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プロローグ
これは実話を元にしたフィクションである。
しかも、ごく最近の話である。
主人公が戦うのは
潰れかかった小さな同族会社なのか。
それとも、日本的経営そのものか。
クロスオーバーする過去と今、未来
現実と虚構の中のリアルを見定めていただきたい。
野津隼人はM県M市にある食品メーカーへと車を跳ばしていた。
友人の転職エージェント大川一郎から紹介された小さな会社
社長後継案件だという。
民間に出て10年
10社目の職場となるか?
野津はここ数年、いわいる会社の再建屋として生きてきた。
赤字解消
新規プロジェクト推進
東証一部上場
事業承継
次期経営者にと乞われたのも1度や2度じゃない。
中小企業、とくに家族経営の場合
その手の話には必ず裏がある。
迂闊には信じられない。
霧雨山脈の山道でタイヤが軋む。
目的の会社は山麓の田園地帯にあった。