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七話目、何も出来ないのは自分のせい

 王城に連れ戻されて三日。

天井裏の人の事が気になりすぎて、部屋を出る事に躊躇って、

少しの間は部屋に引きこもろうと決めた。

そうすると、テレビなんて当然無い上、本も読めない。

ただ部屋でぼうっとするしか無くなった。

そんな状況に体感三十分で耐えられなくなり、どうにかしようとした結果。

 「この単語のつづり、間違っていますよ。もう一度やり直してください」

「はい…」

 何故か勉強するはめになっていた。

たしか二日前の朝、部屋に居てもやる事が無くて困ってる、とセルリアさんに相談して、

本を用意しますよ?と言われて、ついうっかり文字が読めない事をしゃべってしまった。

不審に思われる、と思ったが、

セルリアさんが、なら私が文字を教えますと言ってきてそれに甘えた。

…うん、よく考えたら俺のせいか。

天井裏に人が居るからって部屋の外に出なかったから、何も出来なくなったし、

外に出たらうっかり文字が読めない事を知られなかったのに…

別に勉強が嫌いだからこんな事を言ってるんじゃない。

 「今度はこの単語のつづりが間違ってますよ。やり直しです」ZZAZZZZA

「うう…!…分かりました…」

「次は文章を書いてみましょう。文法はその時に教えます」

「ええっ!まだ単語も大して書けないのに!」

「不満があるのですか?」

「いえ…」

 単に厳しいだけ。

そのおかげで、多少は文字も読めるようになったし、退屈もしてない。

それこそ寝る間も無いくらい。

一日ごとに出される宿題が多いせいで、

一日の大半が机と向き合いながらひたすら単語を書き続けるようになってしまった。

あまりにも大変で、一度だけ宿題をやりかけで出したら授業の時間が増えたから、

宿題を必ず終わらせてから休むようになった。

 「今回はここまでにしましょう。宿題は先ほどの単語と、

この本の中で読めた文を一ページ分書いて、明日意味を答えてください」

「あ…ありがとうございました…」

「ではお茶を持って来ますので、何か欲しい物はありますか?」

「お茶請けに何か軽い物を…」

「分かりました、少々お待ちください」

 長く感じた勉強が終わり、机に頭をつけてへばりながら、息を吐く。

 「異世界って、思ってるより大変だな…」

 前は、文字が読めなくても大丈夫とか思ってたからな…

実際に来てみれば、文字が読めないだけで色々不便になるし、

知らないって事がどれだけ大変な事かよく分かるよ。

 「って…そんな事より宿題しないと」

 また時間増やされるのはご免だ。

そう思い、さっき出された宿題を進めていく。

三分の一ほど進めた所で。

 「お茶をお持ちしました」

「あ、はい。今、机の上の物を片付けますね」

 セルリアさんがお茶とお菓子を持って来てくれた。

進めていた宿題を別の机に置き、紅茶が注がれるのを待った。

 「今回は宿題少なめでしたね、何でですか?」

「不満でしたら増やしますが?」

「イえ!別にソんなツもりじャないデす!」

「声が裏返るほど嫌でしたらいいのですが」

 藪蛇だと思っていたが、気になって聞いてみたら予想通りの反応で返ってきた。

…増やされなくてよかった…

 「いつも量が多かったので、何か理由でもあるのかと思って」

「そういう事でしたか」

 紅茶の入ったカップを、お礼を言ってから受け取りながら続きを聞いてみる。

 「今日は一日、クシマ様付きになったので、少し経った後にもう一度授業を始めようかと」

「ぶは!ごほ、ごほ!」

 紅茶を口に含んだ瞬間に出た予想外の答えにむせた。

…つまりまだ書けと?しかも次は文章まで?俺、何か悪い事しましたか?

 「嫌だとおっしゃるなら、今日はやめますが…」

「いえ、教えてもらえるならいつでもいいです…」

 背中をさすってもらいながら返事をする。

…宿題増やされるより、授業を多く受けた方がましだ。

多少、投げやりな気持ちでそんな事を考えていると。

 「私がいつも、クシマ様の近くに居るわけではないので、

少しでも早く本を読めるように、教えていたのですが…厳しかったでしょうか?」

「そんな事はないと思います…」

「では、今後も今までと同じようにしますね」

「はい…」

 正直に、厳しすぎてきついと言えない自分が臆病だと思うも、もはや手遅れなので何も言えない。

 「次に書く文章ですが、まだ教えていない単語も混ぜて書いてもらいますので」

「ぐうっ…分かりました…」

 でも、さすがにここまで容赦なくきつい課題を出すのはやめてほしいな…

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