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オレにホレないモノはなし!~完全無欠のスコッパー~  作者: GIMI
第6章 我らにクダけぬモノはなし!
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099.ディグとアンシィ

「パドラ!!」

「ピギィ!!」


 アルマの指示に、パドラが再びオレ達を乗せて飛び立つ。

 目指すは遥か上空に浮かぶ、鋼帝竜。

 しかし、もちろん、簡単にその元まで行かせてくれる奴じゃない。

 鋭い牙の生えた口を開くと、衝撃波が飛んできた。

 空気を伝う衝撃の波に、パドラでも回避が敵わず、オレ達はそれを諸に受ける。


「くっ……!?」


 耐えられないほどじゃない。

 だが、明らかに飛翔ペースの落ちたパドラの元に、今度は、あの槍が降り注ぐ。

 回避するのは不可能。迎撃するために、スコップを構えたオレだったが、まるで、何かの壁に押されたかのように、槍が途中で軌道を変えた。

 シトリンのエアウォールだ。

 さらに、奴の頭の上、遥か天空に光が満ち満ちた。


「スターライト!!」


 おそらく最後の魔力を使ったフローラの強力な魔法が奴に向かって降り注ぐ。

 しかし、奴は大きく羽ばたくと、身を捻って、それを見事に回避してみせた。

 身体が二回り小さくなった上に、羽を得た鋼帝竜。機動力は今までの比じゃない。

 そのままさらに上空へと飛翔する。

 その背を追って、パドラが飛ぶが、オレ、アルマ、コルリを乗せてることもあってか、その速さに追いつくことさえできない。


「パドラ! 頑張って!!」

「ピ、ピギィ!!」


 そうして、こちらが追い付くよりも早く、鋼帝竜が太陽を背にして振り向いた。

 いつの間にか、奴の口元にはエネルギーが充満している。


「ブレス!? 避けて!!」


 コルリが叫び、パドラが何とか急制動をかけ、身を捻る。

 しかし、間に合うわけもない。


「えっ!?」


 やばいと思ったその瞬間、パドラがオレ達を振り落とした。

 いや、違う。その身体が一気に巨大化したのだ。

 今までもパドラは胸の谷間に収まるサイズから、馬車を引っ張るときの馬の2倍ほどのサイズまで自由にその大きさを変えてきた。

 今回の大きさは、ほとんど屋敷一軒分くらい。

 今の鋼帝竜に比べても、遜色ないほどの大きさまで膨れ上がると、ブレスを真っ向から受け止めた。

 もふもふの毛が、ブレスに焼かれ黒ずんでいく。


「ピギィイイイイイイイ!!」

「パドラ!!」


 悲鳴を上げるパドラだが、それでも空中のオレ達を守るように壁となる。

 やがて、ブレスが収まると、パドラは力尽きたように小さくなり、海へと落ちていった。

 同じく、空中に投げされたオレ達も海へと落ちていく。


「くそっ、パドラ……!」


 オレ達を守るために傷ついたパドラ。

 その仇を討ちたいところだが、パドラという翼を失ったオレ達は、空中で無防備な姿をさらすばかり。

 そこへ、再び鋼帝竜が突撃してきた。

 身動きの取れないオレ達を空中でしとめるつもりだ。


「ディグ様!! コルリ様!!」

「えっ……」


 アルマが大剣を構えると、オレとコルリをその刀身の腹に乗るように促した。


「私が、お二人をもう一度奴の上まで打ち上げます!!」

「そんなことしたら、アルマが……!」

「パドラちゃんも身体を張ったんです! 私だって……。それに、身体だけジアちゃんから借りてる私は、攻撃面でもお二人ほど役には立てません。だから……」


 そんなことを話している間にも、鋼帝竜はものすごい早さで迫っている。


「さあ、早く!!」


 判断する暇もなく、オレとコルリはアルマの構える大剣へと乗る。

 すると、アルマは思いっきり大剣を振りかぶった。


「行ってくださぁああああああい!!」

 

