

「…子供の頃の事でうろ覚えですが、それでもいいですか?」

「昔の事だものね、はっきりしてなくてもいいわ」

 嘘の部分をつつかれて、少し動揺したけど、何ともないように答える。

…どうしよう…何も考えてなかった…

仕方が無いからある程度本当の事を混ぜて話す事にした。

 「そうですね…生活面で言えばあまり変わりはありませんでした」

「それは違う部分もあった、という事ですか?」

「細かい部分は分かりませんが、同じと考えていいと思います」

 だって俺の居た世界と何ら変わりないように感じるんだし…

 「じゃあ、貴方と同じような髪の色をした人は居たの?もしかして皆、黒髪だとか!」

「全員が黒いわけではありませんが、ほとんどが黒髪ですね」

 日本人にも茶色の髪の人は居るだろうし…

 「なら次は…」

「エレナ王女様はいらっしゃいますか」

 ふいに扉の方から声が聞こえた。

声の高さから考えて男みたいだ。

 「用件は何ですか」

「王子殿下が部屋に来るようにと…」

 応対したセルリアさんは、部屋の中を見られないように部屋を出て行った。

 「邪魔が入ったようね…」

「仕方ありませんよ。続きはまたの機会という事で」

 それにしても、王子殿下って誰だろう…他国から来た婚約者とかかな?

少しだけ聞こえた内容に想像してしまう。

少し経って、セルリアさんが入って来た。

 「エレナ様。王子殿下から話がしたいとの事ですが」

「分かっているわ。私は行くから彼についてて」

「分かりました」

 小声で話す二人を気にしていないように振る舞いながら、紅茶を飲む。

良かった…質問攻めに遭わなくて…

エレナさんを見送りながらそう思う。

あ…そういえば。

 「エレナさんのお茶、残ってる…」

 一口も飲んでないから、もったいないな…

 「そうだ。セルリアさんが飲んでくれれば…」

「勤務中ですので、遠慮させていただきます」

「あ…そうですね…すみませんでした」

 そっか、仕事中にお茶を飲むわけにはいかないよな。

そう思うも、机にある三人分はあるだろう茶菓子を見て、

ひとりじゃ食べきれないな…と思っていると。

 「余ってしまった物は、後々私達侍女が食べますので」

「それもどうかと思いますが…そうするのが一番ですよね」

 まあ…だからって一人で紅茶を啜るのはちょっとなぁ…

 「でも、せめてセルリアさんも座りませんか?

立っている人の目の前でお茶を飲むのは気が引けるので…」

「そういう事でしたら同席させていただきます」

 さすがに気を使ってくれたのか、セルリアさんが椅子に座る事を了承してくれた。

 「それにしても、エレナさんは今日、もう一度来るんでしょうか?」

「確かな事は言えませんが、戻って来れないはずです」

「そうなんですか…」

 エレナさんも忙しいんだろうな。

と思いながら、茶菓子の中のクッキーにかじりついた。

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