魔物
平等に降り注ぐ夜が
わたしたちを不確かにして
世界の内側に閉じ籠める
朝が来ても まだ
昨日の熱帯夜にいる
たとえば青空に星が熙り
正しくない温度で白昼を往くなら
昨日の熱帯夜はここにあって
わたしもここにいる
待たずに夜が降る
そして哀しむ
正しそうに変わっていくのを
ただ哀しむ
きゅうな微熱が
長引くことも
たまにはあることで
泡めく夏のふところにいた
ひとのよわい魔物
夜に閉じ籠もった季節の
ちょうど反転したような月の下で
脆い美しさをうかべていた
ひとのよわい魔物