 ジアルマの剛腕で、オレとコルリの身体が上空へと吹き飛ばされる。

 次の瞬間、大剣を構えたアルマに鋼帝竜が衝突した。

 二回りほど小さくなったとはいえ、人間とは比較にならないほどの巨体。

 その上、飛行による加速で勢いを増したその突進は、アルマをまるで弾丸のように、港へと吹き飛ばした。


「アルマァ!!」

「ディグ、今!!」


 一瞬アルマに気を取られたオレ。

 だが、そのアルマが作ってくれたチャンスを、オレが無に帰すような真似はできない。

 オレはアンシィを構えると、その刃の上に、コルリを乗せる。

 やることはアルマと同じだ。

 一瞬動きの止まった奴の元へ、コルリを吹き飛ばす。


「行け!! コルリ!!」

「はぁああああああ!!!」


 全力でアンシィを振り抜く。

 すると、コルリは雷の如く、鋼帝竜に向かって飛翔した。

 マグナム弾のように身体を捻り、勢いを増しながら、コルリが双剣を振り抜く。

 瞬間、鋼帝竜の左右の羽に、一筋ずつの亀裂が入る。


「ゴォオオオオオオオオ!?」


 だが、さすがは竜の帝王とでも言おうか。

 傷の入った翼で強引に羽ばたくと、そのまま海へと落ちていくコルリに、追い打ちとばかりに、槍を放った。

 大量の槍が降り注ぎ、海の至る所で水しぶきが上がる。


「くそっ……これでも無理なのか……」


 と、次は、奴の赤く光る瞳が、上空のオレの姿を捉えた。

 再び奴の口内にエネルギーが溜まる。ブレスだ。

 パドラがいない以上、オレには、もうそれを回避する手段も、防御する手段もない。


「万事……休すか……」


 いや、まだだ。

 オレが来るまで、フローラも、シトリンも、アルマも、ジアルマも、コルリも。

 パーティの仲間達は、みんなボロボロになるまで頑張ってくれたのだ。

 リーダーのオレが、こんなところであきらめていいわけがない。


「オレは……オレは……」


 アンシィを強く強く握り込む。


「絶対に……負けない……!!」


 ブレスが発射される。


「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」


 迫りくるブレスに向かって、オレはスコップを構えた。

 その瞬間だった。


【条件が揃いました。<概念スキル「ほる」>を獲得しました】


「えっ……?」


 突然脳内に響くシステムアナウンス。

 瞬間、まるで時間が止まったように、周りの風景がゆっくりになった。

 白い光の帯がオレへと迫ってくる。

 圧倒的なエネルギー量を誇る、鋼竜帝のブレス。

 それに焼かれれば、人間なんてひとたまりもない。

 けれど、オレにはその暴力的な光の奔流の中に、一筋の道が見えた。

 オレは自然とその道をまっすぐにつらぬように、スコップを突き出す。

 すると、次の瞬間。

 周りの景色が、普段と同じように戻る。

 一瞬で通り過ぎる光の帯。

 そして、オレは、その光が過ぎ去ってなお、無傷のまま空中に佇んでいた。

 えっ、今、オレ……ブレスを"掘り抜いた"のか……?


「さっすが、アタシの相棒ね!」

「…………えっ……?」


 声が聞こえた。

 システムアナウンスの無機質な声とは全然違う。

 耳に馴染んだ、明るい、あの声が。


「アンシィ……?」

「はぁ、やっと喋れるようになったわぁ。ようやく自分の身体って実感できてきた気分ね」

「お、お前……!!」


 ぶわっと、目に涙が湧き出た。


「なによ。再会はもうとっくに済んだ後でしょ」

「け、けど……お前の声聞いたら……」


 感極まってきちまったんだよ。


「もう、泣き虫ねぇ。とりあえず、アタシも喋れるようになったら、まず、伝えたいことあったから、言っておくわ」


 と、アンシィはわざわざ人間の姿になると、最高の笑顔で言った。


「ありがとう!」


 それは、試練の時にも見せた彼女の"楽しい"の表現。

 オレがこの世界でずっと見続けてきた、彼女の心からの気持ちの表出。

 何物にも代えがたい、オレにとっての最高の宝物。


 ドクン!


 心臓が跳ねた。

 どうにかなってしまいそうな高揚感。

 求めていたものが、返ってきた実感。

 そして、これからも、彼女の笑顔を見続けていきたいという願望。

 すべての感情がより合わさり、手綱のように強く、強靭になっていく。

 ああ、今のオレは……いや、オレ達は。


「無敵だ!!」

「えっ!? 何よ、突然?」

「お前が"大好き"だってこと!!」

「はぁ?」


 わけがわからない、という顔をしつつも、アンシィは笑っている。

 ああ、そうだよ。オレは、この笑顔を見続けたい。

 だからこそ、その障害は2人で一緒に取り除く。

 右手と左手、それぞれの手を握りながら、オレ達は高エネルギーのブレスを連射し、動きを止めた鋼帝竜へと、緩やかに落下する。


「オレ、なんかさ。凄いスキルをゲットしたみたいだ」

「うん、アタシにもわかる。なんとなくだけど」

「そっか。じゃあさ、そのお披露目といこう」

「そうね。おあつらえ向きに、めちゃくちゃ目立つ場所だしね」


 港の上空、数百メートル。

 きっとみんなもオレ達の事を見守ってくれているんだろう。

 アンシィが、再びスコップの姿へと戻る。

 

「オレは、スコッパー」

「アタシは、スコップ」

「オレに」

「アタシに」

『ホレないモノはなし!!』


 嵐帝の加護を身に纏い、オレとアンシィは、鋼帝竜へと一直線に降下した。

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